「Amazon.comが医療分野から手を引く形跡はない」。Amazonの医療サービス「Amazon Care」の撤退に際し、専門家はこう断言する。むしろ同社は医療ビジネスに「本気だ」と専門家は考える。その根拠は。
Amazon.comは2019年、米国シアトルで勤務する自社の従業員向けに医療サービス「Amazon Care」を立ち上げた。同社はAmazon Careで従業員に遠隔医療サービス、処方薬の配送、地域限定の対面訪問などのサービスを提供。2022年2月には一般法人向けに対象を広げた。
「Amazon Careを2022年12月31日に終了する」。GeekWireが運営する同名テクノロジーニュースサイトが2022年8月に報じた記事によると、Amazon.comのヘルスケア分野を率いるニール・リンジー氏は、同社の社内向け文書でこう述べた。終了の理由は、Amazon Careにはターゲットにしてきた大手企業向けのサービスとして十分ではない部分があり、「長期的にうまくいきそうにない」ためだ。
「実際のところAmazon Careは、法人顧客の誘致力を大きな課題の一つとしていた」と、調査会社Constellation Researchの創業者でプリンシパルアナリストのR・レイ・ワン氏は指摘する。だがAmazon.comにとってAmazon Careの事業展開は「良い勉強になった」とワン氏はみる。
Amazon Careの事業は、Amazon.comがこれから採用したり、再利用をしたりする数々の革新的技術を試験的に導入する機会になったと、ワン氏は考えている。「どのような患者がどのようなサービスを好むのか、遠隔医療の限界はどこにあり、実際に対面で医師の診察を受ける必要があるのはどのような場合なのかといったことを、Amazon.comは学べた」と同氏は指摘する。
世間からAmazon.comは「永遠のイノベーター」であると期待されている。だからAmazon Careの終了宣言は「Amazon.comは機能するサービスと、しないサービスを学んでいる」というメッセージだと解釈できる――。調査会社Gartnerの医療アナリストでシニアディレクターのケイト・マッカーシー氏はこのように考えている。「Amazon.comは、うまくいかないものには固執せず、より良いものに変える」とマッカーシー氏は言う。
マッカーシー氏によると、Amazon.comが医療分野から手を引こうとしている形跡はない。プライマリーケア(初期診療)のサービスを全米展開する1Life Healthcare(One Medicalの名称で事業展開)の買収や、在宅健康診断サービスベンダーSignify Healthの売却案件への入札など、最近のAmazon.com動きはむしろ、Amazon.comが医療ビジネスに本気であり、投資に対して意欲的になっていることを示しているという。
後編は、Amazon.comをはじめとする大手小売業が医療分野で本格的に事業を展開することの影響について、アナリストの見解を紹介する。
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