どの放送局も、ニッチな用途にしかデータサイエンスを用いていない――。英国の放送局で働くデータサイエンスの専門家は、こう指摘する。どのような用途で活用しているのか。
2022年9月下旬に英ロンドンで開催されたイベント「Big Data LDN 2022」では、公共放送局BBC(英国放送協会)とChannel 4(Channel Four Television)、民間放送局ITVのデータサイエンス責任者が登壇。彼らは口をそろえて、英国の放送局が局全体ではなく、少数の特定部門や用途に合わせたデータの使い方を重視していると語った。
BBCのプロダクトグループでデータサイエンスの責任者を務めるメーガン・スタンパー氏によると、同局はデータサイエンスを活用できる分野を検討している。だが「理想的だと言える状態には、まだたどり着いていない」とスタンパー氏は話す。
Channel 4でデータサイエンスの責任者を務めるマイケル・テレル氏は、同局では2016年ごろから、コマーシャル部門がデータサイエンスを利用していると述べる。何を求めているかが明確で、採用の妨げになるものが少なかったのが、その理由だ。それ以外の業務にデータサイエンスを導入するのは「少し難しかった」とテレル氏は語る。
データサイエンスにあまり興味のない担当者を取り込むには「シンプルな手法から始めるのが妥当だった」とテレル氏は説明する。予測アルゴリズムを一から構築するのではなく、既存のデータを分析して、行動の基盤になる洞察を得るのが理にかなっていたという。
ITVでデータイノベーションの担当ディレクターを務めるクレメンス・バーニション氏によると、同局のデータサイエンス活用計画は、早い段階からマーケティング部門に照準を定めていた。データを金銭に換算する方法を検討することが、マーケティング部門の役割だからだ。
後編は、データサイエンスを局内に浸透させるために、各局が進めている取り組みを紹介する。
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