「TeamViewer」はいかにして“PC以外の遠隔操作”も可能になったのかリモートアクセスの老舗「TeamViewer」の戦略【前編】

リモートデスクトップツールベンダーTeamViewerは、同社のリモートアクセス技術をPC以外の機器においても活用できるようにしている。その取り組みの背景を同社CEOに聞いた。

2024年06月06日 05時00分 公開
[Aaron TanTechTarget]

 リモートデスクトップツール「TeamViewer Remote」を手掛けるTeamViewerは、リモートアクセス技術をワークフロー管理やスマートファクトリーといった新しい用途に応用し、産業用デバイスへの接続機能を拡張する取り組みを進めてきた。同社のCEOオリバー・スタイル氏に、TeamViewer Remoteによる接続を“PC以外の機器”にも広げてきた取り組みと、その背景を聞いた。

「PC以外の遠隔操作」はいかにして実現したのか

── リモートアクセス技術のベンダーであるTeamViewerが、PC以外のデバイスにも事業を拡大する背景は。

スタイル氏 ユーザー企業との密接なやりとりや、ユーザー企業がTeamViewer Remoteをどのように使用しているかを理解することから始まった。TeamViewerは2005年に誕生したツールで、当初はソフトウェアの営業担当者が自社にいながら離れた場所にある別のPCで製品のデモンストレーションができるようにすることを目的としていた。遠隔操作でのデモンストレーションで印象を残すには、ソフトウェアを正確に操作できる高度な制御機能が必要だったためだ。

 しばらくして、特に当社の本社があるドイツの法人顧客が、デスクトップPCのOSを遠隔制御できるなら、PC以外のデバイスも遠隔制御できるのではないかと考えるようになった。初期の例として、ある製造業者がTeamViewer Remoteを使用してロッカーボックスの使用頻度や不具合の有無を確認していた。ロッカーボックスの物理的な操作はできなかったが、運用状況の確認はできたということだ。

 従来のオフィスワーク用デバイスだけではなく、自動販売機や小型機械などの運用にTeamViewer Remoteを活用するユーザー企業が増えるにつれ、ユーザー企業から寄せられるサポート要請の件数も増えた。こうした要請に対して「TeamViewer Remoteにはそのような用途はない」と伝えるのではなく、当社の研究開発チームと連携し、ユーザー企業が何をしようとしているのか、どのように支援できるのかを理解することに努めた。

 こうした用途を理解していくと、リモートアクセス分野に、さまざまな競合企業が参入していることが分かった。その結果気付いたのは、当社の競争上の強みは、これらのデバイスとTeamViewer Remoteを接続できることにあるという点だ。

 2019年にロンドンでアナリスト向けの大規模な説明会を開催したときは、当社の取り組みや他社と異なる点を説明するために、PC、決済端末、電子カードリーダーなどさまざまなデバイスを用意した。2台のロボットアームも持ち込み、一晩あればTeamViewer Remoteを設定してロボットアームに接続できることも示した。ロボットアームに接続できるならば、業務用のコーヒーメーカーやオーブンにも接続できるということだ。この事実は、TeamViewer Remoteと接続したユーザー企業のデバイスを通じて、当社がユーザー企業の業務プロセスを把握できることを意味する。1つのデバイスだけではなく、複数のデバイスを追跡すると、それらがどのように結び付いているかを理解できる。当社はそのようにして進化を遂げてきた。

 IoT(モノのインターネット)というバズワード(流行語)が誕生して久しい。ドイツの電機メーカーSiemensの「Insights Hub」(旧「MindSphere」)のような、IoTデバイスで収集したデータを集約、活用するためのシステムが注目を集めている。一方で、このような大型システムの運用には費用が掛かり、導入に時間を要することがしばしばだ。遠隔地にある機械の状態を確認したいだけのユーザー企業は、このような大型システムには少なからず不満があったと思われる。このようなユーザー企業が求めた解決策の一つがTeamViewer Remoteだ。


 次回は、TeamViewerがAR技術の機能拡張を図った背景を紹介する。

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