フィヨルドからの冷水や海水といった天然資源を冷却システムに活用した、新しいデータセンターの開発、建設が進んでいる。その可能性と課題を探る。
データセンターのラックが高密度化し、1ラック当たりの消費電力が最大20キロワット以上にまで達するようになった。こうした中で、データセンターを空調で冷却する方法の有効性に疑念が生じつつある。ラックの高密度化が進めば電力コストが増加する上、効率的にハードウェアを冷却できなくなることが懸念される。
そこで浮上しているのが、フィヨルド(沈降した氷食谷)や河川、海を利用した新しい冷却システムの構想だ。こうした冷却システムはまだ開発が始まったばかりだが、将来性がある。
冷却装置や空調機などを使った従来の冷却システムの性能は、限界を迎え始めている。ラックの高密度化が進むと、湿度や気流の管理が難しくなり、ファンによる冷却性能が下がり、必要な分だけ冷却するのが難しくなる。冷却システムに障害が発生すればサーバに悪影響が及ぶ。冷却装置や空調機は大量の電力を消費するため、ますますコストは増える。
外気温の変動も冷却効果に影響する。年間を通して気温が氷点下から38度まで変動する地域は珍しくない。データセンターでは室温を22度前後に保つことが必要であるため、サーバの稼働がピークになる時や外気温が上がる季節には、冷却システムの稼働力を高めなければならない。
データセンターの室温を最適に保つ手段として、水を利用する新しい冷却技術が誕生し始めた。中にはデータセンター自体を河川や海に近い場所だけでなく、海中に建設する事業者も登場してきた。
水冷には2つの利点がある。水温は年間を通して比較的一定であることと、水は空気より50倍以上の冷却効果があることだ。
水を使えば漏水によって機器を破損する心配がある。そのため、オンプレミス環境に水冷システムを導入しようという気には、なかなかなれない。だが空冷システムではあまりにもコストがかかるため、データセンターのハードウェアを冷却する手段として、天然資源を使った水冷システムに着目する事業者が登場しているのだ。
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