AmazonはMaseratiやCitroenなどのカーブランドを擁するStellantisと、電気自動車の利用に関する契約を結んだ。電気自動車の提供にとどまらない両社の関係とは。
オンライン小売りの最大手Amazon.com(Amazon)は、自社の配送ドライバーが電気自動車を利用できるようにするために、Maserati(マセラティ)やPeugeot(プジョー)、Citroen(シトロエン)などのブランドを擁する自動車大手Stellantisとの間で契約を結んだ。
2021年に、自動車メーカーのFiat Chrysler Automobiles(FCA)とフランスのPeugeot(PSA)との合併でStellantisが誕生した。Amazonは2018年からFiat(フィアット)やPeugeot、Citroenなど、Stellantisが持つ複数ブランドの小型商用車を配送に利用している。Amazonは「ラストワンマイル」(顧客に配送物を届けるときの最後の接点)の配送へ電気自動車を採用するために、Stellantisとの関係をさらに強化する。
Stellantisとの新たな契約により、Amazonの電気自動車の利用はさらに拡大する可能性が高い。Stellantisが商用車「Ram ProMaster」のバッテリー式電気自動車(BEV)を2023年に発売した場合、Amazonが初の法人顧客となる見込みだ。
Amazonは2040年までに、温室効果ガスの排出量から除去量を差し引いた数値をゼロにする「ネットゼロカーボン」の企業になるという誓約を掲げている。同社とStellantisの両社は声明の中で次のように述べている。
StellantisはAmazonからの意見を取り入れて、ラストワンマイル配送に適した自動車を設計しています。Amazonはこの車を合衆国の各ルートに配備する計画です
長期契約の一環として、Amazonは毎年数千台のBEV版Ram ProMasterを配送に導入する。
StellantisはAmazonと協力して、同社製車両の運転手向けに車内エクスペリエンスを強化するためのソフトウェア製品やサービスの開発も進める。この事業の一端として、StellantisはAmazonとAmazon Web Services(AWS)の技術やサービスを社内で利用している。Stellantisは車両開発業務のIT化を推進すると同時に、消費者にコネクテッドカーを提供するための方法を模索している。
「Amazonはクラウドサービスや人工知能(AI)技術などの分野で世界トップになるべく、技術や専門知識、イノベーションの文化を構築している」と、AmazonのCEO、アンディ・ジェシー氏は話す。同社は音声アシスタントの「Alexa」や電子書籍端末の「Kindle」、映像出力端末の「Fire TV」といった製品やサービスを通して「世界中の顧客の生活を向上させてきた」とジェシー氏は主張。AWSで「何千社という会社を支援し、その会社や業界を変革させてきた」と強調する。
Amazonは、Stellantisが従来の自動車メーカーからソフトウェア開発とエンジニアリングのリーディングカンパニーへと転換するための支援を続ける方針だ。
後編は、StellantisのAWSを利用した取り組みを詳しく説明する。
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