2020年11月18日 08時00分 公開
特集/連載

IBMが百万超の量子ビットプロセッサ実現のロードマップを公開今作っているのは冷凍庫

現在の量子コンピュータは64量子ビットにすぎない。IBMはこれを百万超の量子ビットにスケールアップする計画だ。そのためにIBMは現在どのような取り組みをしているのだろうか。

[Cliff Saran,Computer Weekly]
iStock.com/NatalyaBurova

 現在IBMが提供しているのは最大64量子ビットの量子コンピュータだ。同社が100超の量子ビットを目指す最初のステップは、2021年に予定している127量子ビットの「IBM Quantum Eagle」プロセッサだ。2022年には433量子ビットの「IBM Quantum Osprey」、2023年には1221量子ビットの「Quantum Condor」を予定している。

 同社の戦略を概説するブログ記事には、百万超の量子ビットプロセッサ実現に向けてIBMがどのように進めていくかを示すロードマップが示されている。これを記したのはIBMのフェローでIBM Quantum部門のバイスプレジデントを務めるジェイ・ガンベッタ氏だ。同氏によると、そのためには

  • 業界最先端の知識
  • 多くの専門分野にわたるチーム
  • 量子コンピュータのあらゆる要素を改善するためのアジャイルな方法論

が必要になるという。

 「当社が小型プロセッサ向けに確立した設計原理は、2022年に433量子ビットのIBM Quantum Ospreyのリリースへと当社を導くだろう。より効率が高く、緻密な制御と極低温のインフラにより、プロセッサは確実にスケールアップされるだろう。スケールアップに当たって、個々の量子ビットのパフォーマンスを損なうこともなく、新たなノイズ源を導入することもなく、フットプリントが大きくなり過ぎることもない」とガンベッタ氏はブログ記事に記載している。

 1221量子ビットのIBM Quantum Condorは前プロセッサをベースに構築され、「2量子ビットエラー」の低減を目指すことになる。これにより、IBMは量子回路を長期間実行できるようになるとガンベッタ氏は話す。

 Quantum Condorの構築に必要な開発によって、同社の量子コンピューティングエンジニアが量子コンピュータをスケールアップする方法において最も差し迫った課題の幾つかを克服できるようになることを願っている。それには冷却が不可欠だとガンベッタ氏は話す。そのため、IBMは希釈冷凍機を開発している。

 IBMはその開発の話し合いの中で、今後何度もリリースする量子コンピュータ向けに冷却装置の構築に取り組むことになったと同氏は話す。「高さ約3メートル、幅約2メートルの巨大冷凍庫(社内コードネームGoldeneye)だ。これは、現在市販されているどれよりも大きな希釈冷凍機だ。当社のチームは百万超の量子ビットシステムを念頭に置いてこの巨大な冷凍機を設計し、既に根本的な実現可能性の検証を始めている」

 「最終的には、複数の希釈冷凍機を量子相互接続によってリンクし、それぞれがスーパーコンピューティングプロセッサにおけるイントラネットリンクのような百万超の量子ビットを保持して、世界を変えることができる超並列量子コンピュータを生み出す未来を想像している」(ガンベッタ氏)

 IBMはより大きな量子ビットシステムを開発するためのロードマップを策定しているが、ガンベッタ氏は量子コンピュータを構築する際に直面する課題を認識している。

 「進むべき道が分かっても、障害が取り除かれたわけではない。この技術が進化する歴史の中で最大の課題に直面している。だが、当社の明確なビジョンにより、フォールトトレラントな量子コンピュータは今後10年以内に実現可能な目標だと感じられるようになった」とガンベッタ氏はブログに記載している。

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