旺盛なデータセンター需要を背景にして、国内ではデータセンターの新設が相次いでいる。企業のIT活用にデータセンターは今後も不可欠だが、同時に意識しておかなければならない消費電力の課題がある。
各種クラウドサービスの利用やデータの長期保管といった取り組みが進む中、データセンターは企業にとって引き続き欠かせない存在となっている。データセンターで稼働するサーバが増えるほど消費電力は増大しがちであるため、今後はデータセンターの二酸化炭素(CO2)排出量の削減へも目を向けなければならない。
国内のデータセンターが消費する電力量(電力と時間の積)については、データセンターの数や規模、IT機器の消費電力などの条件に基づくさまざまな推計値がある。例えば国立研究開発法人、科学技術振興機構(JST)の低炭素社会戦略センター(LCS)が公表している資料「情報化社会の進展がエネルギー消費に与える影響」は、サーバなどのIT機器や空調機器などの設備の一般的な消費電力、それらの設置数などを基にして、2017年時点で年間16.4テラワット時という試算値を出している。
データセンターを設置・運営する事業者は、主にデータセンター専業事業者や通信事業者、システムインテグレーター(SIer)に分類でき、年を経るごとに多様化している。年によってばらつきはあるものの、1990年代後半からは複数以上のデータセンターが毎年新設されている。既にさまざまなデータセンターが存在する中、2022年現在も新設が続く傾向は変わっておらず、むしろ勢いづいている印象さえある。
データセンターの設計や構築、保守などを手掛けるNTTファシリティーズによれば「データセンターの新設ラッシュだった2000年代初頭に比べて数は落ち着いているものの、近年は大規模なデータセンターが続々と建っている」という。同社の推計によれば、2020年から2022年にかけて、国内総計で年間10件ほどのペースで商用データセンターが新設されている。3000台以上のサーバラックを収容し、電力30メガワットを超える規模のデータセンターも珍しくない。
国内の事業者だけではなく「外資系事業者も積極的に国内にデータセンターを建設するようになったのが近年の特徴だ」とNTTファシリティーズは説明する。特に国内企業のクラウドサービス利用が拡大する中で、クラウドベンダーが国内のリージョン(データセンターの所在地域)を設ける動きが顕著だ。こうして国内のデータセンター需要を後押しする動きがある中で、データセンターを設置・運営する外資系の事業者も積極的に国内でデータセンター建設に着手する傾向が見られる。
2020年以降に新設された主要なデータセンターは、下記の通りだ(編集部調べ)。
開設時期 | 企業名 | データセンター名 | 所在地 | 規模 |
---|---|---|---|---|
2020年7月 | KDDI | TELEHOUSE TOKYO Tama5 | 東京都 | 12メガワット 約1500ラック |
2020年9月 | NTTコミュニケーションズ | 東京第11データセンター | 東京都 | 21メガワット |
2020年11月 | Colt Data Centre Services | 印西3 | 千葉県 | 27メガワット |
2020年12月 | IDCフロンティア (ソフトバンク) |
東京府中データセンター | 東京都 | 50メガワット |
2021年3月 | Equinix | TY12x | 千葉県 | 54メガワット (最終フェーズ完成時) |
2021年10月 | Equinix | OS3 | 大阪府 | 約2500ラック (最終フェーズ完成時) |
2021年12月 | Equinix | OS2x | 大阪府 | 14メガワット (最終フェーズ完成時) |
2022年1月 | Digital Edge (Singapore) Holdings | OSA1 | 大阪府 | 14メガワット 約2600ラック |
2022年4月 | SCSK | netXDC 千葉第3センター(SI3) | 千葉県 | 20メガワット 1600ラック |
2022年4月 | NEC | NEC印西データセンター | 千葉県 | 非公表 |
電力が数十メガワット規模の大規模データセンターの新設が相次ぐ他、近年はエッジ(データの発生元)用のマイクロデータセンターなど、小規模なデータセンターが各地に分散して設置される傾向にある。電機メーカーのシュナイダーエレクトリックでデータセンター設備分野を統括する木口弘代氏は、「世界的に小規模データセンターは増加傾向にあり、それらによる消費電力が飛躍的に増大する可能性がある」と指摘する。特に低遅延の接続を必要とするアプリケーションや、大規模データセンターに送信する前のデータの一次処理など、IoT(モノのインターネット)関連の用途が小規模なデータセンターのニーズを後押しすると考えられる。
大小のデータセンターの新設を受けて、社会全体の消費電力量に占めるデータセンターの比率は今後急速に拡大する可能性がある。仮に上述のLCSが試算したデータセンターの消費電力量に対して、国内全体の消費電力量が国際エネルギー機関(IEA)の集計値である1040.33テラワット時(2017年)だと仮定した場合、2017年時点でデータセンターの消費電力量が占める割合は約1.58%となる。近年の国内全体の消費電力量は大きく変わっておらず、むしろIEAの集計値によれば2010年前後を境にして右肩下がりの傾向にある。その一方でデータセンター需要が高まり続けるとすれば、データセンターの消費電力量が全体に占める割合は、今後上昇を続けると考えるのが自然だ。
データセンターを運営する事業者は、消費電力増大の問題を放置しているわけではない。2021年から2022年にかけて、データセンター設備の省エネルギー化や再生可能エネルギーの利用など、グリーン化の活動についてデータセンター事業者が報告する動きが顕著だ。後編はデータセンター事業者によるグリーン化の取り組みの一部を紹介する。
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