VMは、使い捨ての時代を迎えた。つまり、消耗品になったということだ。アプリケーションのスケール拡大を目的に、企業は新たなVM導入の自動化ツールを採用している。異常が発生したVMのトラブルシューティングを行うよりも、別のVMインスタンスを導入する方が早いためだ。
DevOps(注4)は、手動の作業を必要としない。手動での導入は、DevOpsの想定する業務方法とは対極にある。DevOpsでは、同じ方法で複数回実行されるタスクをスクリプト化するというのが重要な考え方だ。つまり、導入作業自体がシステムで自動化される。
※注4:開発(Development)担当者と運用(Operations)担当者が連携、協力する開発手法
PaaS(Platform as a Service)の登場により、システム構築や管理など、“社員がこなさなければならない”業務も減っている。かつて各企業が独自に構築したシステムで、IaaS(Infrastructure as a Service)に基づいて決まっていた業務は、今やベンダーが開発者や企業向けに提供するサービスの一部だ。例えば、大手クラウドベンダーは、堅固なセキュリティを備え、24時間365日稼働し続けるデータベースホスティングを提供している。こうしたサービスを利用する企業は、自社データベースのインフラ構築や管理業務から解放された。データベース管理者による入力操作は大きく減り、常駐のサーバ管理者ももはや必要なくなった。
とはいえ、システム管理自体が単純になったわけではない。形を変えただけだ。複雑な部分は、VMからオーケストレーションやスケーリング(注5)へと移った。高可用性や災害対策(DR)のような仮想化要素は重要性を失っている。その一方で、IT業界ではマイクロサービスが注目されるようになっている。スケーラブルで冗長性があり、スピンアップもスピンダウンも自由自在にできるためだ。自動化は、直接的関与をほぼ皆無にすることを意味する。例えば、Microsoftの「PowerShell」は、スクリプト1行でクラウドインフラを稼働できる。
※注5:システムやハードウェア、ソフトウェアなどの処理能力や機能を、必要に応じて増強、拡大、縮小などして調整すること
昔ながらのDR施設は、高コストの不要な遺物になりつつある。クラウドは、第2段階の仮想化にも影響を与えている。例えば、かつての企業は、メインのデータセンターとは別のデータセンターにDR機能を置いていた。最近のアプリケーション構成では、災害発生時、企業全体のインフラをクラウドのみで再始動できる。ZertoやAcronisが提供する最新のDR管理製品では、コストの高い“2つ目のデータセンター”が要らない。こうした製品を導入すれば、企業はDR構成を自動入力し、クラウドで構成できる。
これが、仮想サーバ管理者の置かれた現実だ。その未来は、クラウドコンピューティングへのキャリア転換しかない。コスト削減を目的に、業務アプリケーションを最初からクラウドファーストで構築する企業は、今後増えていく。特定のシステムから動けない昔ながらのアプリケーションは、ポケベルやタイプライターと同じ道をたどるだろう。
筆者が本稿執筆時点で把握している仮想サーバ管理者の役割の大部分は、2028年までに大幅に縮小、廃止される。仮想データセンターに必要な従業員数も、大幅に減る。自動化とスクリプトがあれば、膨大な数のサーバを1人で管理できる。
仮想サーバ管理者にとって、クラウド分野へのキャリア転換のチャンスは、まだ残っている。仮想サーバ管理者は、大半の管理者に比べればラッキーだ。テクノロジー自体は変わっても、仮想サーバ管理者のスキルは、一般的なクラウドやDevOpsの分野に十分応用可能だ。
コーディングやプログラミングの大家になる必要はない。仮想サーバ管理者には、アーキテクチャやツールに対する深い見識が求められる。例えば、DevOps管理者になるには、オープンソースソフトウェア「Docker」によるコンテナ化や、管理ツール「Chef」による構成管理、同じく管理ツールの「Kubernetes」によるコンテナオーケストレーションなどに対する理解が欠かせない。クラウドホスティングの場合、複数のスクリプト言語やハイパーコンバージドインフラの勉強が必要になる。
親愛なる仮想サーバ管理者たちよ、もう危険信号が見えるはずだ。まだチャンスがあるうちに、行動を起こすべきである。
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