オールフラッシュ軸に進む業界再編
ストレージ業界で何が起きているのか? 巨額買収だけではない大激変の“予兆”(1/2 ページ)
2015年はデータストレージ業界にとって変化と新技術に富んだ1年となったが、中でも最大のディスラプション(創造に向けた破壊)は米Dellによる670億ドルでの米EMCの買収だった。
データストレージ市場の状況は2015年の年初と年末では大きく様変わりしている。
ストレージ業界では2015年、「変化」と「ディスラプション」(創造に向けた破壊)というキーワードが繰り返し語られたが、それも無理のないことだ。2015年は実にさまざまな変化が起きた1年であり、ストレージ業界は年始と年末では考えられないほど大きく変化した。
第一に、ストレージの世界的な大手数社は1年前とはかなり異なる状況で2016年を迎えた。長年文句なしの業界トップだったストレージ大手の米EMCは米Dellの傘下に入り、Dellによる670億ドルでの買収の完了を待つ身だ。さらに2015年には、米Symantecが米Veritasを売却し、米Hewlett-Packard(HP)は事業を2つの企業に分社化。米NetAppは最高経営責任者(CEO)を交代し、オールフラッシュストレージのスタートアップ企業を買収した。大手ベンダーのストレージ売上高は軒並み減少し、ディスクからフラッシュへの置き換えが加速し、オンプレミスストレージからクラウドへの移行も進んでいる。また2015年初には、フラッシュやクラウド、ハイパーコンバージェンス(超垂直統合)などのスタートアップ企業はベンチャー資金の確保に苦労しなかったが、年末にはベンチャーキャピタルが財布のひもを引き締める傾向がみられた。
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EMC買収の背景にあるストレージ購買パターンの変化
DellによるEMC買収は2015年のデータストレージ市場における最大の変化となったが、この買収にはストレージの購買パターンの変化が影響している。EMCのエンタープライズ向け高性能ストレージ「VMAX」、ミッドレンジストレージ「VNX」の他、「Data Domain」「NetWorker」「Avamar」といったバックアップ製品は2015年、初めて売上高の減少を記録しており、EMC幹部ももはやかつてのレベルに戻せるとは考えていない。この売上減にはクラウドだけでなく、フラッシュやハイパーコンバージェンスといった新興技術も影響している。EMCは幾つか新しい技術分野に果敢に参入したが、同社が推進する“フェデレーション(連合)”型のアプローチは投資家を満足させることができなかった。長年ストレージ市場でトップを走ってきたEMCだが、Dellによる買収が完了すれば、もはや独立した企業ではなく、ITコングロマリットの一事業部門となる。
2015年のストレージ市場でとりわけ興味深いのは、その後の成り行きを予測するのが難しい案件が多かったことだ。DellとEMCの連合、分社化された新生の米Hewlett Packard Enterprise(HPE)、米Carlyle Groupに買収されたVeritasをはじめ、他にも多くのストレージベンダーをめぐる状況は大成功にも大失敗にもなり得る。フラッシュ、ハイパーコンバージェンス、ハイブリッドクラウドなどの技術には恐らく、明るい未来が待ち受けている。だが、注目の最新技術がこれほど早く入れ替わるというのはかつてなかったことだ。
ストレージ大手のEMCとNetApp、先行きはどちらも不透明
DellによるEMC買収が完了するのは恐らく2016年の後半であり、少なくともそれまでの半年間、市場では不確かな状況が続くことになる。買収資金の調達の問題もある。EMCの買収に伴い570億ドルの負債を抱えることになるDellは、一部資産を売却して負債を減らす方針だ。DellはEMCを買収することで、ストレージ以外にも、米VMware、米Pivotal、米RSA Security、米Virtustreamなどの事業を手に入れた。だがこれらの資産それぞれについて、Dellのマイケル・デルCEOがどれだけの価値があると判断するかはまだ分からない。予想としては、EMCの事業のうちの1つか複数、そして恐らくDellの一部の事業も売却されることになるかもしれない。
2015年には、EMCの主要な競合各社もストレージ購買パターンの変化への対応を迫られ、さまざまな変化を経験した。NASでシェア第2位のNetAppは6月にCEOを交代し、12月にはオールフラッシュアレイのスタートアップ企業である米SolidFireを買収した。この買収の狙いの1つには、自社で一から開発したオールフラッシュストレージ「FlashRay」の失敗を補うことがある。8億7000万ドルでのSolidFireの買収は、トム・ジョージャン氏の後任として新CEOに就任したジョージ・クリアン氏が最初に下した大きな決断だ。この買収により、失敗に終わったFlashRayはSolidFireに置き換えられた。またNetAppはサービスプロバイダーに注力するSolidFireを買収することで、クラウドサービス事業者を顧客に取り込むことができる。ただしNetAppは今も売上減に直面している。その主な理由としては、顧客が混乱を嫌い、同社の主力ストレージOS「Data ONTAP」をより最新の「clustered Data ONTAP」にアップグレードしたがらないことが挙げられる。EMCに続いてNetAppがIT大手の買収ターゲットになると考える業界観測筋は少なくない。米Cisco Systemsがストレージ事業の強化を決めた場合はその可能性がなおさら高まる。
新生HPEは成長中のストレージ事業を当てにしており、主に「HPE 3PAR」プラットフォームを中心にHP分社化後の成長を加速させたい考えだ。ただし他のストレージ大手と同様、データストレージ市場におけるHPEのシェアはここ数年縮小している。米IBMのストレージ事業は2015年も失速が続き、Dellのストレージ事業はEMCと同様、過渡期のただ中で2016年を迎えた。
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