Kubernetesクラスタの運用管理ツールは、操作の自動化や一元管理などによる省力化が可能だ。アプリケーションのデプロイや管理において「Rancher」「Red Hat OpenShift」「VMware Tanzu」はどう違うのか。
コンテナを扱う上で欠かせないツールが、コンテナオーケストレーションツール「Kubernetes」だ。Kubernetesでコンテナクラスタ(Kubernetesクラスタ)を扱う際には、運用管理の自動化や簡略化に役立つツールを活用できる。具体的にはSUSEの「Rancher」、Red Hatの「Red Hat OpenShift」(以下OpenShift)、VMwareの「VMware Tanzu」(以下Tanzu)などが候補に挙がる。これらのツールの違いを解説する本連載のうち第3回は、Kubernetesクラスタ内でのアプリケーションのデプロイ(実行環境に配置)と管理に関する機能の違いを取り上げる。
Rancherは、Kubernetesクラスタを管理し、アプリケーションを簡単にデプロイできるインタフェースを持つ。IT管理者はRancherを使うことで、アプリケーションのデプロイの自動化と効率的な管理により、スムーズにアプリケーションをアップデート可能だ。
パッケージ(拡張機能群)管理ツール「Helm」とシームレスに連携できる点もRancherの特徴だ。Helmの「チャート」とは、Kubernetesクラスタでアプリケーションをパッケージ化し、デプロイするためのテンプレートを指す。エンドユーザーはHelmのチャートを使って、アプリケーションを手早くデプロイできる。
OpenShiftには、コンテナ化されたアプリケーションをビルド(実行可能ファイル生成)する「Source-to-Image」(S2I)機能がある。S2I機能は、開発ワークフローを簡素化するのに役立つ。「Jenkins」「GitOps」といったCI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)ツールとOpenShiftを連携させることで、アプリケーション開発における一連のプロセスを自動化できるようになる。
CI/CDパイプラインを用いてワークフローを管理、自動化するOpenShiftは、エンドユーザーによるデプロイの効率化にも有効だ。アプリケーションのデプロイに必要な設定を記録したテンプレートも、開発プロセスの高速化を後押しする。テンプレートを使ってデプロイしたアプリケーションに、個別の状態や依存関係(他のアプリケーションを必要とする関係)を与えることで、一貫したデプロイが可能になる。
「VMware Application Catalog」は、仮想マシンやコンテナなどで稼働するアプリケーションを一元管理できるサービスだ。VMware Application CatalogとTanzuを組み合わせることで、特定の構成のアプリケーションやデータベースを迅速にデプロイできるようになる。Kubernetesクラスタにおけるトラフィック、可観測性、セキュリティを効率的に管理できる「VMware Tanzu Service Mesh」も利用可能だ。
クラウドネイティブアプリケーション(クラウドサービスでの運用を前提にしたアプリケーション)のデプロイツール「VMware Tanzu Buildpacks」は、現代のアプリケーション管理によくある複雑さの軽減に役立つ。他にも、アプリケーションがデータベースなどの外部サービスに接続できるようにするサービスブローカー、アプリケーションの負荷に応じてメモリなどのリソースを自動で増減させるスケーリング機能といった機能も活用できる。コンテナイメージの作成にVMware Tanzu Buildpacksを使用することで、アプリケーションに使用したプログラミング言語やフレームワーク(特定の機能を持つプログラムの開発を支援するプログラム部品やドキュメントの集合体)、依存関係を自動的に検出でき、効率的な開発が可能となる。
次回は、監視とロギング(ログの記録と分析)機能に関する違いを紹介する。
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
DXが進み、レガシーシステムからの脱却が喫緊の課題となっている今。「ERP×ノーコードツール」のアプローチで基幹システムの刷新に取り組む企業が増えている。そのアプローチを推進するに当たってのポイントを解説する。
DXの本質は、デジタル技術を駆使して変化に適応する能力を身につけることにある。その手段の1つとして注目を集めているのが、ローコード/ノーコード開発ツールだ。京王グループなどの事例とともに、その特徴やメリットを紹介する。
DX人材の重要性が高まる中、ノーコードツールの活用によって業務改革と人材育成を両立しようとする動きが活発化している。年間約780時間の工数削減を実現した京セラをはじめとする5社の事例を基に、その実態を探る。
急速に進化するデジタル技術は、製造業などのものづくりの現場にもさまざまな恩恵をもたらしている。しかし、設備点検業務や棚卸業務などの立ち仕事や移動が多い現場では、いまだにアナログ業務が残存し、効率化の妨げとなっているという。
あらゆる業界でDXの重要性が増しているが、工場や倉庫の中にはデジタル化が後回しにされている隙間業務が多数ある。その理由を明らかにした上で、それらの業務をモバイルアプリでデジタル化し、現場DXを推進する9社の事例を紹介する。
いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。
「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。
「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。
「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。