“共有iPad”の限界を打破
アイ・オー・データ機器が「Nexus 7」を外回りスタッフ全員に配った理由
Appleの「iPad」を共有タブレットとして使用してきたアイ・オー・データ機器。外回りの営業スタッフ全員に配布したのは、iPadではなくGoogleの「Nexus 7」だった。その選定理由を同社に聞いた。
クライアントPCやスマートデバイスの周辺機器大手であるアイ・オー・データ機器(以下、I-O DATA)。同社は、GoogleのモバイルOS「Android」を搭載したタブレット「Nexus 7」を2013年10月に本格導入した。家電量販店や流通代理店などを訪問する外回りの営業スタッフ全員がNexus 7を持ち、営業活動に生かしている。
I-O DATAは、Nexus 7をどう業務に生かしているのか。なぜAppleの「iPad」でも、Microsoftの「Windows」搭載タブレットでもなく、Nexus 7を選んだのか。セキュリティ対策は。Nexus 7の導入を推進した、同社営業部の羽田明生氏に話を聞いた。
Nexus 7の使い方:デモとHTMLカタログで自社製品紹介
I-O DATAでは、自社製品を顧客に説明するためのデモにNexus 7を生かしている。同社製品は、基本的には流通代理店などを通して、家電量販店で販売する形を取る。新製品を販売する際など、流通代理店や家電量販店との商談の際に、Nexus 7を使ったデモを有効活用している。
Webカメラや無線LANアクセスポイントといった同社製品の中には、Android向けのアプリケーションを用意しているものもある。製品を実際に操作する様子を顧客に見てもらうことで、顧客の製品理解を深める狙いだ(写真1)。「Webで情報を掲載しているだけでは分かりにくいことも、実際に利用シーンを見てもらえれば、『I-O DATAの製品を買えば、こんなことができる』ということが伝わりやすい」(羽田氏)
併せて、HTMLで作成した製品情報の解説用カタログ(以下、HTMLカタログ)も利用している(写真2)。通常のWebページと同様、ピンチインやピンチアウトといった操作で製品写真を自在に拡大・縮小できるようにし、顧客が見たい箇所を自由に見ることができるようにした。カタログ内には、製品の詳細情報があるWebページをリンクとして設置し、商談に応じてすぐに参照できるように工夫している。
HTMLカタログは、開発部門や各製品の企画担当が提供する資料を基に、同社の営業部でプリセールスの営業支援を担うテクニカルプロモーショングループのスタッフが作成している。作成したHTMLコンテンツは、同社が利用するオンラインストレージに登録。Nexus 7が無線LANに接続しているときに、専用の同期ツールを使ってダウンロードし、端末に保存している。
PDFカタログからHTMLカタログへ
実は、I-O DATAがHTMLカタログを導入したのは2014年1月のこと。Nexus 7を本格導入した2013年10月当初は、HTMLカタログではなく、紙のカタログを電子化したPDFカタログを導入していたという。
Nexus 7導入の主な目的である、製品デモの補佐的な役割としての活用を見込んで導入したPDFカタログ。だがもくろみは外れ、PDFカタログは営業スタッフに「全く使ってもらえなかった」と羽田氏は明かす。営業スタッフは紙のカタログを持っていくことが多く、「紙のカタログの方が自由に書き込みもできるし、そもそもタブレットの画面で同じ内容を示してもあまり意味がなかった」(同氏)からだ。
タブレットの画面に手書きで書き込めるツールを試すなど、試行錯誤の末に落ち着いたのが、HTMLカタログだった。「7インチのタブレットといっても、やはり画面は小さい。その小さな画面を顧客に一生懸命眺めてもらう意味を突き詰めた結果、HTMLカタログに行き着いた」という。
PDFカタログは一般的に、単に紙のカタログを電子化したままであることが多い。その場合は静止画像とテキストで構成されることになるが、「それならばPDFファイルでなくても、単なる画像ファイルを使えば済む話であり、タブレットを使う必要性もない」と羽田氏は指摘。ピンチイン、ピンチアウトといったタブレットならではの操作を生かしつつ、顧客が詳しく知りたい箇所に関する詳細情報を表示するなどの細かい操作を実現するには、HTMLカタログが最適だと判断した。
Nexus 7導入の経緯:“共有タブレット”では限界が
同社がタブレットを導入したのは、Nexus 7が初めてではない。今までも、Appleのタブレット「iPad」を導入するなどの取り組みを進めていた。だが全国に11箇所ある事業所に、それぞれ数台程度を共有端末として導入するにとどまっていた。
共有タブレットは、同社製品を展示する展示会への出展用機材などとして利用していた。共有機材であることから、全ての営業スタッフが必要なときに必ず確保できるとは限らない。登録されたアカウントも自分のものではないため、アプリケーションを自由に導入しにくい。こうした状況を踏まえ、共有ではなく、必要なスタッフ全員に配布することが重要だと判断したという。
I-O DATAでは、導入するタブレットの選定を2013年の8月に開始し、同月内に選定と検証を完了。端末の調達や手順書の作成などを経て、同年10月にNexus 7を本格導入した。
Nexus 7の選定理由:コストと性能のバランスを評価
タブレットの選定に当たっては、以下の点を特に重視したという。
- 発売前の新製品情報といった重要情報を安心して持ち歩くことができるようにする管理性
- 外回りの営業スタッフ全員に無理なく配布できる端末価格の安さ
- 顧客に製品情報を伝えるのに役立つ解像度の高さ
管理性を重視したのは、発売前の新製品に関する事前資料など、同社にとって「生命線」(羽田氏)ともいえる重要な情報を社外に持ち出すことを想定していたからだ。共有タブレットにはデモ用のデータなどを入れる程度で、それほど機密性の高いデータは入れていなかった。
こうした選定ポイントを踏まえ、モバイルデバイス管理(MDM)など市販の管理ツールが充実していること、7インチタブレットとしては高い1920×1200ピクセルの解像度を持つこと、比較的安価な端末価格を総合的に評価して、Nexus 7を選んだという。また同社は、通信コストを抑える観点から、通信事業者の縛りがないSIMフリーモデルを求めており、Nexus 7が国内で正式サポートが受けられるSIMフリーモデルであることも採用を後押ししたという。
iPadをはじめとするiOS端末も選定対象に入れていたが、SIMフリー版のiOS端末は高価であり、かつ通信や管理に掛かるコストを踏まえると「非現実的だった」という。Windowsタブレットは、選定当時はSIMフリーの端末の選択肢が限られていたことから、採用を見送った。
画面サイズには不満も、「現実的な落としどころ」がNexus 7
Nexus 7の7インチという画面サイズは、タブレットの中では必ずしも大きくない。同社の用途を考えると顧客に画面を見せることが多いので、画面サイズは大きいに越したことはない。だがデモがスムーズに進められるほどの処理性能を持ち、外回りの営業スタッフ全員に配布できるほどの価格で導入できるとなると、Nexus 7が「現実的な落としどころだった」と羽田氏は説明する。
端末管理手法:MDMで管理、アプリ導入は制限なし
Nexus 7の管理手段として採用したのは、アセントネットワークスのMDMサービス「MoDeM」だ。端末に導入するエージェントの死活監視機能を利用し、「万が一のときに管理可能な状態にあるかどうかを確認している」(羽田氏)。
端末へのアプリケーションのインストールには特に制限を掛けていないが、MoDeMが持つ端末内のインストール済みアプリケーションを監視する機能を利用し、不適切なアプリケーションがあれば適宜ヒアリングをし、必要に応じて指導をしているという。
MoDeM選定の鍵も、機能とコストのバランス
I-O DATAでは、当初からNexus 7の用途をデモとカタログ紹介に絞っており、端末内に入れる業務データはHTMLカタログなどの製品情報に限定している。発売前の新製品に関するデータは保護の必要があるものの、逆にいえば、守るべきものはそれだけだ。こうした状況を踏まえ、管理ツールの選定に当たっては、「端末を紛失した際に端末内のデータを消去したり、端末の位置が分かるといった機能を最低限備えていればよい」(羽田氏)と考えた。
こうした機能は、Googleが提供する「Androidデバイスマネージャー」といった標準ツールも備える。だが複数端末を効率的に一元管理するには、企業利用を前提としたMDM製品/サービスが適すると判断。5、6種類のMDM製品/サービスの中から、「料金が想定する費用感に合っていて、かつ必要な機能がそろっていた」(羽田氏)ことから、MoDeMを選定したという。
Windowsタブレットの管理が課題
I-O DATAにとって、Nexus 7を管理する上では必要十分の機能を備えるMoDeM。一方、羽田氏がアセントネットワークスにリクエストするのは、Windows端末の管理機能の追加だ。
同社は共有端末としてWindowsタブレットを導入しており、「ビジネス用途では、Windowsタブレットの活用も現実的になりつつある」(羽田氏)は認識している。将来はWindowsタブレットの併用の機会も増える可能性があることを踏まえると、「複数種類の端末を一元管理できて、同じレベルの情報が同じフォーマットで入手できることが重要になる」と羽田氏は語る。
アセントネットワークスには、I-O DATA以外からもWindows端末の管理についての要望が来ているという。同社は、Windows用管理ツールとの連係を支援するなどで、こうした要望に応えたい考えだ。
タブレットを自ら活用することが大事
I-O DATAの外回りの営業スタッフは現在、Nexus 7とノートPC、携帯電話の“3種の神器”を持って営業活動をしている。Nexus 7の導入前からノートPCは導入しており、製品のデモや製品資料の紹介というだけであれば、ノートPCだけで事足りると考えることもできる。
プレゼンテーションが目的であれば、ノートPCだろうがタブレットだろうがそれほど変わらない。むしろノートPCの方が、USBやVGAといった接続端子を豊富に備える分、便利に使えることも多いだろう。
それでも同社がタブレットの利用にこだわったのは、同社製品のエンドユーザーであるコンシューマーの間でタブレットの利用が広がる中、同社自身がタブレットを積極的に活用することこその重要性が高まっていたからだ。「タブレット向け製品の利用例を示すのに、ノートPCでプレゼンテーションをしても説得力が無い」(羽田氏)。特にタブレットなどのスマートデバイスを生かしたビジネスを進める企業にとって、こうした視点は今後重要になるだろう。
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