APIによるシステム統合はモダナイズの要と考えられているが、全てのケースにAPIがマッチするわけではない。APIを使うべきではない場合もあり得る。APIよりもRPAが向いている場面とは何か。
RPA(ロボティックプロセスオートメーション)は人間の仕事を奪うという誤解がある。これは真実ではない。botには知性がほとんどない。意思決定には限界があり、プログラムの中心となるシンプルなif−then型の決定を自動的に行うにすぎない。つまり「もしも(if)これを見たら(then)それを行う必要がある」という処理をするだけだ。
botが画面で何らかのデータを読み取り、簡単な決定を下し、別のアプリケーションの入力画面で何らかのアクションを実行できることは間違いない。人間はいつもこのように行動している。
botが必要になる理由の多くは、企業アプリケーションがビジネス上の特定のニーズを解決するためにデプロイされる点にある。場合によっては、既存のアプリケーションとの共存をほとんど考えずに新しいアプリケーションを導入することもある。
複数のシステムに同じ情報を再入力するのは無意味だ。だが、それを解決するためにAPIを使うカスタム開発をしなければならないとしたら、情報を再入力する方がはるかに簡単だと考える企業もある。この場面で再入力を代行するのがRPAだ。
マシュー・ウェブスター氏はNHS Shared Business Services(NHS SBS)で財務会計職の変革リードを務めている。同氏はNHS SBSの調達共有サービスチームの一員で、毎年700万件を超える買掛金勘定取引の処理、2250億ポンド(約34兆6400億円)の現金の管理、200億ポンド(約3兆800億円)の債権回収を担当している。
ウェブスター氏は、NHS SBSの調達を処理するOracleのシステムに請求書を取り込む際に自動化とスキャン処理が大きな役割を果たしていると言う。
NHS SBSは照合、キャッシュフロー、請求、支払い、債権回収など、約850種類の財務プロセスを運用している。2016年にRPA導入を開始した際、こうしたプロセスのほぼ半数が自動化に適していることを特定。今では250を超えるプロセスを処理するbotの開発とデプロイを完了した。
サプライヤーはNHS SBSのさまざまなサイトで営業活動を行い、納品する。NHS SBSは、UiPath製品を使ってさまざまなアプリケーションをリンクし、人間がほとんどまたは全く介入する必要のないワークフローを作成して調達プロセスの効率を向上させている。
「これはスクリーンスクレイピングだ。請求書のロゴとサプライヤーのロゴを照合し、その請求書をOracleシステムに送り込むことができるかどうか、人間が介入する必要があるかどうか、あるいは却下する必要があるかどうかを判断する」(ウェブスター氏)
NHS SBSでは、スクリーンスクレイピングを使ってアプリケーションの情報をコピーし、別のアプリケーションの画面に貼り付けている。このプロセスがbotによって制御される。APIを使って、あるシステムから別のシステムに直接アクセスする方が効率が良いと思うかもしれない。だがウェブスター氏の経験では、ITシステムを相互にリンクする場合、APIは必ずしも最適な選択肢ではないという。
「Oracle製品など、APIアクセスを用意していないシステムもある」(ウェブスター氏)。Oracle製品にAPIを含む更新プログラムを要求する手もあるが、botなら一切の開発作業なしに同じことを実行できる。「標準のビジネスプロセスに従ってシステムが必要な情報を入力すれば、想定通りに機能する」(ウェブスター氏)
APIを使う場合、システム間のインタフェースを取る新しいコードを作成する必要がある。それとは異なりbotは人間と同じアクションを行うだけなので、チェック作業が削減されるとウェブスター氏は話す。
UiPathは「Amazon Web Services」と「Microsoft Azure」の機械学習サービスをサポートするため、NHS SBSはbotにインテリジェンスを組み込む方法を検討している。その一例が、雇用サービスにおけるワークフロー分析アプリケーションだ。
「当社は離職者のデータと機械学習を使って離職の恐れが高い従業員を調べている」とウェブスター氏は話す。AIは取得したデータの処理に使い、RPAを通じてプロセスを開始する。
後編では、RPAの導入を失敗させる誤った考え方を紹介する。
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