シリコンバレー銀行の破綻で大迷惑を被ったベンダーの“嘆き節”シリコンバレー銀行破綻の余波【中編】

シリコンバレー銀行の破綻によって、ある給与計算システムが機能停止に追い込まれた。このトラブルに巻き込まれた給与計算システムベンダーが事態を振り返る。

2023年05月26日 06時15分 公開
[Patrick ThibodeauTechTarget]

関連キーワード

金融


 2023年3月10日(現地時間、以下同じ)にシリコンバレー銀行(SVB:Silicon Valley Bank)が経営破綻したニュースは、米国企業の給与処理担当者に大きな衝撃を与えた。給与処理を代行する会計事務所の担当者は、直ちに顧客企業に事情を説明し、代替の支払い手段を確保する必要に迫られることになった。影響は、会計事務所が利用する人事・給与関連ソフトウェアのベンダーにも及んだ。

SVB経営破綻に巻き込まれたベンダーの“嘆き節”

 会計事務所Accounting Connectionsは、顧客企業の給与や課税情報を処理する際、給与計算システムベンダーPatriot Softwareの給与管理ソフトウェアに頼っていた。Patriot Softwareのソフトウェアで、Accounting Connectionsが必要な仕事をこなすためには、取引銀行の情報が必要だった。その取引銀行であるSVBが経営破綻し、結果として給与支払いに支障を来すことになった。

 Patriot SoftwareのCEOマイク・カッペル氏が公式ブログに公開したエントリ(投稿)によると、同社のユーザー企業は全米で5万5000件以上存在する。連邦規制当局がSVBの営業を停止させる前日(2023年3月10日)の時点で、同社はユーザー企業の給与と給与税1億ドル近くをSVBに預けていた。

 カッペル氏は1986年にPatriot Softwareを創設。ブログの中で同氏は、創業当時の同社の荒涼とした様子を振り返っている。同社は「暖房もエアコンもない工場の地下」で開業し、「われわれを訪ねて来るのはネズミ、鳥、ハエ、ヘビだけだった」と同氏はつづる。

 「米国政府が即座に行動を起こさなければ、壊滅的な波及効果をもたらし、とてつもない数の小規模事業所とその家族が破綻し、金融制度全体に対して取り返しのつかない信頼欠如を発生させる」。カッペル氏はブログエントリでこう警告する。

 カッペル氏は多忙を理由に米TechTargetの取材には応じなかったが「分かってもらえると思うが、私の最優先課題は当社の全顧客企業と、その従業員が自分の給与を取り戻し、支払いを受けられるようにすることにある」と説明した。


 後編は、Patriot Softwareが事態の収拾と預金の保護に向けてどう対処したのかを解説する。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

ITmedia マーケティング新着記事

news060.jpg

Z世代が考える「日本が最も力を入れて取り組むべき課題」1位は「ジェンダー平等」――SHIBUYA109 lab.調査
SDGsで挙げられている17の目標のうち、Z世代が考える「日本が最も力を入れて取り組むべき...

news061.png

高齢男性はレジ待ちが苦手、女性は待たないためにアプリを活用――アイリッジ調査
実店舗を持つ企業が「アプリでどのようなユーザー体験を提供すべきか」を考えるヒントが...

news193.jpg

IASがブランドセーフティーの計測を拡張 誤報に関するレポートを追加
IASは、ブランドセーフティーと適合性の計測ソリューションを拡張し、誤報とともに広告が...