SAPは2019年に経営陣を刷新した。新しい経営陣は同社の提唱する「インテリジェントエンタープライズ」を推し進め、ユーザー企業の「SAP S/4HANA」への移行を促進する必要がある。だが、その道のりは険しい。
SAPのERP(統合業務)パッケージ「SAP S/4HANA」への移行とSAP経営陣の刷新の2つが、2019年前半のSAPにおける最も重要な話題だ。
どちらの話題も多くの注目を集めた。S/4HANAへの移行は依然としてSAPにとって大きな懸念だ。新しい経営陣には、この移行戦略を先導するとともに、同社が「インテリジェントエンタープライズ」と呼ぶ概念の価値を示す取り組みを推し進めることが期待される。インテリジェントエンタープライズは、業務のプロセスと運用に抜本的なデジタル変革をもたらすことだ。S/4HANAは、同社のインテリジェントエンタープライズ戦略の根幹を成す。
経営陣の再編に加え、SAPは約4400人の従業員を一時解雇した。この動きは、同社が従来のインメモリデータベースシステム「SAP HANA」の開発よりもクラウド開発戦略に注力することを示している可能性がある。
「SAPはS/4HANAへの移行ペースが遅いことに、相変わらず大きな懸念を抱いている」と指摘する関係者もいる。同社にとっての課題は新規のユーザー企業ではなく、既存のユーザー企業に向けてS/4HANAの事例を作ることにある。
S/4HANAの実績は、特に新規ユーザー企業については改善が続いている。しかしその伸びはSAPが求めているほど速くはないと話すのは、ITコンサルティング会社Enterprise Applications Consultingの創設者兼社長、ジョシュア・グリーンバウム氏だ。SAPは従来のERPパッケージ「SAP ERP Central Component」(SAP ECC)にとどまるユーザー企業に対して、S/4HANAの現実的なメリットをもっと提示する必要があるという。
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