データセンター適用例が示す、サーバ仮想化のコスト削減以外のメリットトレーニングや管理面が新たな課題に

サーバ仮想化を利用した金融サービス会社のデータセンターでは、コスト削減と同時に自社ビジネスの急激な需要に対応するインフラを実現。しかし、仮想化に伴う新たな課題も浮かび上がった。

2012年12月03日 08時00分 公開
[Paul Korzeniowski,TechTarget]

安心して仮想サーバを導入できる時代に

 米市場調査会社のAberdeen Groupによると、仮想環境で運用されているアプリケーションの割合が2012年に50%を突破し、サーバ仮想化は大きな節目を通過した。Aberdeen Groupの上級調査アナリスト、ディック・サプラー氏は「今では企業が安心して仮想サーバを導入するようになった」と話す。

 サーバ仮想化が普及したのは、システムの稼働率が上がることやサーバに求められる条件が減ることなど、幾つかの理由による。従来はアプリケーションごとに1台のサーバや複数のシステムを導入する必要があり、ピーク時以外はそうしたシステムがアイドル状態になっていることも多かった。

 仮想化では1台のサーバで複数のアプリケーションを運用できることから、システムの稼働率は上昇する。一般的に、企業は容量の約80%の稼働率を目標とし、緊急時の対応に備えてある程度の余裕は残しておきたいと考える。多くの場合、仮想化によって稼働率は約10%から15%、50%、75%へと上昇する。

 サーバ運用の効率性が高まれば、必要なハードウェアは少なくなる。Aberdeenによると、仮想化に移行した企業は実際に10〜15倍のハードウェアシステム削減を達成している。

Hyper-Vを採用し、物理サーバを650台から22台に

 住宅ローン業界向けに情報サービスを提供している米金融サービス企業のKroll Factual Data(従業員300人)のケースは、コスト削減の可能性を示す好例だ。同社は顧客向けに、信用報告書、リスク評価報告書、事業背景調査、回収情報サービス、従業員審査などのサービスを提供している。過去5年で買収した企業は58社に上り、結果としてサーバの寄せ集め状態になった。

 システムのメンテナンスは作業負担が大きい。従来は、IT要員によるサーバの設定は2週間がかりだった。IT部門は買収した企業のサーバをKroll Factual Dataのデータセンターに物理的に輸送し、サーバを起動して運用できることを確認し、その新しいシステムをデータセンターに統合する必要があった。このプロセスは相当の日数を要し(30〜60日)、多大なリスクを伴い(一部の部品は相互運用不可能)、結果として障害に見舞われることもあった。必然的に、IT専門職は新しい付加価値をもたらすビジネスアプリケーションの開発よりも、サーバの設定作業に時間を取られていた。

 2008年初め、同社はデータセンターインフラのスリム化を図ることになった。仮想化が適していたのは、データセンターのコスト削減と同時に、需要増大への対応を強化したサーバインフラの実現を目指したことによる。同社の事業活動は幾度となく揺れ動いた。例えば、金利の変動や米連邦政府の貸付政策に変更などがあれば、同社のサービス需要は増大する。

 同社は仮想ソフトウェア市場に目を向け、米Citrix Systemsの「XenServer」、米Microsoftの「Hyper-V」、米VMwareの製品などを検討した結果、最終的にHyper-Vを選んだ。

 同社の首席テクニカルアーキテクト、クリス・ステファン氏は「当社のアプリケーションの約99%はWindows上で動いており、Microsoftの製品を選ぶのは理にかなっていた」と振り返る。同社はHyper-Vの全3リリースのβサイトの役割を果たしてきた。

 Hyper-VでサーバをWindows Server 2008 Datacenterにアップデートする作業は2008年夏に開始し、数カ月を要した。完了時には、物理サーバの数は650台から22台へと激減し、結果として年間のハードウェア経費は何万ドルも削減された。

 経費削減はこれにとどまらなかった。

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