あるApple Store従業員によると、Appleは人員削減とともにさまざまな業務自動化を推進している。その結果、障害を抱える従業員に大きな不利益が生じた場面もあるという。どういうことなのか。
英国のIT連合労働者組合(UTAW:United Tech and Allied Workers)に加入した匿名のApple Store従業員(以下、A氏)は、「退職するスタッフが増えるにつれ、自動化されたタスクが増えていく印象だ」と語る。Appleは基本的に、少ない人員で運用できるようなシステムを数多く構築している。正確に言えば、最小限の人数でより多くの仕事をこなせるようにしている。その結果、スキルが豊富ではない技術者を低コストで雇用できるようになる。
だがA氏によると、スキルが豊富ではない従業員は相対的に製品知識が不足する傾向にあるため、自動化された業務プロセスにますます依存せざるを得なくなり、従業員の行動を追跡・監視する名目がさらに増えることになる。「こうした状況は障害を抱える従業員にとって不利益が大きい」とUTAWの事務局に在籍するエラン・コーエン氏は主張する。
A氏はコーエン氏の主張に同意を示し「病気による休暇が不適切に処理され、業績基準を満たせなかったと見なされて減給される従業員を数多く目にしてきた」と語る。「恐らく彼らは障害を抱えていたと考えられる。こうした差別問題は何度も起きている。さまざまな店舗で労働組合の代表者が、障害に関する差別に対抗するために膨大な時間を費やしている」とA氏は説明する。
A氏によると、Appleは全従業員を監視して膨大なデータを収集し、スプレッドシートで厳格に管理している。この情報は後々、懲戒処分の根拠として使われる可能性がある。障害の有無を考慮せずに勤怠を評価するという差別的なアプローチは「障害を抱える全ての従業員を傷つけることになる」とA氏は主張する。
コーエン氏も「率直に言って、こうした出来事がAppleの労働問題で目にしたことの大部分だ」と強調する。「Appleの社内規定によれば、障害に関係する遅刻や休暇はカウントされないはずなのに、実際にはカウントされるケースがあるようだ。これは構造的差別の典型例だ」(コーエン氏)
UTAWは障害を抱える組合員の状況についてAppleに苦情を申し立てる計画だ。申し立てがうまくいかない場合は、雇用審判所(英国における労働分野の裁判所)に持ち込むことを検討している。「障害を抱える従業員をわざわざ罰するつもりがないとしても、Appleの社内制度は結果としてそうなるような設定になっている。Appleが従業員の遅刻や休暇状況を追跡するための管理システムは、従業員が抱えるさまざまな事情を自動的に配慮するような仕組みになっていない」とコーエン氏は述べる。
懲戒処分の判断をする立場の管理職は、部下が障害を抱えていることを把握した上で、休暇の理由を確認するか、懲戒に踏み切るかを判断する必要がある。しかしコーエン氏が過去に異議申し立てをした事例の中には「障害とは無関係の欠勤」に対する懲戒処分が含まれており、「これは異議申し立てに含めるべきではない」と指摘したケースがあった。「上司が個々の人間を実際に見ておらず、コンピュータがノーと言ったことに従っているだけだから、こういうことが起きる」とコーエン氏は話す。
UTAWは、Appleが労働組合を自主的に承認することを目標としているが、必要に応じて英国政府の中央仲裁委員会(Central Arbitration Committee)による法的承認の道を取る構えだ。
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