非上場となり、ビジネスモデルの大転換を図るDell。業務の大きな変化が予測される中、同社のCIOはどのような視点で経営戦略をサポートしようと考えているのか。
米DellのグローバルCIO、アドリアーナ(アンディ)・カラボウティス氏に、2月初旬に30分ほどインタビューした。同氏の話を聞けば、誰も同社の未来が危ういとは思えないだろう。2月6日に発表されたDellの株式非公開化に向けた総額244億ドルの買収は、2008年の世界恐慌以来最大のLBO(レバレッジドバイアウト)だ。そこには、PCメーカーからテクノロジーサービスプロバイダーへ向かうDellの大転換を加速する狙いがある。創業者のマイケル・デル氏は今回大きな勝負に出たが、交渉(主要株主が買収価格は低過ぎると既に反対しているが)の行方は不透明だ。
今回のインタビューは数週間前にセッティングされた。2012年1月にCIOに就任したカラボウティス氏は、ハーバード大学の「社会における女性シンポジウム」で講演するため、2013年2月8日にボストンに来ることになっていた。Dellの独自技術を用いて、どのようにIT部門を再生するのか。カラボウティス氏の話は興味深いだろうか? もちろん、そうに違いない。しかも先週、LBOのニュースが飛び出したばかりだ。そしてここボストンは、歴史的なブリザードが吹き荒れている。ビジネスと天候の大波乱の中、われわれは電話で話をした。
Dellの複雑でリスクの高い経営革新を前に、筆者はカラボウティス氏に、ITは全てを結び付ける接着剤か、それともチェンジエージェント(変革請負人)かと聞いた。同氏は「どちらもイエスだ」と答えた。「われわれには変革目標と工程表がある。オペレーショナルエクセレンス(業務運用の改善を通して磨き上げる競争優位)に注力することも忘れてはいない」
カラボウティス氏の言葉を言い換えれば、同氏が担うのは「継ぎ目のないコミュニケーション」と「優れたユーザーエクスペリエンス」から、Dellがここ数年行ってきた18以上の買収企業の統合、サポートに至るまでの全てだ。すなわち「水の流れを維持」しながら、同時に新しい収益の流れを作り出すことである。例えば、同氏が率いるチームはオープンソースに前向きだ。「製品グループやソフトウェアグループと共に開発チーム“Dell on Dell”を推進する。そのためにDellのIT部門は総合的なオープンスタッククラウド環境を統合した。私はこのIT部門を非常に誇りに思っている」
買収企業の統合は、Dellの経営革新を考える上で避けては通れない。それは、文字通り、1冊の本によって行われる。「われわれには脚本がある。0日目から始まり、1日目、30日目、90日目と続き、最終的には統合が完了する」と同氏。しかしルールは、それぞれの買収案件ごとに異なる。「それぞれの案件を新鮮な目で扱う」
一方、社内に目を向けると、会社からスマートフォンを与えられていない従業員が、会社の仕事に私物の携帯端末を使えるようにするため、IT部門が安全な方法を構築した。現在、Dellの従業員は1万9000人を超え、今も増え続けている。遠隔地で働く従業員は企業内ソーシャルプラットフォーム(米Salesforce.comの「Chatter」)で連絡を取り合う。カラボウティス氏は、ITがどのように機能しているか見るため、週末ごとにそこをチェックしている。「だから(接着剤と変革者の)両方だ。優れた業務運用のために接着剤としての役割が不可欠であり、同時に変革者でもなければならない」
カラボウティス氏は、大規模な改革を知らないわけではない。Dellに入社する前の20年間、米自動車メーカーのFord MotorとGeneral Motors(GM)に在籍し、とりわけ後者では上場廃止と再上場を経験している。Fordでは経営改善手法「シックスシグマ」を用いた効率化達成に貢献し、GMでは製造の外部委託とサプライチェーンITへの転換を指揮した。Dellの経営革新は同じような規模になるのだろうか? 「変化は大きい」と同氏。だが、革新のスピードはもっと速いという。「(自動車の)18、24、36カ月という製品ライフサイクルと、Dellのような3、6、8カ月の製品ライフサイクルとでは、大きく異なる」
もしDellが非上場企業に移行するなら、カラボウティス氏はコスト削減に大きなプレッシャーを感じることになるだろう。そう語るのは、Fortune 500社を対象に、経営革新に大きく関連するアウトソーシングのアドバイスを行うコンサルティング会社のパートナー、デビッド・ラットチック氏だ。「DellはIT企業ではあるが、今後の債務返済のために、CIOは可能な限り高い効率性とコスト効率を追求しなければならないというプレッシャーにさらされるだろう」
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