RPAとAIを連携させることにより、インテリジェントに意思決定するシステムを構築できる。自ら学習し、改善するシステムの可能性も開ける。だが、RPAにはあるリスクが内在する。
前編(RPAが人間よりも決定的に優れている理由)では、RPAが人間よりも優れている点に注目した。
後編では、RPAの限界と次世代RPA、そしてRPAの潜在的なリスクについて解説する。
RPAは効率が良く、効果が高い。だが限界もある。RPAはルールベースの決定論的システムだ。独自に意思決定することはできない。意思決定するにはAIとの連携が必要だ。
RPAのメリットの一つは、データやアプリケーションに依存しないことだ。そのため、人間のオペレーターだけでなくAIツールとも連携できる。
「ロボットがいったん稼働すれば、それは決定論に従って動作する。同じ自動処理を何度も繰り返す」とSAPのシュローテル氏は話す。
RPAは今後、ビジネスプロセスに「もっと広くもっと深く」入り込むだろうと同氏は補足する。これは、インテリジェントな、あるいは自律的なERPなどにつながる可能性がある。「インテリジェントな意思決定ができるモデルを目にするようになるかもしれない。自動車を製造するだけではなく、財務プロセスを実行するロボットへと段階的に進化していくだろう」(シュローテル氏)
RPAは構造化データにも依存するが、AIは非構造化データの解釈を自動化する可能性もある。これはAIとサポート技術の両方の進化を促すだろう。NetAppのジャック・ワッツ氏(AIの責任者)は次のように話す。「業界全体で、もっとインテリジェントになるためにRPAが活用されるようになる。例えば、コンピュータビジョンはもっと優れた方法で利用されるようになるだろう」
「コンピュータビジョンは小切手の文字や数字を認識するために使われていた。現在は請求書全体や発注書、IDでさえERPに取り込まれている」
請求から支払いまでの全てのプロセスが自動化される。コンピュータビジョンの改善によって、医療から法執行までさまざまなフィールドにRPAの利用が広がっている。
よりスマートなRPAの可能性は、学習して改善していくシステムにある。より端的に言えば、プロセスを自動化するために自身のインテリジェントを利用するシステムだ。
Digital Workforceのユッカ・ビルクネン氏(共同設立者)は次のように話す。「RPAベンダーは、プロセスの効率向上とリエンジニアリングのために検出ツールとプロセスマイニングソリューションを導入している。適切な機能とビジネスサポートプロセスは引き続き自律的に運用され、現状のような管理も必要なくなるだろう」
つまり、次世代のRPAは問題点を発見して解決する。
HCL Technologiesのカリヤン・クマール氏(最高技術責任者)は次のように話す。「RPAはより大規模なインテリジェントオートメーションシステムの一部に統合される。フロントエンドにチャットbotや仮想アシスタント、バックエンドにRPAを配置して、アクティビティーを実行したりオーケストレーションプロセスの一部として実行したりできるようになる。そうすればRPAから価値を引き出せるようになる」
人間がプロセスを把握してルールを作成する必要があるため、RPAはセットアップに時間がかかる場合がある。ここ数年、RPAサプライヤーはローコード/ノーコード環境に移行し、事業部門が独自のRPAを簡単に作れるようにしている。Microsoftの「Power Automate」などのツールがあれば、個人ユーザーがデスクトップでbotを作ることも可能だ。
「ここ10年の間に、RPAはシチズンデベロッパーのスキルを高めている。現在の『自動化構築ツール』はインテリジェントなコンテンツ処理にAIを使って、人間と機械のコラボレーションを向上させている」とKofaxのハフ氏は話す。
だが、“RPAとAIの連携”の潜在能力が発揮されるかどうかは実装方法に左右される。「非効率なプロセスをそのまま自動化してしまうというリスクは常に伴う。不適切なアプリケーションの見直しが必要なのに、そのまま放置してしまう恐れもある。RPAがサポートしているという理由で、レガシーアプリケーションをリプレースする機会を失うかもしれない」とGartnerのトーンボーム氏は語る。
CIOは、古いシステムにRPAでパッチを当てて延命しているだけではないことを確認する必要がある。
RWSのベラ氏が言うように、スモールスタートが最善の方法だ。「最初から大きな問題に対処しようとするプロジェクトは成功しない。問題を細分化して、小さな問題を解決しながら大きな問題を解決する。それがRPAの進むべき方向だ」
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