やや旧聞になるが、AWSの量子コンピューティングサービス「Amazon Braket」を紹介する。さまざまな量子コンピュータへのアクセスや支援ツールに注目だ。
Amazon Web Services(AWS)は量子コンピューティングの比率を上げるため、新たな開発者サービスを推し進めている。「Amazon Braket」(2020年8月公開)は量子ハードウェアと量子アルゴリズムの設計オプションへのアクセスを提供して、開発者(研究者)が量子コンピューティングに着手する手助けをする。
これは(あまり明らかではないが、恐らく)完全なマネージドサービスで、AWSのコンピューティングリソースで運用される量子機能にアクセスできる。
開発者はAmazon Braketを使用して、選択した量子プロセッサで自分の量子アルゴリズムを実行できる。量子プロセッサは、D-Wave Systemsの超電導量子アニーラ、IonQのイオントラップ型プロセッサ、Rigetti Computingの超電導量子プロセッサを選択できる。
シミュレーションのジョブと量子ハードウェアのジョブは、どちらも統一された開発エクスペリエンスを通じて管理される。
知っての通り、量子コンピューティングは量子力学を用いることにより従来型のコンピュータでは不可能な演算問題を解決する潜在能力を秘めている。
「現時点で量子コンピューティングを有意義に進めるには、社内で専門知識を育て、アクセスできる限られた量子ハードウェアを探す必要がある。幅広い量子ハードウェアや技術にまたがって検証を試みる研究者は、必要なインフラを設定して管理し、アクセスについて複数のベンダーと交渉して、さまざまな量子プロセッサとインタフェースを取るカスタムコードを作成しなければならない」(AWSのプレス発表より)
AWSチームによると、Amazon Braketを利用すれば「Jupyter Notebook」のような使い慣れたツールで開発者ツールにアクセスできるため、すぐに作業を開始できるという。Amazon Braketには量子アルゴリズムの設計、結果の表示、他の開発者とのコラボレーションに使えるクロスプラットフォームの開発者ツールがプリインストールされている。
こうした開発者ツールを利用して独自の量子アルゴリズムを設計したり、ライブラリから構築済みのアルゴリズムを選択したりできる。このライブラリは今も拡張が続けられている。
AWSでテクノロジー部門のバイスプレジデントを務めるビル・バス氏は次のように語る。「量子コンピューティング技術が進化しているため、何千人もの利用者が量子技術の可能性を探り、その開発に貢献するために量子コンピュータを使った実験を行う方法を求めていると考えている。クラウドは、コンピューティング能力を集中的に利用する研究のために量子システムと従来型コンピュータを組み合わせる主な方法になるだろう」
開発者は「Amazon Elastic Compute Cloud」(EC2)を使った量子コンピュータシミュレーターで自分のアルゴリズムの実行、検証、トラブルシューティングが可能だ。複数のプロバイダーを利用するのでもなく、1つの技術に全てを委ねるのでもなく、選択した量子コンピュータでアルゴリズムを実行できる。
利用者は量子アルゴリズムを実行できるだけではない。Amazon Braketを使って量子コンピューティングと従来型コンピュータを組み合わせて使う「ハイブリッドアルゴリズム」を実行することも可能だ。これにより現状の量子技術に内在する限界を克服できる可能性がある。
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