データセンター新設が相次ぐ国内 2000年代初頭ラッシュとの違いは?データセンター需要とグリーン化【前編】

旺盛なデータセンター需要を背景にして、国内ではデータセンターの新設が相次いでいる。企業のIT活用にデータセンターは今後も不可欠だが、同時に意識しておかなければならない消費電力の課題がある。

2022年04月13日 05時00分 公開
[遠藤文康TechTargetジャパン]

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 各種クラウドサービスの利用やデータの長期保管といった取り組みが進む中、データセンターは企業にとって引き続き欠かせない存在となっている。データセンターで稼働するサーバが増えるほど消費電力は増大しがちであるため、今後はデータセンターの二酸化炭素(CO2)排出量の削減へも目を向けなければならない。

 国内のデータセンターが消費する電力量(電力と時間の積)については、データセンターの数や規模、IT機器の消費電力などの条件に基づくさまざまな推計値がある。例えば国立研究開発法人、科学技術振興機構(JST)の低炭素社会戦略センター(LCS)が公表している資料「情報化社会の進展がエネルギー消費に与える影響」は、サーバなどのIT機器や空調機器などの設備の一般的な消費電力、それらの設置数などを基にして、2017年時点で年間16.4テラワット時という試算値を出している。

 データセンターを設置・運営する事業者は、主にデータセンター専業事業者や通信事業者、システムインテグレーター(SIer)に分類でき、年を経るごとに多様化している。年によってばらつきはあるものの、1990年代後半からは複数以上のデータセンターが毎年新設されている。既にさまざまなデータセンターが存在する中、2022年現在も新設が続く傾向は変わっておらず、むしろ勢いづいている印象さえある。

国内で相次ぐ大規模データセンターの新設

 データセンターの設計や構築、保守などを手掛けるNTTファシリティーズによれば「データセンターの新設ラッシュだった2000年代初頭に比べて数は落ち着いているものの、近年は大規模なデータセンターが続々と建っている」という。同社の推計によれば、2020年から2022年にかけて、国内総計で年間10件ほどのペースで商用データセンターが新設されている。3000台以上のサーバラックを収容し、電力30メガワットを超える規模のデータセンターも珍しくない。

 国内の事業者だけではなく「外資系事業者も積極的に国内にデータセンターを建設するようになったのが近年の特徴だ」とNTTファシリティーズは説明する。特に国内企業のクラウドサービス利用が拡大する中で、クラウドベンダーが国内のリージョン(データセンターの所在地域)を設ける動きが顕著だ。こうして国内のデータセンター需要を後押しする動きがある中で、データセンターを設置・運営する外資系の事業者も積極的に国内でデータセンター建設に着手する傾向が見られる。

 2020年以降に新設された主要なデータセンターは、下記の通りだ(編集部調べ)。

表 2020年以降に国内で新設された主なデータセンター
開設時期 企業名 データセンター名 所在地 規模
2020年7月 KDDI TELEHOUSE TOKYO Tama5 東京都 12メガワット
約1500ラック
2020年9月 NTTコミュニケーションズ 東京第11データセンター 東京都 21メガワット
2020年11月 Colt Data Centre Services 印西3 千葉県 27メガワット
2020年12月 IDCフロンティア
(ソフトバンク)
東京府中データセンター 東京都 50メガワット
2021年3月 Equinix TY12x 千葉県 54メガワット
(最終フェーズ完成時)
2021年10月 Equinix OS3 大阪府 約2500ラック
(最終フェーズ完成時)
2021年12月 Equinix OS2x 大阪府 14メガワット
(最終フェーズ完成時)
2022年1月 Digital Edge (Singapore) Holdings OSA1 大阪府 14メガワット
約2600ラック
2022年4月 SCSK netXDC 千葉第3センター(SI3) 千葉県 20メガワット
1600ラック
2022年4月 NEC NEC印西データセンター 千葉県 非公表

小規模データセンター利用にも広がり

 電力が数十メガワット規模の大規模データセンターの新設が相次ぐ他、近年はエッジ(データの発生元)用のマイクロデータセンターなど、小規模なデータセンターが各地に分散して設置される傾向にある。電機メーカーのシュナイダーエレクトリックでデータセンター設備分野を統括する木口弘代氏は、「世界的に小規模データセンターは増加傾向にあり、それらによる消費電力が飛躍的に増大する可能性がある」と指摘する。特に低遅延の接続を必要とするアプリケーションや、大規模データセンターに送信する前のデータの一次処理など、IoT(モノのインターネット)関連の用途が小規模なデータセンターのニーズを後押しすると考えられる。

 大小のデータセンターの新設を受けて、社会全体の消費電力量に占めるデータセンターの比率は今後急速に拡大する可能性がある。仮に上述のLCSが試算したデータセンターの消費電力量に対して、国内全体の消費電力量が国際エネルギー機関(IEA)の集計値である1040.33テラワット時(2017年)だと仮定した場合、2017年時点でデータセンターの消費電力量が占める割合は約1.58%となる。近年の国内全体の消費電力量は大きく変わっておらず、むしろIEAの集計値によれば2010年前後を境にして右肩下がりの傾向にある。その一方でデータセンター需要が高まり続けるとすれば、データセンターの消費電力量が全体に占める割合は、今後上昇を続けると考えるのが自然だ。

 データセンターを運営する事業者は、消費電力増大の問題を放置しているわけではない。2021年から2022年にかけて、データセンター設備の省エネルギー化や再生可能エネルギーの利用など、グリーン化の活動についてデータセンター事業者が報告する動きが顕著だ。後編はデータセンター事業者によるグリーン化の取り組みの一部を紹介する。

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