最終的なバックアップの保存場所をクラウドにするとしても、リストアの速度を上げるためにローカルバックアップを用意すべきだ。こうしたハイブリッドバックアップのアプローチは、ランサムウェア対策にも役に立つ。
クラウドへのバックアップは、特にデータセンターを複数用意できない企業にとっては優れた戦略になる。
クラウドストレージの容量は事実上無限だ。磁気テープを管理して、オフサイトのストレージにテープを送り届ける手間もない。バックアップは自動的にオフサイトに置かれ、ネットワークに混乱をもたらす恐れのある障害、災害、マルウェアへの感染とは無縁になる。だが、うまい話ばかりではない。クラウドベースのバックアップは、リストアに時間がかかり、ストレスがたまる。そこで、ローカルバックアップキャッシュとクラウドバックアップを組み合わせるハイブリッドバックアップが有効だ。ハイブリッドバックアップにより、リストアの手間を抑えると同時に、クラウドベースのバックアップのメリットを全て生かせる。
クラウドだけにバックアップしていると、リストアはインターネット接続経由で行わなければならない。これは、「Microsoft Word」の文書や「Microsoft Excel」のワークシートだけなら、ほとんど問題にならない。
だが、設計文書、音声や動画メディアのような大きなファイルならどうだろう。特にインターネット接続が期待するほど高速でなければ、数GBのデータ転送には時間がかかる可能性がある。誰かが大きなミスをした後でオフィスにいる全員がリストアを待つ状況など、大量のデータをリストアする必要があるのが現実の問題だ。例えば、20GBのデータをリストアする場合、50Mbpsのインターネット接続をフルに使っても約1時間かかる。150GBの仮想マシン(VM)が失われ、それをリストアするとなると、1日の営業時間が完全に潰れることになる。それがメインのファイルサーバで、リストアが完了するまで誰も仕事ができないとしたら、生産性は大きく損なわれることになる。
リストアの過程でインターネット接続を使用しない唯一の方法は、リストアが必要になる可能性が最も高いデータのバックアップをオンプレミスに置くことだ。
大半のリストアは過去24時間以内に発生した問題に関連するため、クラウドに保存するのと同じ量のローカルコピーを保持する必要はない。ハイブリッドバックアップを実行するクラウドバックアップ製品の多くは、バックアップデータのローカルコピーを最初に作成するため、バックアップは迅速に完了する。その後、そのローカルバックアップがクラウドストレージに複製され、保護が完了する。だが、バックアップソフトウェアが使用したローカルコピーは、最後に行ったバックアップ以降の変更しか含んでいないため、大規模なデータ損失への対策としては不十分だ。バックアップソフトウェアでは、定期的に作業する全てのファイルを保護するために、一連の変更データを数セット、バックアップに統合する必要がある。定期的に作業するファイルこそ、最も高速にリストアする必要があるファイルだ。バックアップアプライアンスが存在しないようなストレージ容量が限られたPCで行われるバックアップには、このアプローチが有効になる。
バックアップアプライアンスは、オンプレミスのPCとクラウドリポジトリとの橋渡し役として、リストアを迅速に行うための完全なバックアップを保管する理想的な場所になる。セキュリティが強化されたバックアップアプライアンスは、オンプレミスのバックアップを暗号化しようとするランサムウェアに対する保護にもなる。当然、より適切に保護できるように、アプライアンスの全ての新規バックアップデータは可能なかぎり迅速にクラウドにアップロードすべきだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
エンタープライズ向け技術は、Linuxを中核に据え、オープンソースで動作しているものが多い。しかし近年、一部のベンダーが契約による囲い込みを強めており、ベンダーロックインのリスクが高まっている。安定したLinux運用を実現するには?
ITサービスへの要求は年々増大しており、その対応を手作業でカバーするには限界がある。そこで導入されるのがITSMツールだが、特に自動化機能には注意が必要だ。自社に適した運用自動化や作業効率化を実現できるのか、しっかり吟味したい。
業務効率を高めて生産性を向上させるために、多くの企業がITシステムの導入を進めている。しかし、自社の業務に合わないITシステムを導入してしまっては、逆に生産性が低下する可能性も高い。この問題をどう解決すればよいのだろうか。
世界中で広く利用されているChromeブラウザは、業務における重要なエンドポイントとなっているため、強固なセキュリティが必要となる。そこでChromeブラウザを起点に、企業が安全にWebへのアクセスポイントを確立する方法を紹介する。
Google Chromeの拡張機能は生産性の向上に不可欠な機能であり、ユーザーが独自にインストールできる一方、IT管理者を悩ませている。ユーザーデータを保護するためにも、効率的な運用・監視が求められるが、どのように実現すればよいのか。
いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。
「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。
「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。
「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。