DX推進に責任を負うCIOは、プレッシャーと戦い続けている。こうした中、きらびやかに見える“あおり文句”に、つい心を動かされるCIOがいてもおかしくはない。
金融機関Principal Financial Servicesでシニアバイスプレジデント兼最高情報責任者(CIO)を務めるキャシー・ケイ氏は、大々的に宣伝される新しい技術について、魅力を感じると同時に「新しい技術を迅速に導入すべきではないか」というプレッシャーを感じてきた。この気持ちはITリーダーなら誰もが感じることだ。
ケイ氏はビジネスにおける課題とその解決策に着目することで、新たな技術への過剰な期待を防ぎ、焦りから不要な技術を導入してしまうケースを回避できた。この方法は、他のITリーダーもうまく応用できる可能性がある。
“最新で最高の技術”に飛び付きたくなる衝動は、ITを扱うCIOにはつきものだ。CIOは、絶えず変化するビジネスの中で変革とアジリティ(俊敏性)を実現するという任務を負うため、この傾向は特に顕著になる。だが自社の技術を「あらゆる課題を解決する“万能薬”」というポジションに位置付けたいと考えるベンダーも存在する。技術に関するあおり文句を回避するには、IT製品を正しく評価する方法を理解することが重要だ。これに失敗すると、コストがかさむ。
Adobeが2021年3月に発表した調査レポート「CIO Perspectives Survey」の2021年版によると、米国のCIOの87%が「デジタルトランスフォーメーション(DX)に対してプレッシャーを感じたことがある」と答えている。同調査は、Adobeが米国、英国など6カ国506人のCIOを対象に実施したものだ。
CIOは複数の優先事項をやりくりしている。長期の戦略目標、新たなビジネスチャンス、急激に変化する市場の力学、急速に進化する技術、さらに社内外の顧客から絶えず寄せられる要望のバランスを取らなければならない。複雑化するビジネス環境によって、優先事項は競合し、迅速に動かなければならないというプレッシャーが生まれる。大げさな宣伝文句に踊らされないようにしつつ、適切な技術を優先して取り入れることがますます必要になってはいるものの、ますます困難になっている。
適切な戦略があってこそ、IT投資を軌道に乗せることができる。第2回以降は、新技術の宣伝文句に踊らされず、適切な戦略を立てるのに役立つ3つのヒントを紹介する。
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