金融、法務系企業には良い選択肢か
「Windows Virtual Desktop」登場でオンプレミスVDIは“オワコン”になる?
Microsoftは「Windows Virtual Desktop」の一般提供を開始した。これにより「VDI市場は大きく変わる」と専門家は予想する。それはなぜなのか。
2019年9月30日(米国時間)、MicrosoftはDaaS(Desktop as a Service)である「Windows Virtual Desktop」の一般提供を開始した。テクニカルプレビューから約6カ月後の正式リリースとなった。
MicrosoftがWindows Virtual Desktopを最初に発表したのは2018年9月、パブリックプレビューを開始したのは翌2019年の3月だった。クラウドサービス「Microsoft Azure」(以下、Azure)で提供し、「Windows 10」をマルチユーザーで利用できる点が他のDaaSと一線を画す。調査会社Enterprise Strategy Groupのシニアアナリスト、マーク・バウカー氏は「すぐには導入が広がらないとしても、ユーザー企業の間で現行の仮想デスクトップインフラ(VDI)を置き換え始めるだろう」と予測する。
「Windows Virtual Desktopは、ハードウェアにこれ以上投資しない方針の企業にとって、ITインフラを管理することなく同等のデスクトップ機能を利用する有力な選択肢になる」とバウカー氏は語る。
併せて読みたいお薦め記事
VDI市場はどうなるのか
- クラウド版Windows 10「Windows Virtual Desktop」はVDI市場の破壊者か?
- 「Windows Virtual Desktop」の衝撃 Windowsをクラウド提供の意味は?
「Windows Virtual Desktop」をもっと詳しく
「DaaS」がオンプレミスVDIに取って代わる
Windows Virtual Desktopそのものは、Windows 10の企業向けエディション「Windows 10 Enterprise」のライセンスを持っているユーザー企業に対して、Microsoftが無料で提供している。ただし利用するにはAzureのサブスクリプション料金を払う必要がある。バウカー氏によると、ネットワーク接続の高速化に伴い、Windows Virtual DesktopのようなDaaSがいずれは従来のオンプレミス型VDIに取って代わるという。
IT資産管理に関するニュースサイト「ITAM Review」を運営するEnterprise Opinionsのリッチ・ギボンズ氏は「面倒なセットアップの手間を掛けることなくVDIの利点を活用できることは、多くの組織にとって魅力的だ」と話す。
Windows Virtual Desktopの使いやすさと応答性も大きな魅力だ。マネージドサービスベンダーBeMoの最高情報セキュリティ責任者(CISO)であるブルーノ・ルコック氏は「Windows Virtual DesktopでWindows 10を使った印象は、ノートPCのWindowsと変わらなかった。非常にユーザーフレンドリーだ」と話す。
ユーザーアクティビティの大幅な変動への対処や災害復旧にも適している。ルコック氏は会計や金融、法務関係の会社がWindows Virtual Desktopに関心を示すのではないかと考えている。「ITインフラの追加コストをかけずに、フルマネージドの安全な方法でWindowsと『Office 365』の最新の機能を利用できるのは大きな魅力だ」と同氏は話す。
Windows Virtual Desktopの連携と機能
Samsung ElectronicsやCitrix Systemsの製品との連携も、Windows Virtual Desktopの魅力を高める要素だ。MicrosoftとSamsung Electronicsはスマートフォン用周辺機器「Samsung DeX」をWindows Virtual Desktop用に最適化し、Samsung ElectronicsのAndroidデバイスでWindowsの機能を利用できるようにする。
MicrosoftはWindows Virtual Desktopを、Citrix SystemsやVMwareのようなVDIベンダーに対抗するサービスではなく、連携するサービスとして位置付けている。例えばCitrix SystemsとVMwareはそれぞれのデスクトップ仮想化製品「Citrix Workspace」と「VMware Horizon」でWindows Virtual Desktopを拡張する機能を提供する。「重複する部分もあるが、Windows Virtual DesktopはWindows 10の提供手段であり、Citrix SystemsとVMwareが管理、保護するワークスペースの選択肢にWindows Virtual Desktopが加わることになる」とバウカー氏は説明する。
Windows Virtual Desktopにも管理機能はあるが、特定のイメージに限定される。詳細な管理機能を必要とする企業は、今後も引き続きCitrix SystemsやVMwareのデスクトップ仮想化製品を使用するだろうとバウカー氏は予想する。
ギボンズ氏は、MicrosoftはこれからWindows Virtual Desktopの機能を拡充すると推測している。「6割の完成度で製品をリリースするのがMicrosoftの得意技だ。徐々に機能を追加していき、1年半かけてキラープロダクトにするのだろう」
Windows 10への移行手段としての活用
MicrosoftはWindows Virtual Desktopで「Windows 7」のデスクトップの仮想化も実現する。同社はWindows Virtual Desktopで利用するWindows 7に対して、2023年1月まで無料の「拡張セキュリティ更新プログラム」(ESU:Extended Security Updates)を提供すると発表した。ユーザー企業はESUを利用すると、サポートの終了したMicrosoft製品の更新プログラムを最大3年間、入手できる。Windows 10に移行する過程でレガシーなアプリケーションを使い続けるための選択肢が広がる。
ギボンズ氏は「Microsoftとしては、オンプレミスで有料のESUを提供して料金を払ってもらうよりも、Azureのクラウド料金を払ってもらう方がいいのだろう。クラウドの顧客を増やす賢明な判断だ」と語る。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[フォーティネットジャパン合同会社] 複雑化しがちな「SASE運用」 IT・医療・金融などの事例に見る導入成功の秘訣 -
製品資料
[フォーティネットジャパン合同会社] 「SD-WAN」導入で失敗しないための5つの重要事項 -
技術文書・技術解説
[フォーティネットジャパン合同会社] VPNの代替候補「ZTNA」を理解できるようになる“3大要素”とは? -
事例
[フォーティネットジャパン合同会社] すぐ分かる「SD-WAN」選定のポイント 成功企業はどんな成果を出した? -
製品資料
[SCSK株式会社] 「Dropbox」管理・運用の困りごと解決ガイド
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
2
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
3
みずほ証券が「液冷サーバ」を採用 1日3.6億件の計算を支えるための要件
-
4
「Microsoft 365」が乗っ取られる MFAを破る“本物の画面”の恐怖
-
5
「Windows」の不要なファイルを安全に消して容量を空ける方法
-
6
Microsoft月例パッチ1400件超で過去最多 「限界点」を迎えたパッチ管理
-
7
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
8
RAGで「データをAIに送る」運用が限界を迎えている理由
-
9
SAP導入後も残る“Excel依存” 京急電鉄は「kintone」でどう解消した?
-
10
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
3
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
4
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
5
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
6
AI駆動開発のスピードと安全性を両立 「品質・セキュリティ管理」の実践ガイド
-
7
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
8
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
9
「標的型攻撃メール」事例・サンプル集
-
10
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー