これからの「企業価値」の話をしよう 投資家にも社員にも愛される企業とは持続可能性向上のためにIT部門が知っておくべきこと【後編】

株主利益を最優先とする「株主資本主義」から、利害関係者全ての利益を追求する「ステークホルダー資本主義」へと、世の中の価値観が変わりつつある。この変化の中で重視すべきサステナビリティ向上のトレンドは。

2022年04月13日 08時15分 公開
[Benjamin St. GeorgeTechTarget]

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 ビジネスにおける「持続可能性」(サステナビリティ)の重要度が増している。前編「AI万能論に警鐘も IDCに聞く、『サステナビリティ』向上に貢献するIT分野とは」に続き、サステナビリティ向上に関わる世界的なトレンドについて、調査会社IDCでグローバルサステナビリティリサーチリードを務めるビョルン・ステンゲル氏に話を聞いた。

“脱炭素”だけではない 水資源に関する注目度も上昇

―― 水資源の利用効率の問題は、企業のサステナビリティにどの程度影響すると見ていますか。

ステンゲル氏 温室効果ガスの排出量に注目が集まっているが、水資源の有効活用も重要で、企業が対処すべき新しい環境問題として認識されている。その理由は水不足と水使用量の増大が、環境や人に悪影響を及ぼしていることだ。水資源の利用が環境に与える影響は重要なトピックで、さまざまな利害関係者が関心を寄せている。

 これまで企業の水資源利用に監視の目を向けていたのは、擁護団体や世間、メディアだった。最近は投資家も、企業が水資源をどのように管理しているかに目を向けている。投資家は、企業が公開する水資源のデータに着目し、そうしたデータを企業の評価に織り込んでいる。

「ステークホルダー資本主義」で変わる、企業の評価基準

―― ビジネスリーダーがサステナブルな手法を優先したり、ITリーダーがサステナブルな技術を実装したりする意思決定の場面で、社外の人々の影響はどのように作用しているのでしょうか。

ステンゲル氏 株主の利益を最優先する「株主資本主義」ではなく、顧客や従業員、地域社会など全ての利害関係者の利益を考える「ステークホルダー資本主義」に、社会の価値観が変化しつつあることは間違いない。「ESG投資」(環境、社会、ガバナンスに配慮している企業に対する投資)は世界で急速に拡大している。

 例えば米国では、サステナビリティに関する意思決定や要件に対し、政府や規制当局が強い影響力を持つようになっている。利益団体などの組織でも啓発が進み、サステナビリティの問題について声高に主張するようになりつつある。従業員も利害関係者の一員として重要な位置を占める。サステナビリティに関する雇用主の実績に基づいて、その雇用主の下にとどまるかどうかを決める従業員が少なからずいる。

 大まかに言えば、サステナビリティを重視した変革はトップダウンのアプローチになる。企業のあらゆる部分に深く根付かせる必要がある。そのためサステナビリティに関する変革プロジェクトは、さまざまな部署の中間管理職も責任の一端を担っている。

―― サステナビリティの目標を達成するために、企業はどのような戦略を採用しているのでしょうか。例えば認定資格やパートナーシップの重要性が増したり、一般的になったりしているのでしょうか。

ステンゲル氏 投資家の観点からは、ESG評価機関から高いスコアを獲得することが重要になりつつある。株式公開企業の場合は特にそれが当てはまる。コンサルティングサービスを提供する企業と契約して、サステナブルなビジネス戦略の策定、リスク管理、業務改善に関する第三者の視点を取り入れることも重要だ。

 監査や保証、技術支援などの分野で、コンサルティングサービスを提供する企業の助けを必要とする機会は増えつつある。投資家は非常に重要で、力を持った存在だ。高品質のデータを要求する投資家の声に応えることは、特定の環境ラベルや認定資格を取得するよりも重要な可能性がある。

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