データセンターはIT機器の稼働や冷却に大量のエネルギーを消費する。環境に配慮し、電力コストを下げるにはどうすればいいのか。
再生可能エネルギーを使用して二酸化炭素の排出を抑え、自社のビルやデータセンターを環境に優しい形で作る動きが加速している。特に大規模なシステムが稼働するデータセンターは大量のエネルギーを消費する。環境保護だけでなく、電力コスト削減の観点からもデータセンターの「エコ化」は喫緊の課題だ。本稿は、省エネルギー化、エネルギー効率向上、再生可能エネルギー活用といったキーワードに沿って、環境に配慮したデータセンターを作る具体策を考える。
環境に配慮したデータセンターを作る動きは、1980年代に始まった。データセンター設計の認定機関Uptime Instituteが、「ホットアイル」と「コールドアイル」を区分したデータセンター設計方法を推奨したのがきっかけだ。ホットアイルとはIT機器の排気が集まる通路、コールドアイルとはIT機器を冷却するための冷たい空気が流れる通路を指す。この2つを区分することによって冷却効率を高め、省エネルギー化を図る。
米国暖房冷凍空調学会(ASHRAE)が2004年、データ処理設備の温度管理に関するガイドライン「Thermal Guidelines for Data Processing Environments」を発行した。このガイドラインは、データセンター内の室温を27度に引き上げることを推奨している。従来は、12.8度の室温が推奨されていた。室温を高めに設定すれば、冷却システムが消費するエネルギー量の削減につながる。
データセンターのエネルギー効率向上を目指す業界団体、The Green Gridが2007年、電力使用効率性(Power Usage Effectiveness:PUE)の指標を策定した。この指標は、電力効率を管理するための基準になっている。データセンターの省エネルギー化に取り組む際、実際のエネルギー消費量を把握する必要がある。そのために、The Green Grid のPUEが有効だ。The Green GridがPUEを公開した当時、その標準値は2.5〜3.5だった。PUEに基づいた電力管理が普及したことによって、標準値は1.5程度まで低下した。
ASHRAEが2014年に公開した報告書によると、静電気の放電を回避するために相対湿度(RH)を45%〜55%に保つ必要はない。RHが8%でも、静電気によるIT機器の破損が生じないという。データセンター内の湿度を一定のレベルに維持するために水を蒸発させるには大量のエネルギーが必要になる。RHのレベルを下げれば、エネルギー消費を削減できる可能性がある。
他にも、データセンターに空気を閉じ込める設計方法を取り入れることによってエネルギーを節約する方法がある。空気ではなく、液体による冷却システムの採用も冷却効率を追求する上で有効だ。
後編は、エネルギー効率の向上と再生可能エネルギーの使用を切り口にした取り組みを紹介する。
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