災害復旧(DR)計画は予算の確保がネックになりがちだが、実はそれほどお金をかけなくても適切なDRの取り組みはできる。その方法とは。
災害時にいち早くシステムを復旧させ、ビジネスへの影響を最小限に抑えるためには、災害復旧(DR)計画の確立と実施が不可欠だ。前編「ありがちな『費用惜しんでDR計画は後回し』が高くつくのはなぜ?」に続き、後編となる本稿はコストを減らしつつ、DR計画を立てる方法を紹介する。
「災害時にも何としてでも稼働を維持しなければならないシステム」と「危機を乗り越えた後の復旧でも問題ないシステム」を見分けるのは、至難の業だ。とはいえ、企業は過去の経験も参考にしつつ、ビジネスに欠かせないシステムを把握し、その稼働を維持するためのDR計画に優先的に取り組む必要がある。
「自社に危機が訪れることはない」「リスクから自社を簡単に守れる」といった考えは、残念ながら現実的ではない。一方で、大掛かりなDR計画の予算を確保できるほど財務的に余裕のある企業は珍しい。鍵を握るのは、自社の“身の丈に合った”DR計画の確立と実施だ。
まず、大半の企業は全ての部署がDR計画を必要とするわけではないことを前提にしよう。DR計画の必要性が高いのは、業務やサービス提供が「システム」に依存する部署だ。それらの部署に絞ってDR計画を立てれば、コストを抑制できる。ただしその線引きが難しいのは否めない。判断材料として、下記の分類が有効だ。
企業は組織図を描けば、各部署のインフラの関係性が見えてくる。組織図を見ながらインフラを上記の3つに分類することによって、DR計画の優先順位が明確になり、コストを減らせる。
近年はDR計画の一環として、クラウドサービスを利用する企業がある。オフィスに被害があっても、どこからでもシステムを使い続けられるといった利点があるからだ。DR計画にクラウドサービスを利用すれば、当然ながらそのためのコストは発生する。だが物理的にインフラを購入するより、安く済む場合がある。特に予算が限られた中小企業にとって、クラウドサービスは有効だ。コストの他にも、ベンダーがインフラのメンテナンスを担ってくれるメリットもある。
大企業の場合は、物理的に自前のインフラを用意するDR計画も検討に値する。電力や照明、空調といったファシリティに加え、ハードウェアやネットワーク、セキュリティ機能の全てを自社に適した形で導入すると、より危機に強くなる。一方で、それらの購入や維持のコストがかさむのがデメリットだ。
クラウドサービスの利用モデルには、リソースが必要なときに料金を支払うものと、事前にリソースを指定してその料金を払うものの2つがある。災害時にクラウドサービスのリソースを増やせば追加料金が発生する場合があるため、事前にクラウドベンダーに確認しておこう。災害が発生したとき、全てのシステムをクラウドサービスに移行しようとしても、クラウドサービスに十分な空き容量がないこともあるので注意が必要だ。
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