英国“スマート港”の「プライベート5G」活用術5Gで実現する「スマート港」【前編】

英国北東部のタイン港は通信大手BTと協力し、港内に「プライベート5G」を導入する。どう活用し、どのようなメリットを見込んでいるのか。

2022年08月12日 05時00分 公開
[Joe O’HalloranTechTarget]

 2022年5月、英国の通信大手BTは、「5G」(第5世代移動通信システム)をプライベートネットワークとして使う「プライベート5G」を同国の市場に提供するため、スウェーデンの通信機器ベンダーTelefonaktiebolaget LM Ericsson(Ericsson)との提携を発表した。その翌月の6月、BTは英国北東部に位置する主要深海港のタイン港(Port of Tyne)にプライベート5Gを提供することを発表。同港を世界で通用する「スマート港」へ変革するという野望を掲げる。

スマート港の「プライベート5G」活用術とは?

 BTによると、タイン港のプライベート5Gは2022年後半に稼働を開始する。同社と同港は連携して港内の全施設に高速かつ低遅延のネットワーク接続を導入し、港内業務における新技術や既存技術の活用を進める。

 タイン港は、貨物や自動車のターミナル、クルーズ船やフェリーなど船舶の運航、港湾の物流管理や団地運営などを手掛けている。同港は政府や企業と連携し、海運に関する革新的な取り組みを生み出す構想「Maritime Innovation Hub」に参画している。この構想のインフラとして、同港は「LTE」(Long-Term Evolution)など「4G」をプライベートネットワークとして使う「プライベート4G」やプライベート5Gを導入する。

 タイン港の運営戦略「TYNE 2050」の中核を成すのがデジタルトランスフォーメーション(DX)だ。5Gを活用してさまざまなデータを取得し、データ主導の意思決定を実現する。これにより事業全体の効率を高め、港の利益向上につなげる。

 プライベート5Gの活用例として、タイン港は次の取り組みを挙げる。

  • 無線接続を導入することで、施設における高額な地上工事や配線ダクト(電線カバー)取り付けの必要性を減らす。
  • 低遅延かつ高速データ伝送が可能なネットワークにより、遠隔作業を実現する。
  • 計測機器をネットワーク接続するスマートメーターやIoT(モノのインターネット)センサーを使って運営状況を監視し、非効率的な業務を改善することで化石燃料の消費を削減する。
  • 施設内の工場や機械からリアルタイムでデータを抽出し、業務改善が可能なポイントを特定する。例えば車両のアイドリング時間の短縮や不要な走行距離削減を実現する。

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