企業の評価軸の一つとして、「持続可能性」(サステナビリティ)が注目を集めている。サステナビリティの向上を目的として、ニーズが上昇しているIT分野は何か。
ビジネスリーダーやITリーダーにとって「持続可能性」(サステナビリティ)を重視すること、つまり環境への配慮は不可欠だ。「環境フットプリント」(人が地球環境に与える負荷の大きさを表す指標)を削減するための具体的な方法は非常に分かりにくい。
企業はビジネスのあらゆる面で、サステナビリティを推進するよう社内外から求められている。こうした変革をどこで、どの程度実施するかは企業によって異なる。ただし調査会社IDCでグローバルサステナビリティリサーチリードを務めるビョルン・ステンゲル氏によると、普遍的に当てはまるテーマもあるという。
本稿は、企業がサステナビリティを高める方法について、ステンゲル氏の見解を紹介する。
―― 企業のサステナビリティに、技術はどのような役割を果たすのでしょうか。
ステンゲル氏 技術は一般的に、ビジネスを持続可能なものに変革するための手段だと考えられている。IDCが関わってきた企業は概して、サステナビリティが最終損益に大きな影響を与えていることを知っており、企業のあらゆる取り組みを「非常に大きく変えるもの」だと考えている。
ビジネスリーダーやITリーダーは明確に、サステナビリティという視点で既存の技術や新しい技術の導入を検討している。当社はサステナビリティを実現する技術の登場に注目するだけでなく、
といったことを調査している。
ソフトウェア、クラウド、データセンターなど、幾つかの技術が特に注目を集めている。特にサステナビリティの観点からは、人工知能(AI)技術を活用することによって生じるリスクを抑える方法に関心が集まっている。ブロックチェーンも、サステナブルなビジネスへの変革を推進する技術だ。
―― サプライチェーンのサステナビリティを後押しするために、企業はどのようなツールや技術を使用していますか。
ステンゲル氏 サプライチェーン排出量(注1)の一部である「Scope3排出量」の算出が、大きな課題になっている。Scope3排出量は計測、追跡、報告するのが難しい。複雑なサプライチェーンを抱える企業にとってはなおさらだ。だが投資家はScope3排出量を報告するよう企業に強く求めている。
※注1:サプライチェーン排出量は、原料調達から製造、物流、販売、廃棄まで、一連の事業活動で排出された温室効果ガスの総量。「Scope1排出量」は事業者自らによる温室効果ガスの直接排出量(燃料の燃焼、工業プロセス)、「Scope2排出量」は他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出量を指す。Scope3排出量はScope1、Scope2以外の間接排出量。サプライチェーンの上流や下流に位置する他企業が排出した温室効果ガスの量を指す。
こうした領域でIT需要が高まり、温室効果ガスの排出量を計測するソフトウェア製品が増えている。その一例として、サプライチェーン全体のScope3排出量を追跡し、収集したデータを管理しやすい形式に変換したり、排出量に関する情報の報告や開示請求に使うための形式に変換したりするソフトウェアスイートがある。
必要なのは、標準化され、定量化できるデータ、要するに投資の根拠にできるほどのデータだ。こうしたデータを収集し、処理して、適切な利害関係者に報告する必要があり、これこそがサプライチェーンサステナビリティ関連のソフトウェアを調達する動機になっている。
後編は、顧客や従業員、地域社会など全ての利害関係者の利益を考える「ステークホルダー資本主義」の考え方を紹介し、この概念によって変わりつつある評価指標について解説する。
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