AMD、Intel、NVIDIAの半導体ベンダー3社が打ち出す買収戦略で、半導体市場は騒がしくなっている。中でもNVIDIAのArm買収は市場の勢力図を塗り替える可能性がある。ただし買収の先行きは不透明だ。
もはやIntelは、半導体市場の支配的なベンダーではなくなる可能性がある――調査会社Gartnerのバイスプレジデントを務めるアラン・プリーストリー氏はこう話す。Intelはつまずきはしたものの、製品ポートフォリオを多様化することでビジネスモデルを維持することはできるだろう。プリーストリー氏も、Intelが「深刻な苦境に陥っている」とまでは考えていない。ただし他のベンダーがシェアを伸ばすとみる。
2020年10月、IntelはNAND型フラッシュメモリおよびストレージ事業をSK hynixに約90億ドルで売却することを発表した。Intelが重視しているのは、AI(人工知能)技術、5G(第5世代移動通信システム)、エッジコンピューティングの分野だ。さらに新たなメモリ技術を採用した「Intel Optane」シリーズに注力することも表明している。
前年の2019年12月には、Intelは約20億ドルでHabana Labsを買収すると発表している。この買収でIntelが獲得したのは、AI技術向けのプロセッサだ。5G分野では、「無線アクセスネットワーク」(RAN)の構築に関してVMwareと提携している。
NVIDIAは2020年9月、ArmをソフトバンクグループおよびSoftBank Vision Fundから約400億ドルで買収することを発表した。NVIDIAにとって、この買収は半導体市場で自社の地位を高める“最強の一手”となる。ただし買収がうまくいけばの話だ。
GPU(グラフィックス処理プロセッサ)市場を長年にわたってけん引してきたベンダーがNVIDIAだ。NVIDIAは主要なサーバベンダーと提携しており、AI技術関連のビジネスを重点的に推進してきた。Arm買収により、NVIDIAはスーパーコンピュータからスマートフォン、IoT(モノのインターネット)デバイスまで、多様な市場に参入することになる。Armアーキテクチャを採用したプロセッサは世界中の大半のスマートフォンに採用されている。
2020年6月と11月に発表されたスーパーコンピュータの性能ランキングで、演算速度など4部門で世界1位を獲得した「富岳」(富士通と理化学研究所が共同開発)のプロセッサも、Arm製プロセッサをベースにしている。Appleは新しい「Mac」に、Intel製のプロセッサではなくArm製プロセッサを搭載した。これもArmの躍進を示す大きなニュースだ。
こうした中、NVIDIAのArm買収を疑問視する見方も出ている。幾つかの国では、規制当局が承認に慎重だ。買収に批判的な人は「買収が公正な競争を阻害し、買い手であるNVIDIAに過剰な利益をもたらすのではないか」と懸念している。
Armの創業者が示す「ビジネスモデル崩壊」への懸念も真剣に受け止める必要がある。中国では国内企業が半導体分野で競争関係にあるため、問題はさらに大きい。「中国の規制当局が買収の阻止に踏み切れば、事態は深刻だ」と、あるコンサルタントは話す。
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