ワールドカップで“通信量が爆増” なぜネットワークは落ちなかったのか?ワールドカップを支えたネットワーク【前編】

中東のネットワークベンダーGBIは、2022年11月のワールドカップ開催によるトラフィック増加を見込み、同社が提供する光ファイバーネットワークを強化した。

2023年02月08日 05時00分 公開
[Joe O’HalloranTechTarget]

 2022年11月、中東では初開催となったサッカーワールドカップがカタールで開催された。この影響によるトラフィック(ネットワークを流れるデータ)の増加を見込み、中東を拠点に事業を展開するネットワークベンダーGulf Bridge International(GBI)は、光ファイバーネットワークに、ある変更を加えた。

“トラフィック爆増”に耐えたネットワークとは

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 2008年に創業したGBIは、通信事業者をはじめとした顧客のネットワークを最適化して運用する、マネージド型のネットワークサービスを提供する企業だ。同社は地上ケーブルと海底ケーブルを使い、中東を経由点にアジアと欧州を接続するネットワークを提供している。

 2022年11月、GBIはネットワーク機器ベンダーInfineraが提供する光エンジン(注1)「ICE6 800G Generation Optical Engine」(ICE6 800G)を、GBIの海底と地上における光ファイバーネットワーク全体に配置すると発表した。これにより帯域幅(回線路容量)の拡大が実現した。

※注1:光電信号変換を実現するための光トランシーバーの主要部分

 今回GBIがICE6 800Gをネットワーク全体に配置したことにより、同社が提供する帯域幅はほぼ倍増し、1波長当たり最大800Gbpsの接続が使用可能になった。ICE6 800Gの導入で可能になった事項は以下の通り。

  • ワールドカップ試合動画の高速ストリーミングといった需要への対処
  • 400ギガビットイーサネット(GbE)サービスの顧客への提供

 他にも2022年10月、GBIは中東と欧州にまたがる既存の海底ケーブルと地上のネットワークの接続を増強すると発表した。具体的には、通信機器ベンダーNokiaのコヒーレント技術(注2)を搭載したDSP(デジタル信号処理用のプロセッサ)「Photonic Service Engine V」(PSE-V)を実装し、帯域幅を強化する。

※注2:光の振幅と位相の変調に加えて2つの偏波にわたる伝送を利用した手法。従来の光ファイバーネットワークと比較して、より多くの情報を伝送できる

 ワールドカップ開催期間中やそれ以降も含め、“高品質で中断のない視聴”を求めるエンドユーザーの需要に通信事業者が応えるには、GBIがネットワークを増強することが不可欠だった。

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