宇宙にさえ接続「6Gネットワーク」がもたらす“次世代通信”とは6Gによる変化を解説【第3回】

「6G」の開発は、経済的な覇権を握るチャンスでもある。欧州ではさまざまな6G研究プロジェクトが動いている。どのような6Gを目指しているのか。

2024年04月29日 08時30分 公開
[Joe O’HalloranTechTarget]

 さまざまなベンダーや研究機関が「6G」(第6世代移動通信システム)について、サービスの構想を練ったり、技術開発に取り組んだりしている。特に欧州での研究開発プロジェクトが盛んだ。6Gの開発競争で優位に立てば、技術だけでなく経済的にも地位の強化が期待できるからだ。欧州の企業が掲げる6G像の一つに、「宇宙と地上の統合ネットワーク」がある。6Gはどのような“次世代通信”を実現するのか。

宇宙に接続する“6Gネットワーク”

会員登録(無料)が必要です

 欧州では、「VTT フィンランド国立技術研究センター」(以下、VTT)が通信機器ベンダーNokiaやオウル大学と連携して複数の6G研究プロジェクトを主導している。

 VTTが目指す6G像の一つが、地上ネットワーク(TN)と非地上ネットワーク(NTN)の統合だ。地上のモバイルネットワークと、宇宙空間における衛星、地上約20キロの成層圏に無人航空機を飛ばして基地局にする「HAPS(High Altitude Platform Station)」などを統合する。ユーザーの端末はTNとNTNの両方に接続できるようにすることで、「5G」(第5世代移動通信システム)より広範囲のカバレッジ(通信可能エリア)が実現する可能性がある。

Hexa-X-II

 欧州連合(EU)は6G研究プロジェクト「Hexa-X-II」を推進している。同プロジェクトはNokiaが主導しており、ハードウェアやアプリケーション、サービスプロバイダーに至るまで、6Gに関連する要素の研究が進んでいる。

 VTTもHexa-X-IIの「CONFIDENTIAL6G」プロジェクトに参加しており、新しい暗号技術と運用方法によって、クラウドインフラとエッジ(ユーザーの端末の近く)の安全とプライバシーを一貫して保護する方法を研究している。

6G-XR

 「VR」(仮想現実)や「AR」(拡張現実)、「MR」(複合現実)といった「XR」(Extended Reality)に関連するサービスの実現手段を開発することにより、6Gの活用方法を研究するためのインフラを構築する「6G-XR」というプロジェクトも進んでいる。

 6G-XRでは、「MEC」(マルチアクセスエッジコンピューティング)とクラウドサービスの統合の他、6Gアプリケーションも研究対象になる。MECはデータ処理を端末に近づける「エッジコンピューティング」のモバイルネットワーク版だ。

 6Gアプリケーションの実証と性能検証では、ホログラフィー(立体像を記録する技術)、デジタルツイン(現実の物体や物理現象をデータで再現したもの)、XRなどの没入型アプリケーションに焦点が当てられる。

 XRを活用したアプリケーションを実用的にする方法については、フィンランドの製造業者であるDispelixが取り組んでいる。同社の最高戦略責任者(CSO)であるリク・リッコラ氏は、「テクノロジーがもはや“テクノロジーに見えない”世界を作ることを目指している」と語る。具体的には、XR眼鏡を着用していても、普通の眼鏡を着用しているように見せることを意味する。同社は、新しいネットワークインフラが、人々の住む物理的な世界とデジタルの世界を融合させると期待している。


 第4回は、5Gの課題を6Gがどのように乗り越えるべきなのかを取り上げる。

Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術

米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

製品資料 アイティメディア広告企画

「SD-WAN2.0」導入ガイド:特徴/製品選定のポイント/導入時の注意点を解説

拠点間接続にWANが重宝されてきたが、ビジネス環境の変化に伴い「SaaSが遅い」「セキュリティが不安」といった問題が顕在化してきた。そこで注目したいのがパワーアップした「SD-WAN2.0」だ。その特徴や導入時の注意点を解説していこう。

技術文書・技術解説 株式会社ソラコム

IoTデバイス導入ガイド:概念から選定・導入時に押さえておきたいポイントまで

IoTという言葉は知っているものの、ビジネスの場でどのように活用すればよいのか分からないという声も多い。こうした声に応えるべく、IoTの基本的な概念から、IoTデバイスの選定・導入時に押さえておきたいポイントまでを解説する。

市場調査・トレンド 株式会社ソラコム

今さら聞けない「DXとIoT」、基本知識から最初の一歩を踏み出す具体策まで解説

DXやIoTという言葉は知っているものの、それが何を意味し、ビジネスの現場にどのように採り入れられているのか分からないという声は意外と多い。そこで、DXとIoTについて、基本知識から実現方法まで詳しく解説する。

製品資料 アルテリア・ネットワークス株式会社

VPNの「パフォーマンス」や「セキュリティ」の課題を解決するための秘策とは?

インターネットVPNサービスの市場規模は増加傾向にあるが、パフォーマンスやセキュリティなどの課題が顕在化している。VPNの利用状況などのデータを基にこれらの課題を考察し、次世代インターネットVPNサービスの利点と可能性を探る。

製品資料 東京エレクトロン デバイス株式会社

ネットワーク環境の課題を解決し、ネットワークの構築と運用を簡素化する方法

ネットワークに関して、「環境の構築・運用管理に手間やコストがかかる」などの課題を抱える企業は多い。そこで注目されているのが、1つのプラットフォームによる管理で運用負荷低減やトラブル対応効率化を実現するソリューションだ。

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

ITmedia マーケティング新着記事

news130.jpg

Cookieを超える「マルチリターゲティング」 広告効果に及ぼす影響は?
Cookieレスの課題解決の鍵となる「マルチリターゲティング」を題材に、AI技術によるROI向...

news040.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。

news253.jpg

「AIエージェント」はデジタルマーケティングをどう高度化するのか
電通デジタルはAIを活用したマーケティングソリューションブランド「∞AI」の大型アップ...