米VMwareの親会社である米EMCを米Dellが買収することで、VMwareのエンドユーザーコンピューティング事業にどんな影響が及び、また米Citrix Systemsの立場がこの買収でどう変化するのか。
米Dellは2015年10月中旬、IT業界ではかつてない規模の賭けに打って出た。米EMCと米VMwareを買収したのだ。これは大きなリスクを伴う動きであるが、従来型のITベンダーであるDellがモバイル市場で巨大な影響力を獲得することになりそうだ。
DellによるEMCの買収金額は670億ドル。これはIT業界で過去最大の買収規模だ。買収対象には、EMCの子会社であるVMwareも含まれる。
VMwareは今後もDellおよびEMCから独立した公開企業として存続し、EMCはDellに吸収合併される。3社の最高経営責任者(CEO)は、メディアとアナリスト向けの電話会見の中で「少なくともEMCとVMwareの経営幹部は現職にとどまる」と述べた。これはVMwareが合併の影響を受けないという意味に受け取れるが、同社のパット・ゲルシンガーCEOは変化の可能性があることを示唆した。
「この買収でVMwareと提携企業の関係が変化するのか」という質問に対して、ゲルシンガー氏は「VMwareの主要な提携企業はDellの主要な競争相手である。その中には米Hewlett-Packard(HP)や中国Lenovoなども含まれる。だが今日のIT業界においては、企業が互いに競争する一方で提携を結んでいるというのは、よくあることだ」と答えた。
「相互の提携を深める一方で競争にコミットするつもりだ」と同氏は電話会見で語った。
会見で明らかにされた計画が変更される可能性や、VMwareと他社との提携関係が将来も維持される可能性については、現時点では不明だ。
米調査会社Moor Insights and Strategyのパトリック・ムアヘッド社長兼主席アナリストは「DellとVMwareの製品の連係が強化されれば、興味深い状況になるだろう」と話す。
同氏によると、例えば「AirWatch」で使われているVMwareのエンタープライズモビリティ管理(EMM)ツールがDellの製品と連係すれば、他社製品との連係が弱まる可能性があるという。
「VMwareは誰とでも仲良くしたいのだ」とムアヘッド氏は語る。「この合併で両社の製品の連係が深化し、強力な製品が生まれる可能性がある。だがこれはVMwareと米AirWatchの優位を揺るがすことになるかもしれない」
PC事業で名を上げたDellは、クラウドや仮想化、「as-a-Service」製品(DaaS、SaaSなど)など、進化を続けるIT分野で具体化したトレンドや新技術に対応しようとしてきた。
今回の買収の主眼はEMCのストレージ事業にあるが、VMwareの獲得も注目すべき側面であることは間違いない。VMwareはデスクトップ仮想化で非常に有名な企業であり、EMM分野で最大手の1社であるAirWatchを傘下に保有している。
Dellの創業者であるマイケル・デルCEOは電話会見の中で、2016年半ばに買収が完了した後で同社が手に入れる「顧客リーチ」に何度も言及した。顧客リーチが拡大することで、同社は「エンタープライズソリューションの巨大企業」になるという。
「AirWatchに関してもわれわれは興奮している」とデル氏は会見で述べた。「当社にはシステムインテグレーターコミュニティーの中で素晴らしいパートナーがいる。各社の製品ポートフォリオを結合して生まれる強みを生かせば、この買収はわれわれに大きな市場機会をもたらす」
米University of North Texas(ノーステキサス大学) IT・意思決定科学部門のレオン・カッペルマン教授によると、EMC、VMwareおよびその関連企業の製品を手に入れることによって、Dellはエンタープライズ市場で勢力を拡大すると同時に自社のそれ以外の既存事業もてこ入れできるという。
「これはDellにとって良い買収だ。仮想化は依然として堅調なビジネスだ。Dellは多くの顧客を持っているので、1社を買収してあらゆるものを手に入れ、自社をワンストップショップ(総合店舗)にするのは今がチャンスだ」とカッペルマン氏は語る。
この買収では規模も大きなファクターだ。サブスクリプション方式の販売モデルの普及で業界全体の利益率が低下する中、収益を維持あるいは増やすにはベンダーの顧客基盤の規模が極めて重要になる。
「規模は重要な要素だ。利益率が低下している市場では一層重要だ」と前出Moor Insights and Strategyのムアヘッド氏は言う。「EMM分野では、米Microsoftはほとんどの製品を無償で提供している」
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