「理由」「量」「タイミング」が大事
「脱データセンター」で100%クラウド運用、そのために考えるべきこととは
クラウドコンピューティングの進化により、データセンターの撤廃を考える企業も出てきた。Gartnerのリサーチ部門バイスプレジデントが伝える、データセンターを撤廃し、クラウドに移行するとき有効なIT戦略とは。
Netflixと同じことができるだろうか。2018年に開催された『Gartner Catalyst Conference』でこう問い掛けたのは、Gartnerでリサーチ部門のバイスプレジデントを務めるダグラス・トゥーム氏だ。同じこととは、ビジネスの運用にデータセンターを使わず、クラウドサービスを使うという決断だ。
IT業務を100%クラウドで運用する企業はほとんどない。だが実際のところ多くのワークロードはクラウドに移行できると、トゥーム氏は参加者に語り掛けた。
「今後IT業務はさまざまな運用環境に分散されることになる。そのため各運用環境でIT部門は管理と選択の自由を手放すことになる。自由と引き換えに重要度が低いIT業務への対処が不要になるメリットがある」(トゥーム氏)
社内の重要人物からクラウド移行の同意を得るには
クラウドに移行するかどうかを判断するとき「CEOのいい加減な戦略」を出発点にしてはいけないとトゥーム氏は言う。具体的にはCEOが突然「あれもこれもクラウドに移す必要がある。すぐに取り掛かれ」と指示するような戦略だ。
「企業全体の優先順位を定めるという点から見ると、こうした戦略を土台にしてはいけない。クラウドに移行する本当の理由を考えるべきだ」(トゥーム氏)
トゥーム氏によると、企業がアプリケーションをクラウドに移行する理由ランキングの上位には、アジリティーの向上や新しいテクノロジーの利用などがあるという。クラウドへの移行理由を考えたら、次は移行するアプリケーションの「量」を見積もる。ほとんどの大手企業では、アプリケーション全体の40~80%が最適な範囲になりそうだと同氏は語る。
次にクラウド移行を実現するのにかかる期間を考える必要がある。アプリケーションの50~60%を移行させる企業では、目標への挑戦から達成までに3年ほどかかると見込むのが一般的だとトゥーム氏は話す。80%を目標に掲げる意欲的な企業なら、5年を視野に入れる必要があるという。
「企業内で重要な役職に就く全員からの同意を取り付け、後押しを受けることも必要だ。この役職には最高情報責任者(CIO)、最高財務責任者(CFO)、最高執行責任者(COO)のような最上級の肩書を持つ人物も含まれる。同意を取りつけるために、クラウド移行の理由と量、移行期間はクラウド戦略文書に体系的にまとめるよう提案している」とトゥーム氏は語る。
アプリケーションのリスクを詳細に調査
全体的な戦略の概要をまとめたら、次はどうするのだろう。トゥーム氏はConfidentiality(機密性)、Integrity(完全性)、Availability(可用性)という3要素をリスク分析のために取り入れることを提案する。
アプリケーションをクラウドに移行する際は、この3要素について検討することが欠かせない。これにより企業の潜在的なリスク因子を特定できる。
「この3つの要素を取り入れると、クラウド移行のアプリケーションへの影響度という観点から考えることができる。アプリケーションを調査し、その新しい運用環境の候補を考えたとき、機密性、完全性、可用性のリスクをどう感じるだろう。リスクが低いか、全くないか、それともかなり厳しいのか」(トゥーム氏)
運用環境の候補の評価
トゥーム氏によると、企業がデータセンターを撤廃する場合、アプリケーションの配置先は極めて慎重に考える必要があるという。同氏はアプリケーションを1つずつ評価することを提案する。クラウド移行で考えられるリスクに対処できる場合は、アプリケーションを新しい運用環境に移していく。
「クラウド移行で管理を断念しなければならないアプリケーション層から着手し、SaaS市場を確認することを推奨している。その後PaaSを検討し、市場のPaaSオプションで策が尽きたらIaaSの調査を始める」と同氏は言う。
クラウドサービスに移行すべきでないアプリケーションが見つかったが、それでもデータセンターからは手を引きたいときはどうすればよいだろう。その場合、企業は一般的なホスティングプロバイダーに相談することが可能だ。3年契約と月額料金制のハードウェアを喜んで売り込んでもらえるだろう。コロケーションプロバイダーを利用することもできる。30%のアプリケーションをコロケーション環境に配置したとしても、データセンターを運用することはなくなると同氏は説明する。
何らかの理由で、これらの運用環境のいずれにも移行できないアプリケーションを見つけることがある。この場合オンプレミスに残す必要があるアプリケーションはその妥当性を徹底的に示し、文書化しておくと同氏は言う。「うまく移行できなかったり、最適な移行タイミングではないと考えられたりするアプリケーションは移行しなくても構わない。3年経過してから再度確認する」
キロワットを進行指標に
クラウドに移行するアプリケーションを比率で示す企業がある。その一方でラック数、データセンター数、データセンターの平方フィートの観点からこれを計測する企業もあるとトゥーム氏は言う。
同氏は、データセンターの処理能力に関して消費電力のキロワット数を進行指標として使用することを提案する。「テクノロジーの複雑さが抽象化されるため、これは非常に面白い指標になる」と同氏は言う。
この方法には次のようなメリットもある。
- 冷却など、その他のオーバーヘッド要素の説明になる。
- 最初の移行で進行状況を簡単に示せる。
- 公共料金に対する監査が可能になる。
- キロワット換算のコロケーション契約と適切に連携する。
「選ぶ指標が何であれ、クラウド移行の際に利用する指標は企業内で広く公表し、長い期間をかけて追跡する必要がある」とトゥーム氏は注意を促す。「そうすることで多かれ少かれクラウド移行へのやる気が高まり、5%、10%、15%と進んだときに、そこまで到達したことを誇らしげに語れるからだ」
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