サービスや部門ごとに独自のクラウドサービス導入計画を立てると、クラウドサービスの運用管理の複雑性が増すリスクがある。クラウドサービス導入計画はどのように立てるべきか。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行(パンデミック)が起き、必要なときに必要な分だけ利用できるクラウドサービスの需要が高まった。その結果ユーザー企業の間で、複数のクラウドサービスを組み合わせるマルチクラウドの採用が急速に進み、コスト管理など運用管理が複雑化した。十分計画せずに慌ててクラウドサービスを利用すると、IT担当者にとって頭の痛い問題が発生することがある。クラウドサービスの利用料金が高騰したり、突発的な機能変更によって業務の効率が低下したりするリスクもある。
クラウドベンダーは、ユーザー企業で新しく生じたクラウドサービス利用の課題を整理し、運用管理の専門知識を提供することに忙殺された。今後クラウドベンダーにとっては、セキュリティやデータ統合、戦略的なクラウドサービス利用計画の策定などの分野にビジネスチャンスがあると言える。
パンデミックを機にクラウドサービスを導入するときにありがちな失敗は「運用管理の重要性を見落とすことだ」と、コンサルティング会社のDeloitte Consultingで最高クラウド戦略責任者を務めるデイビッド・リンティカム氏は語る。
ユーザー企業が複数のプロジェクトをそれぞれ独立させて実施するとき、各プロジェクトの担当者はそのプロジェクトにとって最善の技術を独自に選ぶ傾向があるとリンティカム氏は指摘する。「こうしたプロジェクトが全体で何十個も発生したら、運用管理の計画をほとんど用意しないまま、大量のクラウドサービスを導入してしまう事態が起こりがちだ」とリンティカム氏は説明する。
リンティカム氏は次のように話す。「従来のシステムも含めて、社内で利用する全てのクラウドサービスに一貫した運用管理体制を実現できて初めて、そのクラウドサービスが『運用可能』だと言える」
マルチクラウドの計画不足に起因する複雑さに対処することが、ユーザー企業の最も重要な課題になりつつあると、リンティカム氏は主張する。「単一のシステムで複数のクラウドサービスを運用管理できなくなると、自社のITインフラの複雑化が進み、長期的な運用計画を立てることが難しくなる」(リンティカム氏)
中編は、従来のオンプレミスシステムをそのままクラウドサービスに移行させる「リフト&シフト」方式のクラウドサービス移行がもたらす課題を説明する。
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