治療に対する満足度を高めるテクノロジー
Amazon元幹部が医療分野に挑戦 「今の医療には “顧客目線”が足りない」
Amazonの元幹部、ティッソン・マシュー氏が医療分野に参入し、Amazon時代に培った経験を医療分野に生かそうとしている。医療のコンシューマライゼーションを実現する方法について、同氏に話を聞いた。
Amazon.comの元幹部、ティッソン・マシュー氏が同社で率いていたのは、「Amazon Prime Now」「Amazonフレッシュ」「Amazon Flex」を動かす同社の物流システムを構築、運用するチームだった。現在は、米国カリフォルニア州のメディケアアドバンテージプラン(注1)プロバイダーであるAlignment HealthcareでCTO(最高技術責任者)を務め、Amazon時代に培った経験を医療分野に生かそうとしている。
※注1:米国連邦政府が管理している公的医療保険制度「メディケア」にはパートA、B、C、Dの4種があり、パートCを「メディケアアドバンテージプラン」と呼ぶ。HMO(Health Maintenance Organization:健康維持機構)、PPO(Preferred Provider Organization:保険会社が契約を交わした医師や病院など医療サービス提供者のグループ)、その他民間医療保険会社がメディケア加入者に対して提供するプランのこと。
同氏に、Amazonで学んだこと、それによって医療分野にもたらせると考えている価値、主に医療のコンシューマライゼーション(業務において消費者向け製品の使用が浸透している状態)についてインタビューした。
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―― Amazonで学んだどのようなことが、医療分野に価値をもたらすとお考えですか。
ティッソン・マシュー氏 Amazon最大の価値は、カスタマーオブセッション(顧客中心主義)という文化だ。同社は顧客の信頼を得ること、それを保ち続けることにこだわる。医療分野のシステムは全く顧客指向ではない。システムとプロセスが中心で患者側の視点が欠けている。Amazonで学んだこととは、顧客にこだわり、顧客の視点からさかのぼって解決に取り組むこと、そして最重要事項は顧客のニーズを満たすソフトウェアとテクノロジーを開発することだ。
―― 医療のコンシューマライゼーションの出現について、使用されるテクノロジーの点からどのようにお考えですか。
マシュー氏 何よりもまず「透明性」だ。「情報の透明性」を患者に提供することから始まる。次に「患者の選択肢」、最後が「アウトカム」(注2)だ。透明性を提供するには、情報収集が非常に重要になる。情報とは価格や場所など、現代の消費者にとって非常になじみがあるものだ。ボタンを押すだけで、製品の種類やサービスを受ける場所に関する透明性の高い情報に、必要なときにいつでもアクセスできることが重要だ。
情報の透明性の次に患者に提供するのは「医療分野における各種業者やプロバイダーの選択肢」になる。そして最後がアウトカム、つまり患者が医療機関から価値を得る方法だ。患者がこうしたレベルの透明性や選択肢を得て、自身の健康状態についてのアウトカムをコントロールできるように情報を提供するためには、テクノロジーのさまざまな側面が大きな役割を果たすことになる。具体的には、データ分析、モノのインターネット(IoT)、デバイス(スマートフォン、監視デバイス)といったテクノロジーだ。
※注2:ここでのアウトカムとは、目標とする治療結果のこと。患者にとって望ましい目標状態。
―― 医療のコンシューマライゼーションを実現するテクノロジーは、医療分野のどこに、どのように欠けているのでしょうか。
マシュー氏 一番の問題は、透明性の欠落だろう。患者は何に費用を払い、何を得るのかが分からない。まるでブラックボックスのようなもので、これが患者の決断や選択を困難にしている。介護士も、どの医師の元へ行くのか、行くべきなのかが分からない。
コンシューマライズされた世界では、情報の透明性が求められる。従って、医療業界が直面する最も大きな課題が「透明性の欠如」だ。ただしテクノロジーが透明性を高めれば、事態は進展する。もう1つの課題は「アウトカム」だが、ここでもスペシャリティドラッグ(専門医薬品、注3)やゲノミクス(ゲノム研究)などの分野でテクノロジーによる改善が見られる。
※注3:患者数の少ない希少疾患の治療薬や、治療対象となる適応症が狭い治療薬など。
―― 透明性の高い情報を患者に提供する、最も優れた方法は何だと思いますか。
マシュー氏 米国では最高水準の臨床ケアが提供されているが、それをデジタル情報や、患者のコスト選択の自由と結び付けることができれば、コスト削減につながる。コストを下げ、ありとあらゆるリソースから優れた価値を得るには変革が必要になる。例えば配車サービス「Uber」の車に乗ればタクシー代の概算が分かる。だが普通のタクシーなら到着まで値段は分からない。つまり患者が向かう場所や支払目的を必要に応じて確認できること、医療を受けられること、ニーズに合わせて各種業者やプロバイダーを選べることが重要になる。
―― モバイルデバイスはどのような役割を果たすでしょうか。
マシュー氏 モバイルデバイスは、人間を驚くほどスマートに把握するようになっている。特にモバイルデバイスに埋め込まれている機械学習技術は、今後の意思決定においてさらに大きな役割を果たすようになるだろう。
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