「Skype for Business」「Office 365」も活用
「iPad」で在宅医療の遠隔会議を実現した武蔵村山市医師会
東京都西部にある武蔵村山市医師会の在宅医療部会は、Web会議システムと「iPad」を活用した遠隔会議の仕組みを構築・運営している。
急速に進む少子高齢化を背景に、政府は「地域医療連携」「在宅医療」の推進に取り組んでいる。それに伴い多くの医療機関や介護施設も、そうした社会状況に対応した在宅医療の仕組みづくりを進めている。在宅医療の推進においては、包括ケアシステムや多職種連携が大きなテーマとして出てきているが、在宅医療の主軸は地域の医療関係者であり、地域の医師が主体となっている。
東京都西部にある武蔵村山市では、武蔵村山市医師会が「在宅医療部会」を設置し、地域の開業医と地域中核病院である武蔵村山病院からの十数人で運営。タブレットを活用した遠隔会議システムを導入し、多忙な医師の会議参加を容易にするといった効果を挙げている。
導入の背景
2014年度まで在宅医療部会は、武蔵村山市民総合センター内にある会議室にて毎月第2月曜日19時半から開催されていた。しかし、医師によっては平日の診療後に30分以上かけて参加することもあり、診療時間が長引いて開催時間に間に合わない医師がいたり、夕食も取らずに駆け付ける医師もいた。また、会議は基本的には2時間程度だが、議題によっては23時ごろまで続くこともあったため、会議終了後に車を運転して帰宅するのは体力的な負担が大きいだけでなく、事故などの安全面からも懸念があった。
そこで武蔵村山市医師会では医師の自宅や医院から会議に参加できるようにするため、Web会議をベースにした遠隔会議の仕組みを構築することにした。幾つかのWeb会議を検討した結果、オフィススイート「Microsoft Office」のライセンスが付属していることも決め手となり、日本マイクロソフトのユニファイドコミュニケーション(UC)基盤製品「Skype for Business」(旧名称「Microsoft Lync」)と、クラウドサービス「Office 365」を導入することにした。
iPadを配布してITスキルをカバー
武蔵村山市医師会に所属する各医師のITスキルはまちまちで、各医師の自宅を訪問してWeb会議接続環境を構築するのは難しい。そのため、医師会がWeb会議接続用にセッティング済みの米Appleのタブレット「iPad」を要望に応じて配布している。
iPadよりもクライアントPCでの参加を希望する医師には、ヘッドセット無しで気軽に参加できるようにヤマハの会議用マイクスピーカー「PJP-10UR」を配布している。
武蔵村山市医師会では現在、おぜきクリニックの小関雅義医師を議長に十数人が自宅や医院から、毎月1回の定例会と都度遠隔会議に参加している。
Skype for Businessは会議参加者のログイン状況が分かる在席機能や、テキストメッセージを送ることができるチャット機能がある。こうした機能は参加可能時間が分からない医師の状況を遠隔から把握するのに役立っており、スムーズな会議進行を支援している。
2015年12月時点で遠隔会議のみでの在宅医療部会の開催は6回を数えており、医療介護連携をはじめとする医療ITを含めた今後の在宅医療施策を協議する上で大きな力となっているという。
遠隔会議の実現
iOS端末の企業利用を推進する団体であるiOSコンソーシアムが、武蔵村山市医師会の遠隔会議の実現をサポートした。今回の導入を踏まえて、医師会において遠隔会議を実施する上で注意すべき点が分かった。iPadを活用した遠隔会議システムの導入を検討している医療機関は、以下の項目について確認した方がいいだろう。
1. 公共施設は電波が入りにくい
武蔵村山市医師会は武蔵村山市民総合センター内にあるが、公共施設は震災対応も考慮した構造で壁が非常にしっかりしている。そのため、LTEをはじめとする電波が入りにくい箇所もある。
Web会議導入前の在宅医療部会にて集合研修を実施した際、無線LAN環境が整備されていなかったためモバイル無線LANルーターやテザリングでの接続環境を用意した。しかし、電波が非常に弱いため、安定した遠隔会議を実現できなかった。また、接続状況が非常に悪くセットアップにも手間取った。
2. IT専任管理者が不在
武蔵村山市医師会では小関議長のITスキルが高く、配布用のiPadのセットアップも自ら実施していた。一般的にはそこまでできる医療従事者は少ない。また、人数が多い医師会での実施ではIT管理者がいた方が運用がスムーズになると思われる。IT管理者がいない場合は、システムを検討する際にはITサポートも含めた形でベンダーを選定すべきだろう。
武蔵村山市では医療介護連携を効率的に行う仕組みを検討しているが、医療介護連携においてはiPadやスマートフォン「iPhone」などのスマートデバイスが重要な役割を果たすと考えられる。ITスキルの必ずしも高くない人でも必要なシステムを簡単に使ってもらうためのツールとして、スマートデバイスの重要性が高まるだろう。武蔵村山市医師会のようにクライアントPCとiPadをうまく使い分けることで、より効率的に医療の現場でITを活用できるのではないだろうか。
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