NTTが掲げるIOWN 今までのネットワークと何が違う?IOWNの正体に迫る【前編】

NTTは新たなITインフラとしてIOWN構想を掲げている。データ消費量が世界各国で増加する中で、既存のネットワークの限界を超えるインフラを実現しようとしている。

2024年08月30日 05時00分 公開
[Joe O’HalloranTechTarget]

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 人生に確実なものはほとんどない。しかし「死」と「税金」、それから「データ消費量の増加」は未来に起きる確実なものとして挙げることができるだろう。

 データ消費量の増加には幾つかの要因がある。通信インフラの普及やデバイスのデータ処理性能の向上、近年では人工知能(AI)技術や大規模言語モデル(LLM)によってデータの需要が指数関数的に増加しているのだ。データ消費量が増加すると電力消費も増加する。

 既存のネットワーク技術をベースとした研究開発では、このようなデータとエネルギー需要の増加を満たすことができない。こうした課題を解決するため、NTTは光ベースの技術によるネットワーク構想「IOWN」を立ち上げた。

 IOWNとは何か。どのようなビジョンや構想を掲げているのか。

IOWNが掲げるビジョンとは 支える要素技術も紹介

 NTTはIOWNのテーマの一つとして「SF(サイエンスフィクション)をSF(サイエンスファクト)に変える」と掲げている。これまでのネットワークインフラの限界を、光の挙動や作用を利用したフォトニクス(光学)技術で超えて、日常生活や社会全体を改善することを目指している。

 IOWNは3つの主要な技術的基盤がある。

  • オールフォトニックスネットワーク(APN)
    • 光学技術を活用して従来のネットワークより性能を改善したネットワーク。現行のネットワークに比べて「125倍のデータ伝送容量」「100倍の電力効率」「200分の1の遅延」を目指している
  • デジタルツインコンピューティング
    • 現実の物体や物理現象をデータ化し、仮想空間で再現する「デジタルツイン」の範囲を個々の物体から、産業やモノ、人などに拡大して組み合わせる
  • コグニティブファウンデーション
    • クラウドインフラやエッジサーバ、ネットワーク、端末まで全てのICTリソースを統合および制御して全体最適を目指す

 NTTは同社が公開したレポート「NTT IOWN Technology Report 2023」にて、AIとLLM向けIOWNの存在を強調している。同レポートでは「AIの普及にはIOWNが必要不可欠」と書かれている。データセンターの在り方については、現在の大規模で一部に集中しているデータセンターに比べて、小規模な「データステーション」が各地で分散して接続しあう形態に変化する可能性についても言及している。

 国立研究開発法人 科学技術振興機構によれば、2018年時点では世界各国のデータセンターによる消費電力は年間で約190テラワット時(TWh)との試算だったが、2030年には15倍程度の年間で約3000TWhまで増加するという予測がされている。

 AIやLLMは他のアプリケーションに比べて膨大な計算能力を必要とする。NTTによれば、LLMを1回トレーニングするのに必要なエネルギーは、原子力発電所を1時間稼働させるのに必要なエネルギーに相当する可能性がある。IOWNは必要電力の削減と伝送容量の拡大で、AIやLLMの処理を効率化しようとしている。

 NTTは独自開発したLLMである「tsuzumi」 を発表した。tsuzumiの特徴は、他の主要LLMと比較して学習と推論に必要な価格コストを抑えていることだとしている。


 次回はIOWNを支持している企業が普及のためにどのような取り組みをしているかを紹介する。

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