Amazonが遠隔医療市場で勝てる理由と、それでも苦戦する理由医療分野に勝機を見るAmazon【後編】

医療サービス「Amazon Care」により、遠隔医療と対面診療のハイブリッドモデルを推進するAmazon.com。遠隔医療市場で優位に立てるとの見方がある一方、他の業界と同じ考えではうまくいかないとの見方もある。

2022年05月06日 05時00分 公開
[Mike GleasonTechTarget]

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 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)をきっかけに、米国政府はオンライン診療を奨励する政策を強化している。医療機関Baptist Health Systemの最高デジタル情報責任者アーロン・ミリ氏の予想によれば、米国政府は今後、遠隔医療に対する報酬を減らし、医療機関が対面診療を拡大させるよう促す可能性がある。

 こうした中、Amazon.comは医療サービス「Amazon Care」を通じて「遠隔医療と対面診療のハイブリッドなモデルを推進している」とミリ氏は話す。Amazon Careは、オンライン診療、在宅医療、対面診療を組み合わせたサービスだ。

アナリストが評価する、Amazon Careの「優位性」と「限界」

 調査会社Gartnerのアナリストであるセス・フェダー氏は「Amazon Careは対面診療を提供しているという点において、American Well(Amwell)やTeladoc Health、MDLIVEといった遠隔医療事業者よりも優位性がある」と評価する。「遠隔サービスだけでは完璧な医療を提供できないことをAmazonは理解している」(フェダー氏)

 フェダー氏の見立てによれば、遠隔医療の利用者はパンデミックのピーク時から減少しているが、今後も受診機会の2割程度は遠隔医療が占める可能性がある。この試算はミシガン大学(University of Michigan)の遠隔医療研究組織Telehealth Research Incubatorが2021年7月に発表したレポート「Research Snapshots」の調査データにも沿う内容だ。ミシガン大学の調査によれば、非営利団体Blue Cross and Blue Shield Associationの保険制度を利用する患者が遠隔医療を利用する比率は、パンデミック初期(2020年3〜5月)は61%だったが、2020年5月以降は減少して21%になった。

 ミリ氏は「Amazon Careのサービス拡大は、患者にとってプラスになる」とみている。現代医療は、複数の組織が連携して可能な限り最善のケアを提供する必要があるからだ。「単一の病院や医療グループだけでは、全ての患者に全ての医療を提供することはできない」(ミリ氏)

 Amazonにとって医療業界への参入は、他業界への参入よりも難しい可能性がある。その理由について、コンサルティング会社Sapient(Publicis Sapientの名称で事業展開)で医療グループ担当バイスプレジデントを務めるヒューゴ・マナセイ氏は「医師の診察は、単なる商取引とは異なるからだ」と指摘する。

 マナセイ氏によると、金融業や航空会社、オンライン小売業などのデジタル化による成功事例は、概して取引上のやりとりの改善を目的としている。医療は「個人的な関係作りが重要だという点で、これらの業界とは本質的に異なる」(同氏)。

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