データセンター脱炭素のこつは? “最も持続可能な企業”のノウハウ「CO2削減」の具体的な成果につなげる

膨大な電力を必要とするデータセンターなどの事業において脱炭素を進めるにはどうすればいいのか。Schneider Electricの知見を基に、CO2削減のポイントをまとめる。

2022年02月15日 05時00分 公開
[遠藤文康TechTargetジャパン]

 二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスを削減する「脱炭素」を効果的に進めるこつは――。長期にわたり脱炭素に取り組んできた企業は、着実に成果を生んでいる。データセンター分野ではGoogleが2007年にカーボンニュートラルを達成。同社は、事業活動からCO2を排出しない「カーボンフリー」を2030年までに達成するという新たな目標を掲げる。

 データセンター設備を手掛ける電機メーカーのSchneider Electricも、脱炭素を重視してきた企業だ。同社が脱炭素を含めたサステナビリティに関する独自のKPI(重要業績評価指標)を設定したのは、17年前の2005年のことだった。そのKPIを軸にした成長戦略を継続し、「Global 100」(世界で最も持続可能な100社、注1)では2021年に1位、2022年には4位に選出されている。

※注1 Global 100は世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)で発表されることが通例の持続可能性に関する企業ランキング。カナダの出版社Corporate Knightsが作成。

 Schneider Electricは自社の経験を生かしたコンサルティングサービスを2021年に国内で開始した。日本法人のシュナイダーエレクトリックで新規ビジネス開発分野を統括する山中里織氏は「日本は脱炭素のポテンシャルが高い市場だ」と言う。「電力業界の自由化が進んだ」「電気代が他国と比べて比較的高い」「環境に関するリテラシーが比較的高い」といった市場特性があるためだ。ただし各企業がそのポテンシャルを発揮するには、取り組みを効果的に進めるポイントを押さえなければならない。

脱炭素を達成するこつは? 熟練企業のノウハウ

 脱炭素の取り組みを進める上で一貫して重要なのは、各拠点や事業活動におけるCO2排出量を一元的かつ迅速に可視化する仕組みだ。「状況に応じてCO2消費のインパクトを瞬時に可視化できれば、迅速に改善点を洗い出すことができる」と山中氏は言う。CO2削減量などの目標設定においても、まずは現状を可視化することで到達可能な目標値が見えてくる。

 Schneider Electricの場合は同社のエネルギー管理ツール「EcoStruxure Resource Advisor」を自社内で活用。国内を含む各拠点のエネルギー使用状況やCO2排出量の可視化、KPIの進捗(しんちょく)管理に役立てている。同様に脱炭素を支援するツールとしては、三井住友銀行が温室効果ガスの可視化サービス「Sustana」を2021年11月に発表するなど、ニーズの広がりとともにツールも多様化する途上にある。

 データセンター業界では、Equinixが各拠点のエネルギーの使用状況や請求書を一元的に管理するためにEcoStruxure Resource Advisorを活用し、より効果的な脱炭素の計画策定につなげている。同ツールはエネルギーの購買支援、社外向けのレポート作成といった機能も備える。

脱炭素に向けた4つのプロセス

 脱炭素に着手する企業は上記のような一元的な可視化の仕組みを整えた上で、各種施策を進めるとよい。脱炭素の具体的な取り組みは下記4つのプロセスに分類できる。

  1. エネルギー利用の効率化
    • エネルギー使用量を削減するための既存業務の改善。
  2. 再生可能エネルギーへの転換
    • 化石燃料由来のエネルギーから、太陽光発電や風力発電などクリーンエネルギーへの転換。
  3. カーボンオフセット
    • 地球環境に負荷を与えないことを価値にした環境価値証書の購入や、CO2を削減する取り組みの実施。
  4. サプライチェーンの改善
    • 自社のサプライチェーンにおけるCO2削減の推進。

 データセンターであっても、製造業など他の産業であっても、これらの取り組みが脱炭素の基本になるのは同じだと山中氏は説明する。データセンターを例にすれば、まずはIT機器やサーバ冷却設備の効率化など既存オペレーションの改善を図りつつ、利用可否に応じて再生可能エネルギーの調達を検討する。その活動だけでCO2の削減目標に達しない場合は、グリーン電力証書(再生可能エネルギー使用を価値に換算した証書)などの環境価値証書の購入によってCO2排出量を相殺することが可能だ。

 サプライチェーンの改善においては、GHG(温室効果ガス)排出量の国際的な算定基準「GHGプロトコル」の「Scope 3」を削減対象として計算する考え方がある。GHGプロトコルの「Scope 1」は購入した燃料の使用など自社の直接的な排出、「Scope 2」は電力会社から供給された電気の使用など間接的な排出を指す。Scope3はScope2以外の自社のサプライチェーンにおける間接的な排出が該当する。Schneider Electricの場合、例えば温室効果ガスである六フッ化硫黄(SF6)を排出しないスイッチギア(配電盤)をサプライチェーンの取引先に使ってもらうことがScope3に当たる。同社はこれも自社の削減量として換算する。

 上記の4つのプロセスを大枠としつつ、自社により適した取り組みを選択することが欠かせない。例えば立地によって再生可能エネルギーの調達可否が異なるため、それに応じた目標設定や対策が求められる。業種などの事業特性によってもCO2削減のしやすさや地球環境に与える影響は異なる。山中氏は「自社にとっての脱炭素の成功を定義することも重要だ」と話す。

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