5Gを利用すれば、VRやARのアプリケーションを携帯電話回線で活用しやすくなる。特に利点が見込める産業の用途を中心に、5つの活用例を紹介する。
「5G」(第5世代移動通信)は急速に携帯電話回線の主流になりつつある。5Gのカバレッジ(通信可能な範囲)とユースケース(想定される使用例)は広がり続けており、従来は光ファイバーを用いていた有線WANを5Gに置き換える動きも出ている。
関心が高まっている分野の一つが、拡張現実(AR)と仮想現実(VR)での5Gの活用だ。5Gを利用したARやVRの5つの活用例を見ていこう。
企業と顧客のコミュニケーションにおいて、電話やテキストメッセージによるやりとりは増加傾向にある。カスタマーセンターの担当者はスマートフォンのARやVRのアプリケーションを5Gで利用することで、遠隔にいる顧客とリアルタイムなコミュニケーションを取ることが可能になる。
例えば、複雑な機器を組み立てようとしている顧客に対して、AR機能によって、顧客が見ているものの上に具体的な指示内容を重ねて表示するようなサポートを提供できる。この活用例では、製品の専門知識を持った担当者が、必要な手順を顧客が完了するまでサポートできる。
別の活用例として、ARを使った商品のデモンストレーションが考えられる。例えば、顧客は購入する前に洋服を着た自分の姿を見ることができるようになる。あるいは、ペンキを塗る前に、実際に塗った際の色がどのように見えるか確認することもできる。キッチンのリフォームを考えている顧客に対して、現在のキッチンに最終的なデザインを重ね合わせて見せることもできる。
購入前に製品の特徴を販売員が説明することもできる。ショールームに行かなくても新車の内装や機能を確認できるVRのツアーに顧客が参加して販売員が説明している様子を想像してみてほしい。
5Gの技術を適切な機材と組み合わせることで、販売の形を変え、顧客満足度を改善できる可能性が開ける。
医療業界には、5Gを利用したARやVRの活用例がたくさんある。実習や研修での活用例では、指導役の医師がVRを使用することで、医学生、研修医、看護師がどこにいても、遠隔操作で新しい手術の方法や技術を実演することで、移動の負担を減らすことができる。
指導役の医師はARを使用して、実演している手術の映像の上に手順や注意点を示すことができる。VRを使って遠隔地の参加者を手術室や診察室に招待すれば、参加者が遠隔地から手術を見学し、質問することも可能になる。
患者に対しては、5Gを利用したARとVRにより遠隔医療の質を高めることができ、医療従事者が遠隔診断を実施し、患者に異常が疑われる点を説明できる。来院予約した患者に事前に治療手順を説明することも可能だ。
スマートグラスのようなAR・VR機器により、遠隔地の医療従事者が診察室に擬似的にではあるが直接入れるようになることで、時間やコストを削減できるだけでなく、命を救える可能性がある。
例えば、外科医が手術中に問題に遭遇した場合を考えてみよう。5G対応のウェアラブル端末を使えば、遠隔地にいる専門医に自分が見ているものを簡単に見せることができる。ARを使えば、遠隔地の専門医が手術中の現地の医師に助言をすることもできる。
ARやVRを使った会議は、何年も前から開発が進められてきた。しかし平均的なアプリケーションに比べて回線の容量を多く使用する必要があるため、使い勝手が良くなかった。5Gによって実用可能なレベルになった。
今後利用が広がると期待される分野の一つに、バーチャル空間での会議や研修がある。会議や研修では、遠隔地にいる参加者は、単に2次元の映像を見るよりも、AR・VR技術を使った方が、質が高まり、内容の理解が深まりやすい。
バーチャル空間での会議では、参加者が3次元のプレゼンテーションを見たり、アバター(ユーザーの代わりとなる仮想キャラクター)を通じて交流したり、物理的な物体を、バーチャル空間内に再現した物体によって詳細に確認したりすることができる。
5Gを利用したARやVRによって、遠隔地にいる受講生が世界中のどこにいても、没入型の教育や研修を受けられるようになる。研究室での実験など、現在では対面での指導が必要な教育内容でも、VRやARを使えば遠隔地からの受講が可能になり、教育がより身近で低コストなものになる。
現場作業員を対面式の研修に参加させたり、講師を派遣して現場で対面式の研修を受けさせたりする必要がなくなるため、現場作業員の新製品や新技術に関する研修費用を削減できる。5Gを利用したARやVRを研修に利用することは、有線ネットワークがつながっていない鉱山や掘削現場などの遠隔地で作業する業界にとって特に魅力的だ。
建設業界に限らないが、設計時のイメージと完成後の実際の構造物にはずれが生じることがある。ARによって建設現場の映像にデジタル情報を重ねることができるため、目印や設計図などの情報を建築家と現場の従業員が共有することができる。
VRを使うことで、完成後のイメージを現場の作業員に示して共有することができる。施工者に完成した現場がどのように見えるかを示すことができ、施工者は建設している構造物の完成形を視覚化することができる。
現場の工事担当者は、VRやARを使って対面で打ち合わせすることなく遠隔地の設計者に相談ができ、発生した問題に対処したり、設計の変更が可能か確認したりすることができる。
ARやVRは5Gまたは5Gより高速な通信規格が望ましい。だが、特にへき地においてこうしたネットワークは利用できない場合がある。本稿が紹介した活用例においても、鉱山や建築現場などでは通信事業者が提供する5Gが利用できない可能性がある。その場合はユーザー組織が5Gを自営網として利用できる「プライベート5G」(日本での呼称はローカル5G)を構築する必要がある。
5Gは都市部でさえも、特に建物内では利用が制限される可能性がある。回線容量を奪い合うことになる5G利用者の数によっても制約を受ける可能性がある。5Gを利用するARやVRのアプリケーションは、モバイル機器の処理能力やバッテリー容量の制約を受ける可能性もある。
取り扱いには注意が必要となるが、5Gを利用したARやVRは可能性を秘めており、企業は新しいアプリケーションで顧客サービスや従業員研修の費用を削減できる可能性もある。有用な活用方法を見つけるためには、5Gが普及する先を見越して早めに検討を始める必要がある。
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