コロナ禍やウクライナ侵攻など、突発的で予測できない事案によって世界中のサプライチェーンが混乱している。刻々と変わる状況の中、回復力のあるサプライチェーンを構築するには、どのような転換が必要なのか。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)やロシアによるウクライナへの侵攻など、2020年以降に発生したさまざまな出来事によって、企業のサプライチェーンは混乱に見舞われている。このような混乱がすぐに収まるとは限らない。企業はレジリエンシー(回復力)に優れたサプライチェーンを構築する戦略を打ち立て、こうした変化に適応する必要がある。
調査会社IDCでアナリストを務めるサイモン・エリス氏によると、昔ながらのサプライチェーン戦略は「グローバリゼーションとジャストインタイム(必要なものを必要なときに必要な数だけ生産する手法)のビジネスモデルに支配されていた時代に生まれたもの」だ。破壊的な変化が絶え間なく生じていることで、こうした戦略の継続が困難になっている。
本稿は、企業が競争力を維持するために、従来のサプライチェーン戦略を見直さなければならない理由についてエリス氏に聞いた。
―― 古くから確立されているサプライチェーン戦略を見直すには、どのようにすればよいのでしょうか。
エリス氏 非常に優秀な人たちが、数十年前にジャストインタイムの在庫アプローチを考案した。このアプローチのおかげで、企業は多くの在庫を抱えなくても、主要なサプライヤーと提携してベンダー側の在庫を管理し、必要なものを必要なときに入手できるようになった。だがこの手法が有効に機能するのは、世界が大混乱に陥っていないときだけだ。混乱が始まると突如として、ある程度の余分な在庫を抱えていることが大いに役立つようになる。そしてこれこそが、サプライチェーン戦略の担当者が検討すべきテーマの一つだ。ジャストインタイムが効率性を備えているからといって、情勢が悪化したときに起こる問題を無視していいのだろうか。
サプライチェーン戦略は転換点を迎えている。ほとんど制約のない状況にあった企業のサプライチェーンが、制約のある状況に置かれるようになった。ならば、どのように行動を変えるべきなのか。私は「労働力と資産のアービトラージ(裁定取引)」から「スピードのアービトラージ」への移行が必要になると考える。いまや「1円でも安く調達できる能力」より、「1秒でも速く調達できる能力」を持つかどうかが業績に大きな差をもたらすようになった。調達価格をできる限り下げようと交渉するのもいいが、動きの速い他社にすぐに奪われて調達できなくなってしまう可能性がある。
中編は、サプライチェーンのレジリエンスを高める手法をエリス氏に聞く。
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