ミッキーマウスが音声アシスタントに Alexaベースの「Hey Disney!」の仕組みDisneyとAmazonの提携で生まれた新サービス

DisneyはAmazonとの提携で音声アシスタント「Hey Disney!」を開発し、「Walt Disney World Resort」のホテルに導入する。誕生の鍵となったのは「Alexa Custom Assistant」というホワイトラベルサービスだ。

2021年11月02日 05時00分 公開
[Maxim TamarovTechTarget]

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 Walt Disneyは2021年9月にAmazon.comとの提携を発表。Amazon.comの技術をベースに開発した独自の音声アシスタント「Hey Disney!」を、米国フロリダ州オーランドにある「Walt Disney World Resort」のホテルに、2022年に導入する計画を明らかにした。宿泊客がホテルに設置されたスマートスピーカー「Amazon Echo」に「ヘイ、ディズニー!」と話し掛けてると、Amazon Echoはミッキーマウスや、『ファインディング・ニモ』のドリーなどのDisneyキャラクターの声で応答する。宿泊客はHey Disney!を使って、タオルの交換から、テーマパーク「EPCOT」への行き方検索まで、さまざまなことをリクエストできるようになる。

Hey Disney!の気になる仕組み 実現の鍵「Alexa Custom Assistant」とは

 Amazon.comは、音声アシスタント市場で競合するAppleやGoogleとは異なり、自社の音声アシスタント「Alexa」の技術に基づくホワイトラベル(注1)のサービス「Alexa Custom Assistant」を提供している。Hey Disney!にAlexa Custom Assistantを活用することで、Disneyは宿泊客にAlexaではなくDisney独自の音声アシスタントに話し掛けてもらうことが可能になり、Disneyブランドを前面に押し出せる。これは「ブランド価値を高める上で重要だ」と、調査会社IDCのアナリスト、アダム・ライト氏は指摘する。

※注1:ある企業が独自開発した製品やサービスを、他の会社が自社ブランドとして販売できるようにすること。

 Walt Disney World Resortのホテル宿泊客は、Hey Disney!でルームサービスを注文したり、客室の備品やアメニティーについて尋ねたり、パークの開園時間やイベント予定を問い合わせたりできる。ホテルスタッフは音声アシスタントのおかげで、よくある質問に答える時間を節約できるようになる。

 Disneyはこれまでもパークでさまざまな新技術を実験しており、2014年にはリストバンド型デバイス「MagicBand」を導入した。入園者はこのデバイスをホテルのルームキーとして使うことができる。クレジットカードの代替として、商品の購入代金を支払う際に使用することも可能だ。

 Hey Disney!が使えるのはホテル宿泊者だけではない。米国では2022年からAmazon Echoシリーズの購入者は、それがサポート対象モデルならばマーケットプレース「Alexa Skills Store」からHey Disney!を購入して使えるようになる。Hey Disney!は、人気のあるDisneyキャラクターの声でジョークを言ったり、物語を話して聞かせたりといったさまざまな機能を提供する。ただしHey Disney!の販売価格は現時点で不明だ。

 音声アシスタントはここ数年、普及が進んでいる。調査会社Insider Intelligenceのデータによると、2020年に米国では少なくとも月に1回、約1億2800万人が音声アシスタントを使っている。これは2019年(約1億1520万人)と比較して約11.1%の増加となる。調査会社Gartnerは、2025年までにナレッジワーカーの50%が、仮想アシスタントを日常的に使うようになると予想している。2019年にはこの割合は2%だった。

 調査会社Constellation ResearchのCEOであるR・レイ・ワン氏は、今後もDisneyとAmazon.comの提携と同様の事例が出てくると予想する。Googleはこれまで、スマートスピーカー「Google Nest」で使っている音声アシスタント「Google Assistant」を、ホワイトラベルとして提供しようとしなかった。Appleも音声アシスタント「Siri」について同様の姿勢を取ってきた。DisneyとAmazon.comの提携が成功すれば、この状況は変わる可能性がある。

 「DisneyとAmazon.comの提携は、コンテンツ、ネットワーク、技術基盤が結び付いた好例だ」とワン氏は説明する。具体的には、Disneyはコンテンツを、Amazon.comは技術を提供しており、両社は顧客ネットワークを組み合わせている。

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