米国医療機関Mayo Clinicは、人材多様性の拡大と受容を重視したマネジメント能力育成を目指して、研修にゲーミフィケーション手法を取り入れた研修システムを採用する。この研修システムが目指している到達点は。
前編「医療機関が人材育成に「ゲーミフィケーション」を採用した理由」に続き、後編となる本稿も、医療機関Mayo Clinicにおける「ゲーミフィケーション」(ゲーム以外の活動にゲームの仕組みを利用すること)型研修の事例を取り上げる。同機関が採用したKeepWOLの研修システムは、どのような在り方を理想として研修の仕組みを構築しているのか。
Mayo Clinicの研修では、DEI(Diversity, Equity and Inclusion:多様性、公平性、包括性)とマネジメントスタイルに焦点を当てている。Mayo Clinicのコミュニティービジネス部門(Office of Community and Business Relations)ディレクターのマリオン・ケリー氏によれば、マネジメントスタイルの研修は、リーダーシップの在り方の違いに応じて、参加者が学習や働き方のスタイルをどのように変えていくかをテーマにしている。「目標は、組織として互いをもっとよく理解することだ。そうすれば組織の生産性を上げられるようになる」とケリー氏は話す。
Mayo Clinicが採用したのはKeepWOLのゲーミフィケーション型研修システムだ。Mayo Clinicはこの研修システムを試験運用するに当たり、導入前後にアセスメントを実施する。例えば参加者がチームと交わしたコミュニケーションの能力に良い効果が見られたかどうかを評価する。長期的には組織全体の学習システムにゲーミフィケーション型研修を取り入れ、漸次展開することも視野に入れている。ケリー氏は「全スタッフの1割程度がこの研修に参加してくれればうれしい」と語る。
KeepWOLのCEOローレン・フィッツパトリック・シャンクス氏は、航空宇宙エンジニアとして専門キャリアをスタートさせ、後にオペレーションズマネジメントのMBA(経営学修士)を取得。複数の大手企業に勤務した後にKeepWOLを設立した。同社のゲーミフィケーション型研修システムのアイデアは、同氏がDEIの研修を受けた際にギャップを感じたことから生まれている。
シャンクス氏によれば、雇用主はDEIやビロンギングプログラム(所属、一体感、帰属意識を醸成するための人事施策)の達成を約束するが、成功の判定はさまざまな立場の人を何人採用しているといった「バニティメトリクス」(虚栄の指標)に基づいている。「さまざまな立場の人々に対するマネジメントや指導、コミュニケーションの方法についてトレーニングを受けた管理職はほとんどいない」とシャンクス氏は話す。
人事業界のアナリストであるジョシュ・バーシン氏は、学習におけるゲーミフィケーションを「非常に効果的なアプローチだ」と評価する。「ゲーミフィケーションは『ゲームをする』という意味ではない。人々がポイントを獲得し、互いに競い合い、ゲームのようなインセンティブを得ることで、そのコンテンツに積極的に没頭するエネルギーを生み出すということだ。このエネルギーは実に大きい」(バーシン氏)
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