「5G」「RPA」「AI」はなぜ危険なのか? リスクが生まれる原因を解説新たな技術と新たな脅威【中編】

企業が新たな技術を導入すると、それに応じて攻撃の接点も増加することになる。「5G」「RPA」「AI」といった新興技術はどのようなセキュリティリスクをもたらすのか

2020年05月12日 05時00分 公開
[David PeterssonTechTarget]

 さまざまな技術が発達し、ビジネスやわれわれの生活を変えている。だが、そうした技術が新手のサイバー攻撃の温床にもなり得ることに注意しなければならない。最新技術を導入する場合、どのような攻撃に注意し、どう対策すればよいのかを見ていこう。

5G

 「5G」(第5世代移動体通信システム)は従来よりもはるかに短い波長の電波を利用する。「この点が、5Gにおける最大のサイバーセキュリティ脅威の発生源になる」と警告するのは、VPN(仮想プライベートネットワーク)に関するレビューサイト「VPNRanks」のサイバーセキュリティ編集者であるアブダル・レーマン氏だ。攻撃者は、標的の職場や自宅近くに偽の通信基地局を設置することで、標的が使っているデバイスについてのさまざまな情報を入手できる。具体的には位置情報、デバイスの機種、OSなどだ。同氏はこうしたリスクを軽減するために、強力な暗号化の利用を推奨する。

AI

 AI(人工知能)技術の進化に伴って出現する脅威の一つが、音声の「ディープフェイク」だ。ディープフェイクは機械学習技術を利用し、ある人に似せた音声や映像を生成する技術のことを指す。攻撃者はディープフェイクで生成した音声を悪用し、企業幹部や政治家など認知度が高い個人になりすます。そのような音声メッセージを聞いたり、電話を受けたりした従業員がだまされ、攻撃者への送金や機密情報の送信に至ってしまうケースがある。

 セキュリティベンダーArmisで最高情報セキュリティ責任者(CISO)を務めるカーティス・シンプソン氏によると、ディープフェイクによる詐欺で実際に24万3000ドルがだまし取られた事件もある。「ディープフェイクを使った攻撃は的を絞ったフィッシング攻撃に比べて特定が難しいため、2020年も攻撃者による悪用が続くだろう」(シンプソン氏)

 たった1回の誤ったクリックにより、攻撃者が企業のシステムやLANにマルウェアを仕込んだり、バックドア(攻撃者の侵入口)を設置したりすることを許してしまう恐れがある。「サイバーセキュリティ脅威に関して聖域はない」と、セキュリティベンダーIllumioの創設者兼最高技術責任者(CTO)であるPJ・キルナー氏は注意を呼び掛ける。キルナー氏は子どもが親のスマートフォンにマルウェアをインストールする危険性に触れ、「子どもが企業のセキュリティを脅かす新たな脅威の接点に早変わりすることになる」と話す。

RPA

 調査会社Gartnerは、「RPA」(ロボティックプロセスオートメーション)市場が2019年には13億ドルまで伸びると予測している。ID・アクセス管理(IAM)製品ベンダーOne Identityで製品管理部門のバイスプレジデントを務めるダレル・ロング氏は、2020年もRPAは成長を続け、広く浸透すると予測する。ただしRPA普及の一方で「セキュリティ対策が後回しにされ、脆弱性が残る恐れもある」とロング氏はみる。

 RPAツールで作成したソフトウェアロボットに機密データを扱わせる場合、ソフトウェアロボットはそれらのデータを保持することになる。これが攻撃者の標的になる可能性がある。企業はRPAツールやその操作対象データに関するセキュリティに細心の注意を払い、攻撃者の侵入を防がなければならない。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

譁ー逹€繝帙Ρ繧、繝医�繝シ繝代�

市場調査・トレンド ゼットスケーラー株式会社

AIの悪用でフィッシング攻撃が巧妙化、今後の予測と防御方法を解説

今や誰もが入手可能となったフィッシングツール。そこにAIの悪用が加わり、フィッシング攻撃はますます巧妙化している。本資料では、20億件以上のフィッシングトランザクションから、フィッシング攻撃の動向や防御方法を解説する。

技術文書・技術解説 ServiceNow Japan合同会社

限られた人材でインシデントや脆弱性への対応を迅速化、その鍵となるのは?

セキュリティ対策チームの57%が人材不足の影響を受けているといわれる昨今、インシデントや脆弱性への対応の遅れが、多くの企業で問題視されている。その対策として有効なのが「自動化」だが、どのように採り入れればよいのだろうか。

製品資料 LRM株式会社

開封率から報告率重視へ、重要な指標をカバーする標的型攻撃メール訓練とは

年々増加する標的型攻撃メール。この対策として標的型攻撃メール訓練を実施している企業は多い。こうした訓練では一般に開封率で効果を測るが、実は開封率だけでは訓練の効果を十分に評価できない。評価となるポイントは報告率だ。

製品資料 LRM株式会社

新入社員の情報セキュリティ教育、伝えるべき内容と伝え方のポイントは?

従業員の情報セキュリティ教育は、サイバー攻撃や人的ミスによる情報漏えいから自社を守るためにも必要不可欠な取り組みだ。新入社員の教育を想定し、伝えるべき内容や伝える際のポイントを解説する。

製品資料 LRM株式会社

2024年発生のインシデントを解説、組織全体でのセキュリティ意識向上が不可欠に

2024年の情報漏えい事故の傾向では、攻撃者による大規模攻撃の他、社員や業務委託先のミス・内部犯行によるケースも多く見られた。インシデント別の要因と対策とともに、今後特に重要になるセキュリティ意識向上のポイントを解説する。

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ITmedia マーケティング新着記事

news025.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。

news014.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。