S/4HANAが自動化機能を強化
「SAP S/4HANA Cloud 1908」の新機能 RPAと組み込み分析機能とは?
2019年8月に発表されたSAPの「SAP S/4HANA Cloud 1908」にはRPA機能と組み込み分析機能が新たに加わった。これらの機能はビジネスプロセスの自動化を進めるが、こうした新機能を「飾り物」と呼ぶアナリストもいる。
SAPが2019年8月に発表した、統合業務(ERP)パッケージ「SAP S/4HANA」のクラウドサービス版「SAP S/4HANA Cloud」のバージョン1908には、新たにロボティックプロセスオートメーション(RPA)機能と組み込み分析機能が加わった。この2つの機能を使うことで、ユーザー企業はビジネスプロセスを容易に自動化できるようになる。
システムが自動で問題を特定し、エンドユーザーに解決策を提案できるようになる――。そうした期待を語るのは、SAPで製品管理部門の責任者を務めるスベン・デネケン氏だ。「S/4HANA Cloudでは金融業界や製造業界での成長を重視している」とデネケン氏は説明する。「クラウドでのワークロード(アプリケーション)の運用を希望する製造企業が増えている。S/4HANA Cloudはそうした取り組みを可能にする」(同氏)
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「これらのRPAと組み込み分析機能は、基本的には飾り物だ」。ERPコンサルティング会社Enterprise Applications Consultingの社長でアナリストのジョッシュ・グリーンバウム氏は、こう話す。グリーンバウム氏はSAPがS/4HANA Cloudを、各業界向けに特化した機能を持つクラウドサービスにする必要があると指摘する。
S/4HANA CloudのインテリジェントRPAとは
S/4HANA Cloudは四半期単位でバージョンアップする。SAPはその最新バージョンであるS/4HANA Cloud 1908に、「インテリジェントRPA」という機能を新たに組み込んだ。RPAは、手順のあるタスクを自動化する手段だ。インテリジェントRPAはRPAを一歩先に進め、複雑なビジネスプロセスを自動化する。
インテリジェントRPAには特定の業界や部門に特化した具体的な用途がある。それは
- 金融業界の銀行取引明細処理
- 製造業界の製造資源計画(MRP II)
- 調達部門における発注確認
の3つだ。S/4HANA Cloudの「My Situations」という新機能(写真)は、RPAと組み込み分析(後述)を利用して、ビジネスプロセスの問題点を特定する。その後、エンドユーザーに問題点に関する情報と解決策を提案する。「My Situationsはビジネスプロセスを理解する。そのビジネスプロセスをエンドユーザーの役割と結び付け、エンドユーザーに通知することで、問題解決のためにどこから着手すべきかを指示する」(SAPのデネケン氏)
他システムと連携した組み込み分析
S/4HANA Cloudは「SAP Analytics Cloud」との連携を通じて、新たに組み込み分析機能も取り入れた。この組み込み分析機能で、S/4HANA Cloudは他のシステムからのデータ収集や、さまざまなシステムとの相互連携が可能になる。例えば金融部門は、人事システムや製造システムからのデータを収益計画と組み合わせて分析して、販売価格や販売量をシミュレーションできるようになる。SAP製品だけでなく、他ベンダーのシステムからのデータの読み込みも可能だ。「S/4HANA Cloudだけで計画の策定が完了する」とデネッケン氏は語る。
S/4HANA Cloudには業界別の機能がもっと必要
これらの新機能には「飾り物にすぎない」という指摘もある。アナリストのジョッシュ・グリーンバウム氏は、S/4HANA Cloudのユーザー企業を増やすには、各業界向けに特化した機能を実装したり、パブリッククラウドの強みを生かしたりする必要があると指摘する。
S/4HANAはプライベートクラウドでも運用できるが、この場合「パブリッククラウドほどはコスト面のメリットが得られない」とグリーンバウム氏は指摘。S/4HANA Cloudが重要なのは「パブリッククラウドとして各業界にサービスを提供する点だ」と説明する。「RPAを用意したからといって、それが判断基準になるとは考えられない」(同氏)
これまでSAP製品を利用してきた企業がS/4HANA Cloudへの移行を決断するかどうかは、RPAのような機能ではなく、各業界固有の機能が用意されているかどうかが左右する可能性が高いというのが、グリーンバウム氏の見解だ。こうした機能を備えていなければ「パブリッククラウドのS/4HANA Cloudと、既存のオンプレミスやプライベートクラウドで動くシステムを組み合わせた、複雑な環境で利用することになるだろう」と同氏は語る。「こうした点に注意を払わなければ、SAPがS/4HANA Cloudにどのような機能を追加しても、ビジネスチャンスを逃すことになる」(同)
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