「6G」の開発は、経済的な覇権を握るチャンスでもある。欧州ではさまざまな6G研究プロジェクトが動いている。どのような6Gを目指しているのか。
さまざまなベンダーや研究機関が「6G」(第6世代移動通信システム)について、サービスの構想を練ったり、技術開発に取り組んだりしている。特に欧州での研究開発プロジェクトが盛んだ。6Gの開発競争で優位に立てば、技術だけでなく経済的にも地位の強化が期待できるからだ。欧州の企業が掲げる6G像の一つに、「宇宙と地上の統合ネットワーク」がある。6Gはどのような“次世代通信”を実現するのか。
欧州では、「VTT フィンランド国立技術研究センター」(以下、VTT)が通信機器ベンダーNokiaやオウル大学と連携して複数の6G研究プロジェクトを主導している。
VTTが目指す6G像の一つが、地上ネットワーク(TN)と非地上ネットワーク(NTN)の統合だ。地上のモバイルネットワークと、宇宙空間における衛星、地上約20キロの成層圏に無人航空機を飛ばして基地局にする「HAPS(High Altitude Platform Station)」などを統合する。ユーザーの端末はTNとNTNの両方に接続できるようにすることで、「5G」(第5世代移動通信システム)より広範囲のカバレッジ(通信可能エリア)が実現する可能性がある。
欧州連合(EU)は6G研究プロジェクト「Hexa-X-II」を推進している。同プロジェクトはNokiaが主導しており、ハードウェアやアプリケーション、サービスプロバイダーに至るまで、6Gに関連する要素の研究が進んでいる。
VTTもHexa-X-IIの「CONFIDENTIAL6G」プロジェクトに参加しており、新しい暗号技術と運用方法によって、クラウドインフラとエッジ(ユーザーの端末の近く)の安全とプライバシーを一貫して保護する方法を研究している。
「VR」(仮想現実)や「AR」(拡張現実)、「MR」(複合現実)といった「XR」(Extended Reality)に関連するサービスの実現手段を開発することにより、6Gの活用方法を研究するためのインフラを構築する「6G-XR」というプロジェクトも進んでいる。
6G-XRでは、「MEC」(マルチアクセスエッジコンピューティング)とクラウドサービスの統合の他、6Gアプリケーションも研究対象になる。MECはデータ処理を端末に近づける「エッジコンピューティング」のモバイルネットワーク版だ。
6Gアプリケーションの実証と性能検証では、ホログラフィー(立体像を記録する技術)、デジタルツイン(現実の物体や物理現象をデータで再現したもの)、XRなどの没入型アプリケーションに焦点が当てられる。
XRを活用したアプリケーションを実用的にする方法については、フィンランドの製造業者であるDispelixが取り組んでいる。同社の最高戦略責任者(CSO)であるリク・リッコラ氏は、「テクノロジーがもはや“テクノロジーに見えない”世界を作ることを目指している」と語る。具体的には、XR眼鏡を着用していても、普通の眼鏡を着用しているように見せることを意味する。同社は、新しいネットワークインフラが、人々の住む物理的な世界とデジタルの世界を融合させると期待している。
第4回は、5Gの課題を6Gがどのように乗り越えるべきなのかを取り上げる。
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