北里研究所はキャンパス内における通信量の増加に伴い、新しい回線として「Colt IP Access」を導入した。従来のネットワーク構成にはどのような課題があったのか。Colt IP Accessを選んだ理由とは。
クラウドサービスの利用拡大といった要因で通信量が増え、回線が逼迫(ひっぱく)してしまう問題がある。北里大学や北里大学病院を設置する学校法人、北里研究所(以下、北里研究所)も同様の課題に直面した。北里研究所が抱えていた問題や、解決するために採用した回線について、同研究所のICT推進センター係長を務める有井宏敏氏に話を聞いた。
北里研究所は従来、大学や病院を設置する各キャンパスの回線を広域イーサネットで束ね、1カ所のデータセンターに各キャンパスからの通信を集約するネットワーク構成を採用していた。組織内外のネットワークの境界に、ファイアウォールをはじめとしたセキュリティ機能を設ける「ペリメータモデル」(境界防御型)の構成だ。この構成に変更を加える必要が生じたのは、クラウドサービスの利用拡大によって、通信が集中するデータセンターがボトルネックになったからだという。
将来的なクラウドサービスの利用拡大を見据えた際、必要に応じて回線の増強を繰り返すより、ネットワークの構成自体を変える方がコスト抑制につながると北里研究所は考えた。従来のペリメータモデルを見直し、新しいネットワーク構成を検討した結果、各キャンパスが個別にインターネットに接続する「ローカルブレークアウト」を実現する構成を採用することにした。オンライン授業や会議で利用する「Zoom」「Microsoft Teams」「Google Meet」といったWeb会議ツールをはじめ、クラウドサービスの通信を各キャンパスからインターネットに直接出すことで、従来利用してきた回線の逼迫を回避する狙いがあった。
ローカルブレークアウトを実現するために、北里研究所は通信事業者Coltテクノロジーサービスのインターネット回線「Colt IP Access」の採用を決定。東京都の白金キャンパス、神奈川県の相模原キャンパス、青森県の十和田キャンパスの3拠点に導入した。
Colt IP Accessを採用した理由として、有井氏は1つ目に地理的な理由を挙げる。相模原キャンパスや十和田キャンパスについては、他の通信事業者では地理的に回線を引けない場合があった。選択肢が絞られていた中で、納期面やコスト面の折り合いが付いたことがColt IP Access導入の決め手となった。
有井氏は2つ目の理由として、1Gpsの帯域保証が選択できたことを挙げる。「大きいキャンパスだと1Gpsの帯域保証は必須だった」と同氏は強調する。ベストエフォート型では、特定の地域で常時どれくらいの通信速度が出るかを把握できないだけではなく、いざというときに通信速度が出ない恐れがあるからだ。
Colt IP Accessのオプションサービス「Colt IP Access Cloud Prioritisation」も採用理由の一つだったという。Colt IP Access Cloud Prioritisationは、Microsoftが提供するサブスクリプション形式のオフィススイート「Microsoft 365」(Office 365)への優先接続サービスだ。学内で学生や教職員が頻繁に利用するMicrosoft 365について、他の通信による影響を受けにくくし、通信を安定化させるためにColt IP Access Cloud Prioritisationが役立つと、北里研究所は判断した。
アプリケーション識別機能とセキュリティ確保を目的に、北里研究所がColt IP Accessと併せて導入したのがSD-WAN(ソフトウェア定義WAN)だ。SD-WANの仮想ネットワークを支えるアンダーレイ(実際にデータを転送する物理的な回線)として、Colt IP Accessを使っている。
後編は、Colt IP Access導入の成果を紹介する。
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