複雑化するネットワーク管理に終止符を打つ「AIOps」という解決策AIOpsは「誰」に必要なのか

技術の進化でネットワークの運用管理が複雑化し、頭を抱える組織もあるだろう。その有効な解決方法の一つが「AIOps」の採用だ。AIOpsはどのようなもので、誰に必要なのか。

2025年06月04日 06時00分 公開
[Kerry DoyleTechTarget]

 人工知能(AI)技術の普及に伴い、機械学習アルゴリズムを使用してIT運用の定型業務を自動化する「AIOps」(AI for IT Operations)の採用が広がっている。中でも、AIOpsの一部である「AIネットワーキング」の需要が高まっている。AIネットワーキングとは、機械学習アルゴリズムを使ってネットワークを監視し、障害の予兆を検知して自動的に対策を講じる技術だ。AIネットワーキングをはじめとするAIOpsは、どのようなネットワーク技術を利用する際に不可欠になるのか。

このネットワーク技術を採用している組織はAIOpsを要検討

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 ネットワーク技術は目覚ましい進化を遂げており、ネットワークをマイクロサービス化する(疎結合で独立した部品に分割する)といった新しい構築、運用方法が広がっている。これによって、ユーザー組織は通信の低遅延やネットワークの拡張性といったメリットを得られる。一方で、ネットワークの管理が複雑化するというデメリットもある。ネットワーク管理を複雑にする主な技術は以下の通りだ。

  • 仮想ネットワーク
  • ソフトウェア定義WAN(SD-WAN)
  • クラウドコンピューティング
  • IoT(モノのインターネット)、5G(第5世代移動通信システム)、スマートグリッド(次世代送電網)といったエッジ処理(データが発生する場所の近くでのデータ処理)技術

 AIネットワーキングによって、これらの技術を利用することで発生するネットワーク管理の複雑化を解消できる。具体的には、組織はAIネットワーキングの導入によって以下が可能になる。

  • 通信の異常を検知する
  • 通信のパターンを分析し、今後発生する障害を予測する
  • 深層学習(ディープラーニング)技術を用いることで問題発生につながり得るバターンやその解決策を学習し、問題に迅速に対処する
  • 脅威を検出し、防御策を講じる

AIOpsを実現するには

 AIOpsを採用することはIT運用の効率化を図る意味で、ビジネス戦略としても重要な取り組みだ。AIOpsは「問題が起きる前に対処する」というプロアクティブなIT運用を実現するのに役立つ。不具合の発生や、脆弱(ぜいじゃく)性を悪用したサイバー攻撃を想定し、事前に対策を講じられるようになる。

 一方で、AIOpsの実現に当たって課題になるのは、データ品質の確保だ。機械学習アルゴリズムはさまざまなデータを分析して問題を予測するため、データが不十分だったり不正確だったりすると、分析結果が誤ったものになる恐れがある。AIOpsによって得られる洞察は、分析対象になるデータの品質に左右される。データ品質を高めるには、どのようなデータを集めるかを、データ抽出の段階で明確に決めることが重要だ。

 AIOpsを通じて、組織は複雑なネットワークの管理能力を持つことができる。そうすれば、インフラを近代化したり、新しい技術を実装したりするといったことにも取り組みやすくなる。次世代ネットワークを実現するために注目されている主な新技術を以下に示す。

  • SD-WANとSASE(セキュアアクセスサービスエッジ)
    • SASEは、ネットワークとセキュリティの機能をクラウドに集約した仕組みだ。SD-WANの他、セキュリティの機能を集約した「SSE」(セキュリティサービスエッジ)など、複数のコンポーネントから構成される
  • 無線LAN規格「IEEE 802.11be」(「Wi-Fi 7」)など、次世代Wi-Fi規格
  • プライベート(自組織専用)5G

 これらの技術を利用する際には、大量のデータを管理したり、セキュリティを高めたりするためのAIOpsが不可欠だ。

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