DellのCIOに聞く、「ITは会社の大転換をどう支える?」見えてくるCIOの本当の仕事

非上場となり、ビジネスモデルの大転換を図るDell。業務の大きな変化が予測される中、同社のCIOはどのような視点で経営戦略をサポートしようと考えているのか。

2013年03月05日 08時00分 公開
[Linda Tucci,TechTarget]

 米DellのグローバルCIO、アドリアーナ(アンディ)・カラボウティス氏に、2月初旬に30分ほどインタビューした。同氏の話を聞けば、誰も同社の未来が危ういとは思えないだろう。2月6日に発表されたDellの株式非公開化に向けた総額244億ドルの買収は、2008年の世界恐慌以来最大のLBO(レバレッジドバイアウト)だ。そこには、PCメーカーからテクノロジーサービスプロバイダーへ向かうDellの大転換を加速する狙いがある。創業者のマイケル・デル氏は今回大きな勝負に出たが、交渉(主要株主が買収価格は低過ぎると既に反対しているが)の行方は不透明だ。

 今回のインタビューは数週間前にセッティングされた。2012年1月にCIOに就任したカラボウティス氏は、ハーバード大学の「社会における女性シンポジウム」で講演するため、2013年2月8日にボストンに来ることになっていた。Dellの独自技術を用いて、どのようにIT部門を再生するのか。カラボウティス氏の話は興味深いだろうか? もちろん、そうに違いない。しかも先週、LBOのニュースが飛び出したばかりだ。そしてここボストンは、歴史的なブリザードが吹き荒れている。ビジネスと天候の大波乱の中、われわれは電話で話をした。

新しい収益の流れを作り出す

 Dellの複雑でリスクの高い経営革新を前に、筆者はカラボウティス氏に、ITは全てを結び付ける接着剤か、それともチェンジエージェント(変革請負人)かと聞いた。同氏は「どちらもイエスだ」と答えた。「われわれには変革目標と工程表がある。オペレーショナルエクセレンス(業務運用の改善を通して磨き上げる競争優位)に注力することも忘れてはいない」

 カラボウティス氏の言葉を言い換えれば、同氏が担うのは「継ぎ目のないコミュニケーション」と「優れたユーザーエクスペリエンス」から、Dellがここ数年行ってきた18以上の買収企業の統合、サポートに至るまでの全てだ。すなわち「水の流れを維持」しながら、同時に新しい収益の流れを作り出すことである。例えば、同氏が率いるチームはオープンソースに前向きだ。「製品グループやソフトウェアグループと共に開発チーム“Dell on Dell”を推進する。そのためにDellのIT部門は総合的なオープンスタッククラウド環境を統合した。私はこのIT部門を非常に誇りに思っている」

 買収企業の統合は、Dellの経営革新を考える上で避けては通れない。それは、文字通り、1冊の本によって行われる。「われわれには脚本がある。0日目から始まり、1日目、30日目、90日目と続き、最終的には統合が完了する」と同氏。しかしルールは、それぞれの買収案件ごとに異なる。「それぞれの案件を新鮮な目で扱う」

IT部門は接着剤であり、変革者

 一方、社内に目を向けると、会社からスマートフォンを与えられていない従業員が、会社の仕事に私物の携帯端末を使えるようにするため、IT部門が安全な方法を構築した。現在、Dellの従業員は1万9000人を超え、今も増え続けている。遠隔地で働く従業員は企業内ソーシャルプラットフォーム(米Salesforce.comの「Chatter」)で連絡を取り合う。カラボウティス氏は、ITがどのように機能しているか見るため、週末ごとにそこをチェックしている。「だから(接着剤と変革者の)両方だ。優れた業務運用のために接着剤としての役割が不可欠であり、同時に変革者でもなければならない」

 カラボウティス氏は、大規模な改革を知らないわけではない。Dellに入社する前の20年間、米自動車メーカーのFord MotorとGeneral Motors(GM)に在籍し、とりわけ後者では上場廃止と再上場を経験している。Fordでは経営改善手法「シックスシグマ」を用いた効率化達成に貢献し、GMでは製造の外部委託とサプライチェーンITへの転換を指揮した。Dellの経営革新は同じような規模になるのだろうか? 「変化は大きい」と同氏。だが、革新のスピードはもっと速いという。「(自動車の)18、24、36カ月という製品ライフサイクルと、Dellのような3、6、8カ月の製品ライフサイクルとでは、大きく異なる」

 もしDellが非上場企業に移行するなら、カラボウティス氏はコスト削減に大きなプレッシャーを感じることになるだろう。そう語るのは、Fortune 500社を対象に、経営革新に大きく関連するアウトソーシングのアドバイスを行うコンサルティング会社のパートナー、デビッド・ラットチック氏だ。「DellはIT企業ではあるが、今後の債務返済のために、CIOは可能な限り高い効率性とコスト効率を追求しなければならないというプレッシャーにさらされるだろう」

会員登録(無料)が必要です

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

髫エ�ス�ス�ー鬨セ�ケ�つ€驛「譎擾スク蜴・�。驛「�ァ�ス�、驛「譎冗樟�ス�ス驛「譎「�ス�シ驛「譏懶スサ�」�ス�ス

製品資料 NTTドコモビジネス株式会社

IT人材が不足する中、多拠点/多店舗企業がネットワーク運用を楽にするには?

国内のITサービス市場が堅調に伸びている一方、その推進役を担うIT人材の不足が深刻化しつつある。この問題によって、特に多拠点/多店舗を展開する企業の多くが、自社のネットワーク運用においてさまざまな課題に直面しているという。

製品資料 株式会社日本能率協会マネジメントセンター

効果的な1on1で組織力を向上、AIで対話力を改善する支援ツールとは

管理職の対話型マネジメントによる組織力の活性化を目的に、「1on1」を導入する企業が増えている。しかし、さまざまな課題も浮上している。最先端のAI技術で、客観的に1on1を分析し、PDCAを回して改善ができる1on1支援ツールを紹介する。

製品資料 LRM株式会社

年間を通じたセキュリティ教育計画を立て、従業員の意識を高める方法

社内のセキュリティ意識を高めるために欠かせないセキュリティ教育。効果的な教育を行うには、年間を通じた計画を立てることが必要だ。本資料では、その具体的なアプローチとともに、セキュリティ教育を自動で実現するサービスを紹介する。

製品資料 SB C&S株式会社

厳格化が進むプライバシー規制にどう備える? 企業が押さえるべき実践ポイント

プライバシー保護に関する規制が厳格化する中、データの収集・活用における戦略の見直しが進められている。規制対応のガイドラインとして、求められる対策やファーストパーティーデータ活用時の留意事項などを解説する。

製品レビュー SB C&S株式会社

Webサービス展開に当たって忘れがちな、ID管理とプライバシー規制への対応方法

昨今、多くの組織が、商用サイトなどに来訪するユーザーのプライバシーデータの取り扱いや、その法令順守について戦略の見直しを迫られている。ガバナンスを確保しながらデジタルマーケティングや顧客向けビジネスを推進する方法を探る。

アイティメディアからのお知らせ

From Informa TechTarget

「テレワークでネットが遅い」の帯域幅じゃない“真犯人”はこれだ

「テレワークでネットが遅い」の帯域幅じゃない“真犯人”はこれだ
ネットワークの問題は「帯域幅を増やせば解決する」と考えてはいないだろうか。こうした誤解をしているIT担当者は珍しくない。ネットワークを快適に利用するために、持つべき視点とは。

ITmedia マーケティング新着記事

news017.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news027.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news023.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...