足踏みするユーザーも
「SAP S/4HANA」への移行でオンプレミスが好まれる意外な理由
「SAP ERP」の保守サポート終了時期が迫っている。既に「S/4HANA」に移行したユーザーはどうやって移行したのか。
SAPは、2025年に「SAP ERP Central Component」(SAP ECC)の保守サポートを終了する。SAP ECCはERP(統合業務)ソフトウェア群「SAP ERP」の中核的なソフトウェアだ。SAP ECCユーザーは、いずれ「SAP S/4HANA」(S/4HANA)に移行する必要がある。移行には困難が伴うと予測するユーザーは少なくない。しかしSAPパートナーとして移行支援サービスを提供するApproyoのCEO(最高経営責任者)を務めるクリス・カーター氏は、S/4HANAへの移行をかなり楽観的に捉えている。
カーター氏は、SAPのERPソフトウェア「SAP R/2」の時代からSAPの製品に関わっている。SAP R/2は、1990年代に利用されており、S/4HANAの前身に当たる。ApproyoはSAPパートナーとして、世界中の顧客にS/4HANAへの移行支援サービスを提供し、移行を支援した実績は既に100件を超えているという。
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SAPソフトウェアの動向をおさらい
S/4HANA移行の実態はどうなのか。カーター氏に聞いた。
―― S/4HANAへの移行を進めているユーザーはどの程度いるのでしょうか。
クリス・カーター氏(以下、カーター氏) 当社はSAPと協力して、S/4HANAへの移行を支援している。顧客の移行の動きは非常にゆっくりだ。移行に当たって取り組まなければならない作業が少なくないからだ。しかし移行はそれほど難しいというわけではなく、SAP R/2から「SAP R/3」への移行に比べるとはるかに簡単なことは間違いない。移行用ツールも豊富だ。
―― ユーザーがS/4HANAへの移行で何を最も恐れているのでしょうか。
カーター氏 最も恐れているのはコスト、その次が変化だ。誰もが変化を懸念している。自分の仕事は変わるのだろうか、S/4HANAの財務ツールによって、財務会計(FI)と管理会計(CO)のやり方が変わるのだろうかと考えている。SAPシステムが新しくなる度に変化は生まれる。どのような変化があり、その変化にはどのようなメリットがあるかをしっかりと調べる必要がある。厳密な変更管理が必要になる。移行のときどのような作業が発生するかを十分認識することも必要だ。
―― 移行に着手するに当たって何から始めるのがよいでしょうか。
カーター氏 まずは計画だ。移行計画を立て、自社の事業計画と照らし合わせる。2つの計画が両立しない可能性もあるためだ。長年に渡って使用する過程で、システムに多くの変更が加えられていることがある。そのため現在のシステムに携わっている担当者も、今後携わる可能性のある担当者も、これまでに加えられた変更を把握して、新しいシステムの稼働によって何が起きるのかを予測する必要がある。
―― S/4HANAにはオンプレミス、クラウド、ハイブリッドといった導入モデルがありますが、どのような導入モデルが多く採用されているのでしょうか。
カーター氏 当社の顧客の多くが、オンプレミスでS/4HANAに移行している。しかしこれからはMicrosoftのクラウドサービス群「Microsoft Azure」(Azure)を利用するケースも増えると見ている。当社は、パブリッククラウドにS/4HANAを導入する顧客も支援している。他のパブリッククラウドよりもAzureで成功するケースが目立つ。
―― ユーザーがオンプレミスを好む傾向は、クラウドのメリットを売り込んでいるSAPや他のベンダーのメッセージに反するように見えますが。
カーター氏 どの顧客もクラウドには関心がある。特にコスト面のメリットを認識している。ただ、「Amazon Web Services」(AWS)、「Google Cloud Platform」(GCP)、Azureでここ数年の間に起きた機能停止によって、顧客は恐れを抱いている。オンプレミスでも機能停止が起こる恐れはあるが、自社でトラブルに対処できることに安心感を抱く企業が少なくない。
SAP製品の中には、3つの主要パブリッククラウドのいずれでもまだ適切に動作しない機能がある。そのため、複数のシステムや古い技術を利用している場合は、クラウドに移行すると利用できなくなる可能性がある。依然課題が残ることを認識しておく必要がある。
―― いずれにせよ、SAPの顧客はいずれS/4HANAに移行しなければなりませんね。
カーター氏 S/4HANAへの移行が本格化するのはこれからだが、いずれ移行しなければならないことは確かだ。2025年という期限があるという理由だけではない。SAPが自社製品に新たな技術を取り入れ、SAPパートナーが提供する製品やツールにもその利点が取り入れられるからだ。
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