2021年06月28日 08時00分 公開
特集/連載

RPA導入を成功させるために不可欠な「経営陣との合意」RPA導入成功の条件【後編】

RPAのメリット/デメリットを理解し、効果的なユースケースを検討するだけではまだ足りない。経営陣はRPAの導入効果について“誤った考え方”に傾きがちだ。RPA推進者はこれを防ぐ必要がある。

[Cliff Saran,Computer Weekly]

 前編(APIは万能ではない――APIではなくRPAを使うべき理由)では、APIの限界とデメリット、APIにはないRPAのメリットを解説した。

 後編では、RPAの導入を失敗させる誤った考え方を紹介する。

統合の障害物の排除

 完全にスタンドアロンのビジネスアプリケーションはない。どこかの時点でビジネスプロセスに参加して、他のシステムと情報を共有する必要がある。とはいえ、Vanson Bourneが800人のITリーダーに対して行った最新調査(MuleSoftの2021年接続ベンチマークレポート)で、回答者10人のうちほぼ9人がDX(デジタルトランスフォーメーション)の妨げになるものとして統合の課題を挙げていることが分かった。

 つながりのないプロセスはシームレスなワークフローを妨げ、人間の介入を必要とする。DXを妨げている課題を取り除く一つのアプローチがAPIだ。だが、NHS SBSがOracleシステムの統合で経験(前編参照)したように、APIは常に利用できるとは限らない。多くの場合、統合を容易にするのがbotだ。

 Knowledge Capital PartnersがRPAプロバイダーのBlue Prismのために最近行った調査では、DX実現のために複数のアプリケーション/システムを統合するプラットフォームとしてRPAが大きな要素となる理由が議論されている。

 RPAで全てを行うことはできない。RPAはDXのために利用するツールセットの一部だ。チームの変革には開発者の作業とAPIが必要になることがある。RPA、スキャンした書類を読み取るAIベースのOCR、顧客の対応を理解するためのAI対応の自然言語処理。これらは全て、ビジネスプロセスにおける意思決定の自動化に際して果たすべき役割がある。しかし、全体の中の一部にすぎない。

 ツールボックスの中で最も重要なツールは人的要素だ。プロセスの改善方法に関する独創的なアイデアを出すのは人間だ。人々にその自信と非効率的なタスクを自動化するサポートを提供することは、インテリジェントなRPAの最もインテリジェントな使い方だ。

自動化へのボトムアップのアプローチ

 ダニーロ・マクガリー氏は、代替投資業界のスペシャリスト企業Alter Domusで自動化とAIのグローバル責任者を務めている。マクガリー氏はUnitedHealth GroupとRoyal Bank of Canada(RBC)でRPAの主要イニシアチブに取り組み、RBCの総資本市場労働力の大部分を自動化するプロジェクトに6年以上携わっている。

 マクガリー氏はAlter Domusでの役割を「全く新しい自動化部門を設立することが使命だ」と説明する。同氏はRPAプロジェクトを運営してきた経験から、自動化は文化の転換だと考えている。

 マクガリー氏はセンターオブエクセレンス(CoE)の設立に着手した。CoEは、価値が低く反復の多いタスクを処理する自動化の大規模な展開を促進し、サポートする。「会社に入ってこれを一から行うことが夢だった」と話す同氏は、RPA分野の最高の開発者と社内ビジネスアナリストで構成されるチームを結成した。

 成功した自動化はCoEだけではなかった。マクガリー氏にとっては、自動化は変革の連続だった。「初年度、2年目、3年目は少しずつ違う」と同氏は語る。

 RPAプロジェクトの成功度を決めるのは関係する人々だとマクガリー氏は話す。「RPAイニシアチブには最初から全てを含めるようにする。関係する人々は一緒に取り組むことができるアイデアを持っている。こうしたアイデアをイニシアチブに取り込むようにサポートする」

 マクガリー氏は、RPAのワークショップを従業員向けに開催している。こうしたワークショップを行えば、RPAが仕事の効率化にいかに役立つかについて関心を持っている従業員を特定できる。

 マクガリー氏の経験では、こうしたことが将来に役立つ可能性があるという。「3カ月のプログラムでこうした従業員の仕事を支援すれば、その後は従業員が独自のプロジェクトを実行したりチームがbotを作成したりできる」

 人はしばしば、botは本当は複雑なことをするのが得意ではないと考える。マクガリー氏はこれに対して次のように答える。「そうでもない。だが、人間には脳という素晴らしいものがある。脳は地球上で最も複雑な機械だ。人間は脳を使って興味深いことをすべきだ。人間に戻って、botのことは忘れよう」

 マクガリー氏が従業員にRPAを売り込むときに使うたとえが「アイアンマン」だ。アイアンマンは普通の人だが、特別な装甲スーツを着ている。RPAは従業員が超人的な仕事をするための装甲スーツのようなものだ。

 マクガリー氏は、RPAイニシアチブの最初の1年は見返りを求めないようにビジネスリーダーに求める。同氏の経験では、6カ月から1年はRPAチームを立ち上げる時間になるという。

 「初年度に投資を回収しようとするのは残酷だ」と同氏は話す。そうしようとすると、そのRPAプログラムは従業員の生産性よりもビジネスの効率を重視するものになる。

 マクガリー氏が勧めるのは、投資を回収することではなく迅速な成功を重視することだ。「botによる自動化は、従業員のお墨付きをもらえたときに最も効果的に機能する。その評判は炎のように広がり、優れたワークライフバランスを得るチャンスが提供される」

 2年目にRPAプログラムは結果モードに移行する。ワークショップを実行し、管理職と話し合い、自動化に対するアイデアの「作業項目」書を作成する。3年目にはプロセスマイニング、行動分析や時間分析の研究などの技法の検討を開始できる。そうすれば、従業員が大半の時間を費やしているタスクのヒートマップを作成するのに役立つ。

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