モバイルセキュリティに関する限り、これ1つで事足りるという手段は存在しない。ただし対策を検討する際に知っておきたい心構えはある。
モバイルデバイス活用において、セキュリティ対策ほど難しいことはない。何らかのセキュリティ対策を考えるとき、他のセキュリティ対策のルールやアプローチを参考にできることは、まれだ。新しい要素に対して既存のセキュリティ対策をそのまま適用すると、重要なリスクを見落として情報流出を招く事態になりかねない。
IT部門は、モバイルデバイス活用で最もありがちなセキュリティの不備を知り、それをどう避けるかを知らなければならない。そのヒントとなる4つのポイントを紹介する。
エンドユーザーがモバイルセキュリティ関連の指示を無視するのは、それをうっとうしく、仕事をする上での妨げになると考えているからだ。多くの組織でセキュリティチームは、エンドユーザーにやってはいけないことを説いて回る存在と化している。例えばセキュリティチームが複雑なパスワードポリシーを定めたことで、エンドユーザーが記憶できないパスワードを付せんに書いて張る状況が生まれている。
アプリケーションを構築するに当たり、会社が正式リリースの前にセキュリティチームに正式なゴーサインを出すよう求めることがある。だがそこでストップがかかり、結果的に導入が遅れることは珍しくない。優秀な組織では、セキュリティチームが最初から関わって、開発の全プロセスにセキュリティ対策を組み込む。
IT部門はかつて、ネットワークのセキュリティを守る最善の手段は、その周辺に巨大な城壁を築いて、非常に少数の信頼できる人しか中に入れないことだと信じてきた。だがこの周辺防御のアプローチの問題は、従業員がネットワークの中にいることを前提としている点にある。モバイルデバイス活用の状況は、その対極に位置する。
モバイルデバイスの活用を前提とした「モバイルファースト」の考え方が浸透した現在では、データそのものに重点を置いた複数段階のセキュリティアプローチが要求される。デバイスレベルでは、最低でも会社が「エンタープライズモバイル管理」(EMM)ツールを使ってデバイスやアプリケーションを守る必要がある。
多段階認証は今では非常に一般的になったが、必須というわけではない。IDとパスワードのみ、または生体認証のみで十分なこともある。IT部門はデバイスに保存されたデータと、アプリケーションからアクセスされる移動中のデータの両方を守る必要がある。
モバイルセキュリティに関する法制度は国や地域によって異なる。EU(欧州連合)は特にプライバシーに関する法制度が厳しいことで知られる。一例を挙げると、組織がEU域外の第三国に、個人の特定が可能な情報を移転することに極めて高いハードルを設けている。
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