新入社員が直面する「残念なエクスペリエンス」をRPAで解決人事部門のRPA活用事例集【前編】

RPAによる人事プロセスの自動化はさまざまなメリットをもたらす。3つの成功事例がRPA導入のヒントを提供してくれる。

2020年05月28日 08時00分 公開
[SA MathiesonComputer Weekly]

 RPA(ロボティックプロセスオートメーション)は人員削減に利用することもできる。だがノルウェーで美容院を展開するCuttersにとって、それは好みのスタイルではなかった。

 2015年12月にベルゲンで1号店を開業したCuttersは、2019年末までに5カ国で92店舗を展開するようになった。同店は15分のヘアカットを、ノルウェーの通常料金の約半額に当たる299ノルウェークローネ(約3000円)という固定料金で提供する。そのため間接費を切り詰めており、同社500人のスタッフで美容師以外の従業員は25人しかいない。

 Cuttersは当初、シフトを組む管理職を各サロンに配置していた。「最初の30店まではそれでよかった」と最高デジタル責任者のバード・ストローム氏は振り返る。だが中央で一元化した方がうまくいくと判断し、「RPAを使えばキャパシティーを拡充できると考えた」という。

 同社は既に、データを使って支店ごとに最適な人員数を予測していた。だがスケジュールの作成はスプレッドシートを使って手作業で行っていた。2019年3月にUiPathのRPAを導入したことで、このスケジュール管理のための予測が可能になった。

 「導入すると直ちにインパクトがあった。時間も節約したが、それは大して重要ではない。それよりも、精度が向上したおかげでヘアカットの回数(1日当たりや週当たり)、待ち時間の短縮についてより良い成果を出すことができ、従業員の満足度が高まったことだ」とストローム氏は言う。

 Cuttersの美容師は客の数に応じて報酬が上乗せされる。つまり美容師は忙しくしていることに関心が高い。

 ソフトウェアサプライヤーは、ロボットである“エドワード”のような「従業員」を差別しないことを徹底させなければならないとストローム氏は言う。エドワードは、映画『シザーハンズ』(原題『Edward Scissorhands』)にちなんでCuttersがRPAに付けた名称だ。「『ロボット』は役職であって、ほとんど人と同じように作業しているということをベンダーに認識してもらう必要がある」と同氏は述た。

 CuttersはRPAの利用を他の分野に広げているが、人事の分野で自動化に着手しているのは同社にとどまらない。ネット通販業者向けのサービスを手掛け、2019年に従業員数が3倍になったFeedonomicsのような急成長中の企業にとっても人事の効率化は不可欠だ。

 FeedonomicsのCEOブライアン・ローゼン氏によると、同社はかつて新入社員に4〜5枚の書類をPDFで送付して署名させていた。「自宅にプリンタがない人は図書館で印刷して署名し、それをスキャン&PDF化してアップロードしなければならなかった」と同氏は振り返る。「これは全てが煩わしく、誰も楽しくないのにやらなければならない作業だった。しかもそれは、新入社員にとって入社後の初めてのエクスペリエンスだった」

 米サプライヤーZenefitsのソフトウェアを採用することでこうしたプロセスが自動化され、新入社員1人当たり約2時間の管理時間が短縮された。さらにこのおかげで、Feedonomicsは従業員に対してより戦略的な見方ができるようになった。「われわれは初めて、人に力を与える人員を採用し、人事機能を回転させた」とローゼン氏は延べ、他の責任も兼務する3人の管理職の間でこれを分割する必要がなくなったと話す。

 Zenefitsのシステムは、給与や人材の多様性、勤続期間に関する報告書を生成できる他、実績や誕生日、仕事関連の記念日について管理職にリマインドすることもできる。「離れた場所で働く従業員も多いので、そうした従業員と常につながっていることが大切だ」とローゼン氏は言い、これは急成長する企業に共通する問題だと指摘した。

 「10人しかいなかった頃は、才能を見極めるのはとても簡単だった。恐らくは自分で面接して、毎日顔を合わせる。だが150人に増えると、創業者として個々の従業員と顔を合わせる時間は必然的に減る。実績管理や評価といった事項を極めて体系的に行うことで、われわれの企業文化が非常にうまく補完される」(ローゼン氏)

採用の効率化

 人事の自動化は毎年数千人を採用しなければならない企業にとっても意味がある。米Results Companiesは4カ国で運営するコンタクトセンターで3万人近い人員を雇用しており、年間約5万人に面接してその約4分の1を採用する。

 採用通知が早いほど入社してもらえる可能性は高くなると、最高エクスペリエンス責任者のロリ・ブラウン氏は言う。「ふさわしい人材を見つけたら、採用を通知してわれわれのシステムに登録することが鍵を握る。ふさわしい人材を失いたくはない」

 Results Companiesは採用した従業員に特定の顧客を担当させており、従業員が顧客のシステムに直接アクセスすることもある。従って、従業員が退社したら即座にアクセスを遮断することも重要だ。同社はNICEのRPAを使い始め、入社と退社に関わるプロセスを自動化することによってそれを実現した。この作業はそれまで、約12人のスタッフが手作業で行っていた。

 同ソフトウェアのおかげで、約24時間で従業員が仕事を始める準備が整うようになると同時に同じデータが別のシステムに入力されて不正防止に役立っている。「手作業でデータを複数のシステムに入力する場合、常に入力ミスの危険が伴う」とCTO(最高技術責任者)のビル・ガードナー氏は話し、人事部門は自動化の「明白な候補」になると言い添えた。

 同社はその後、自動化の利用を他の分野にも広げた。例えばアカウント番号を複数の顧客のシステムに自動的に入力して、顧客に利用者のための情報提供を忘れないよう電子メールで通知している。

後編(Computer Weekly日本語版 6月3日号掲載予定)では、Results Companiesのさらなる挑戦と慈善団体、自治体の取り組みを紹介する。

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